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香港・ライトレールで脱線事故~死者発生の報を聞かないのが不幸中の幸いですが…

2013-05-18 | 鉄道[中華人民共和国]

昨日夕方、中華人民共和国・香港特別行政区(以下香港と記します)の路面電車で脱線事故が発生し、多数の負傷者が発生したニュースは、ネット上などでも盛んに報じられ、海外の事故とは言えども、ご存知の方も多いかと思います。

香港の路線電車と言うと、香港島内を走る2階建て電車が有名で、香港へ足を運んだ事がない方でも、香港中で走り回る2階建ての路線バス(平屋車を探す方が苦労する位、凄まじい数が活躍しています)と共に、香港の交通機関と聞いて真っ先に想像される方も多いかと思います。

香港ではこの香港島内を走る2階建て電車の他に、新界と呼ばれる九龍半島側の郊外西方でも、軽軌(ライトレール)と呼ばれる電車が走っており、今回脱線事故が発生した路面電車は、香港島内を走る2階建て電車ではなく、新界を走る軽軌の方になります。

中華人民共和国(中国)自体が、日本国内各地や韓国の様に、列車や船などで簡単に足を運べる地ではなく、日韓とは時差も存在し、船での訪問では船中泊を余儀なくされます。

その中でも香港や近隣の広東省は遠方ですので、MAKIKYUが足を運んだのはまだ2回、その内新界を訪れたのは2006年に1回だけという有様ですが、新界訪問時にはこの軽軌にも乗車しています。
(以下の写真は全て2006年夏に撮影したもので、現在も路線形態や使用車両などは同様ながら、車両の装いなどが改められている様です)

新界を走る軽軌は、団地群の中にバス並みの緻密な路線網を築いており、地域内交通として重要な役割を果たしている他、西鐵(West Rail)と呼ばれる都心~新界を結ぶ郊外電車の、屯門・元朗など新界エリア各駅と団地群の間を結ぶフィーダー路線的存在にもなっており、ICカード・八達通(オクトパス)での西鐵~軽軌乗継優恵も実施されています。

新界を走る軽軌は都心内や都市中心部~郊外間の路線ではなく、郊外に立地する団地群の中だけを走る路面電車という点でも異色の存在ですが、長い歴史を誇る香港島内の2階建て電車とは異なり、営業開始は1980年代と、比較的歴史の浅い路線です。


主に専用軌道を運行し、車両もステップなしの高床車、電停も地鉄や郊外電車程ではないにしても高床ホームであるなど、日本の電車に例えるなら都電荒川線や江ノ島電鉄(江ノ電)を思わせる雰囲気があり、今流行のLRTで大多数を占める超低床ノンステップ連接車が走る路線とは異なった趣があります。

比較的歴史の浅い路線という事もあり、複線区間や高架区間も多く存在し、電停や電車の姿を見なければ、郊外電車と錯覚してしまいそうになる所も多いのですが、狭い地域内に高密度な路線網を築いている事から、一方通行の単線区間や分岐箇所での三角線なども多数存在するのが大きな特徴で、系統も複雑多岐です。


元英国領という土地柄も影響してか、車両も路線バスの如く、ドアや運転席が片側にしか存在しない欧州スタイル(有名な香港島の2階建て電車も同様です)となっており、終点駅ではラケット状になったループ線で折り返す形態となっているのは、日本や中国大陸本土の路面電車とは大きく異なる特徴の一つです。
(中国大陸本土で2本のレール上を走る営業用の路面電車は東北の大連・長春のみ、他にトランスロールと呼ばれる1本のガイド用レール+ゴムタイヤのガイドウェイ式トロリーバスと言っても過言ではない低床電車が、天津と上海の郊外で運行中です)

この様な路線ですので、分岐箇所の三角線や終点駅でのループ線箇所を中心に、急曲線も至る所に介在しており、乗客として乗車するとなかなか乗り応えはあります。

とはいえ比較的低速での運行とは言えども、完全専用軌道の都市鉄道ではなく、システム的には路線バスなどと同様に、乗務員の注意力に頼る部分が多い路面電車ですので、一部で報じられている速度超過も有り得なくはなく、三角線やループ線などの箇所で減速が遅れた(或いはしなかった)事が要因で事故が発生した可能性も充分考えられる気がします。


ちなみに新界の軽軌は、路面電車にしては異色の両開き3扉の単車ですが、車内での運賃収受を行わない信用乗車制を取り入れている事から、輸送力を確保するために2両連結での運行(車両間の通り抜けは不可)となる事も多くなっています。

今回の事故もニュース記事の写真などを見ると、2両編成の列車で発生している様で、結構な数の乗客が乗車していた事から負傷者数も70名以上、中には重傷者も発生している事が報じられています。

現段階では死者発生の報を聞かない事が不幸中の幸いですが、負傷者の早期回復と詳細な事故原因の究明、そして同種事故の再発がない事を願うばかりです。