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奄美海運「フェリーきかい」~喜界島の生活航路

2013-05-14 | 船舶[日本国内]

先月MAKIKYUが奄美・沖縄を初訪問し、晴れて国内47都道府県訪問達成となりましたが、その際には鹿児島からフェリーで奄美大島へ向かい、その後更に沖縄へ向かったものでした。

1日1便運航している鹿児島~沖縄航路(概ねマルエーフェリー・マリックスラインの交互運航)の2等利用であれば、途中下船制度を活用し、鹿児島~沖縄間通しの乗船券を購入する方法もあるのですが、これだと奄美大島→沖縄間の移動が昼間時間帯となり、限られた時間の有効活用という点では、余り芳しいものではありません。

そのため乗船券は鹿児島→奄美大島(名瀬)と奄美大島→沖縄(那覇)の2行程をバラバラに購入する事で、運賃面では割高になる事を承知の上で、双方共に夜行移動可能な旅程を組んだものでした。

その内前者は、鹿児島~沖縄航路を利用するのが一般的ですが、他に「裏航路」「喜界航路」などと呼ばれる航路も存在しています。

この航路はマルエーフェリーの子会社・奄美海運が、鹿児島~喜界島(湾)~奄美大島(名瀬)~奄美大島(古仁屋)~徳之島(平土野)~沖永良部島(知名)間を、「フェリーあまみ」「フェリーきかい」の2艘で運航しています。
(知名までは一部運航日のみ運航、日によっては平土野折り返しです)

就航中の2艘は共に3000t弱、離島航路にしてはそこそこの船かと思いますが、8000tクラスの船舶を用いている沖縄航路に比べると、船の大きさは小さくなります。

喜界島に寄港する事もあり、喜界航路で鹿児島~奄美大島(名瀬)間を移動するとなれば、所要時間は沖縄航路よりも長くなり、利用者の大半は喜界島発着(鹿児島~喜界島or喜界島~奄美大島)の旅客と言う状況です。

あとは沖縄航路の立ち寄らない古仁屋(Koniya)・平土野(Hetono)・知名などへ向かう旅客で、比較的需要の多い鹿児島~奄美大島(名瀬)間で喜界航路を利用する乗客は、物好きを除くと余り…という状況の様です。

ただ運賃面では、喜界島経由で遠回り・所要時間が増大するとは言っても、鹿児島~名瀬間の2等運賃は沖縄航路と同一に設定されています。
(鹿児島~沖縄航路で徳之島以遠まで向かう場合の奄美大島途中下船では、原則として奄美海運利用は不可ですので要注意です)

鹿児島~名瀬間をフェリーで往復する場合、往復共に同じ航路の船では…という方などは、片道奄美海運利用とすれば、往復で異なる航路・船に乗船できるというメリットもあります。

MAKIKYUが敢えて鹿児島~名瀬間で奄美海運を利用した理由としては、帰路に沖縄航路利用予定があった事に加え、先述の通り奄美大島でバラして乗船券を購入していますので、途中下船制度の対象外となり、沖縄航路利用の必然性がない事に加え、乗船日の沖縄航路就航船に2等洋室(2段ベッド:要差額)が設けられておらず、奄美海運の方には設定がある事も大きな理由です。

また喜界島寄港で所要時間が増大する事で、早過ぎる名瀬到着(沖縄航路では5時頃)を避け、船内でゆっくりできる事や、鹿児島の発着港が桜島桟橋に近く、比較的至便な北埠頭となっているのも、喜界航路のメリットと言えます。
(余談ながら鹿児島の発着港は、沖縄航路が発着する鹿児島新港よりも、裏航路と呼ばれる喜界航路の北埠頭の方が便利なだけでなく、ターミナルも綺麗です)

先日の記事で取り上げた「ドルフィン150」で鹿児島中央駅からドルフィンポートへ向かい、その後徒歩(5分程度)で北埠頭へ向かうと、出航予定は17時30分ながらも、乗船開始は17時10分と比較的遅く、観光クルーズ的要素が薄い航路ならではと感じます。

北埠頭では一応小規模な売店があり、船内でも若干の物販はありますが、埠頭周辺で買出しなどに適した店などは余り…という印象でしたので、鹿児島中央駅からドルフィン150などの路線バスでアクセスする場合、食料などはバス乗車前に購入しておいた方が…と思います。

そして乗船時刻になって乗船しますが、出航時刻の17時30分を過ぎてもまだ出航する様子がなく、船内では「出航時刻を過ぎておりますが、本日荷役作業遅れのため、終了次第の出航となります」というアナウンスが流れ、結局出航したのは18時過ぎと言う状況でした。


船内乗客の会話では、「何日か船が運航しない日があった後だから、いつもより積む荷物が多い」と言った話も聞こえ、ドック入りの関係で通常より運航便数が減少→1便で運ぶ貨物量が多くなるのも災いしているかと思いますが、出航時刻を過ぎても船尾では(恐らく生活物資などが入った)コンテナをフォークリフトで次々と運び入れている様子を見ると、離島航路と言うのは旅客輸送だけでなく、島への生活物資などを運ぶ貨物輸送の役割も大きいと言う事を、改めて実感させられます。

ちなみに喜界航路就航船は通常2艘が就航していますが、「フェリーあまみ」がドッグ入りしていましたので、「フェリーきかい」の方でした。


フェリーきかいは現在のマルエーフェリー系貨客船では最も古い上に、足が遅くダイヤもフェリーあまみとは別立てになっており、普段は足の遅さも災いし、平土野折り返し便のみの充当となっています。


しかしフェリーあまみドッグ入りの影響で、珍しくフェリーきかいが知名まで運航する日でしたので、ただでさえ足が遅いのに出航が遅れたら、その後の遅延もどれだけ…と感じたものですが、こんな船でもきちんと知名の行先表示があるのは、少々意外に感じたものでした。

そして30分ほど遅れて出航すると、本来なら出航時刻が30分遅く、併走する事はないはずの沖縄航路就航船「クイーンコーラル8」とほぼ併走状態になり、しばらくすると外は暗くなって外の景色も…、そして翌日目が覚めて外が明るくなった頃には、未知の世界が拡がる事になります。


船内では物販以外に、小規模ながらも食堂も設けられており、一応食料を調達して乗船したMAKIKYUも、マルエーフェリー・奄美海運ではHPなどでメニューが公開されておらず、内容が気になりましたので、足を運んでみました。
(沖縄航路の共同運航を行っているマリックスラインでは、HPでもレストランのメニューを写真入りで公開しています)


食堂は営業時間も限られ、外が暗くなる頃には…という状況でしたので、営業終了間際の19時前に足を運んだのですが、メニューはカレーライスやトンカツなど食堂の定番メニューと言った品が数品、試しにから揚げ定食(840円)を注文してみましたが、内容的にはまあまあといった所、残念ながら特に薩摩・奄美の地域性を感じさせるメニューなどはありません。
(マリックスラインでは奄美名物・鶏飯などのご当地メニューもあります)


マルエーフェリーの他船でも見かけたのですが、「米は、国産米 を 使 用」と記した案内を大々的に出しており、一応この事をウリにしている様ですが、メニュー数も少なく、HPでの宣伝有無と共に、沖縄航路を共同運航しているマリックスラインに比べると、食堂関連は見劣りが否めない気がします。
(それでもマルエーフェリーでも食堂自体を設けていないカジュアルフェリーが就航している事や、「車内販売はありません」と堂々と放送案内している一部のJR寝台特急などに比べれば、併食設備があるだけでも大きなサービスかと思いますが…)


食事を終えた後は船室(2等洋室)に戻りますが、一応カーテンでベッドを仕切る事ができる2段ベッドが並ぶ大部屋は、通路が狭く少々窮屈な印象があるものの、フェリーでは定番と言えるカーペットの大部屋(2等)+2000円の寝台料金Bで利用できる事を考えれば、設備的にはまずまずです。


夜を越すのであれば、大部屋(写真)とは快適さも雲泥の差かと思いますし、この程度の差額で寝台を利用する事に慣れてしまえば、JRのB寝台開放室などはとても…と感じてしまう事になりそうです。
(この事も瀬戸内海を航行するフェリーとも競合する関西~九州方面寝台列車が、首都圏~九州方面寝台列車以上に振るわず、次々と廃止に追い込まれた一因という気もします)

一旦自室に戻った後も、外は暗いものの、まだ寝るには早い時間と言う事もあり、シャワー利用に出向く、その後ロビーに出て他の乗船客と談笑したりして暫くの時間を過ごします。

HPでは「フェリーきかい」には浴室設置の旨が記されていますが、実態は大浴場の浴槽にはお湯を入れず、洗い場部分をシャワーブースとして使用していると言っても過言ではない状況で、これなら浴室よりもシャワー室設置にした方が良いのでは…と感じる状況でしたが、比較的古参の船故に致し方ない部分かもしれません。

ロビーでは喜界島民の方々の座談会状態となっており、特にスケジュールを合わせて乗船した訳でなくても、たまたま乗船したら知り合いが…という事も珍しくない様ですし、船内でも「喜界島住宅地図」を発売している旨の掲示を見かける程で、「奄美海運」ならぬ「喜界海運」とでも言いたくなる位です。


そして寝台で一晩を過ごし、夜明け頃には喜界島・湾港に到着、ここで鹿児島から乗船した乗客の大半が下船し、また喜界島から奄美大島などへ向かう乗客が乗船、貨物コンテナの積み下ろしも行われます。

喜界島停泊中に夜が明け、程なく出航となりますが、湾港を出るとすぐに外海ですので、海況次第では結構揺れる事も懸念していたのですが、天候こそ決して良いとは言えないものの、海は割合穏やかな事もあり、快適な航海が続きます。

喜界島と奄美大島は距離的にはさほど離れておらず、天気の良い日は対岸が見える様ですので、生憎の天候でも湾港出航から1時間もせずに奄美大島が左側に見え、あとはずっと島沿いを航行しながら名瀬を目指します。

喜界島・湾港出航から2時間程で奄美大島・名瀬新港入港、奄美大島は日本国内の離島では屈指の大きさと人口を誇るだけあり、名瀬港入港が近づくと本土とは遠く離れた離島とは思えない市街地が拡がる姿が目に入ります。

そして名瀬新港に到着すると、鹿児島から乗船した「フェリーきかい」の船旅は終わり、島内を駆け回った後は唯一の未踏県だった沖縄を
目指す事になります。

「フェリーきかい」は喜界島訪問目的を除くと、乗船の必然性に乏しい船ですので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中でも、乗船された事がある方は少ないかと思います。

比較的古参の船で足も遅く、設備的にもやや見劣りが否めませんので、何時まで現状のまま運航を続けるのか…という気もしますが、存在を知っていれば喜界島へのアクセスとしてだけでなく、奄美大島などへ足を運ぶ際の選択肢にもなり、旅行スタイル次第では利用価値もあるのでは…と感じます。

鹿児島~沖縄航路での途中下船制度適用外となり、奄美大島などを道草して沖縄へ…という旅には使い難く、この喜界航路と名瀬~沖縄(那覇新港)間航路(東京発と大阪・神戸発)の組み合わせでも、鹿児島~沖縄航路の通し運賃と同程度か、少々割増程度の金額(寝台などの差額は当然別途ですが…)で乗船できる乗船券などがあれば…と感じたものでした。