MAKIKYUが4月に奄美・沖縄へ足を運んだ際には、鹿児島からのフェリー(奄美海運・フェリーきかい)に乗船して奄美大島・名瀬へ向かい、奄美大島を巡った後に沖縄へ向かったものでした。
奄美大島~沖縄本島間をフェリーで移動する場合、鹿児島~沖縄航路は基本的に毎日就航ですので、最もメジャーな方法になるのですが、この船は鹿児島~奄美大島・名瀬間で夜行運航となり、奄美諸島の島々に寄港する名瀬~沖縄本島(那覇)間では、上下便共に昼間時間帯の航海となります。
鹿児島~那覇間は片道1日強を要していますので、この鹿児島~沖縄航路で奄美大島~沖縄本島間を移動するとなれば、フェリー乗船だけで丸1日を費やす事になります。
本土から遠く離れた奄美諸島や沖縄の遠さを実感したり、足を運び難い奄美諸島の島々を眺めながらのクルージングを楽しみたい向きには、またとない航路ですが、限られた日程を有効に使いたい場合などには、非常に都合の悪い運航スケジュールですし、名瀬・那覇共にかなり早い時間(特に5時台出航となる名瀬発)となるのも、大きな難点です。
しかしながらこの鹿児島~沖縄航路以外にも、東京と大阪・神戸からそれぞれ沖縄本島へ向かう航路が就航しており、両航路も鹿児島~沖縄航路の一部便運航を行うマルエーフェリーが運航しています。
中には奄美大島に寄港せず、本土~那覇間直行となる便もあるのですが、東京航路の一部便と大阪・神戸航路の大半は奄美大島・名瀬港に寄港し、大阪・神戸発着便はその途中で徳之島・沖永良部島にも寄港する便が過半数を占めています。
両航路共に1艘ずつの運航で、おまけにどちらも国内フェリーの中では長距離航路として知られる存在ですので、運航日が月に6回程度の不規則運航となっているのが難点です。
ただ大阪・神戸航路は沖縄行の奄美大島寄港が21時台、沖縄発も16~18時台ですので、奄美大島~沖縄間を夜行移動でき、時間を有効に活用できる利点があります。
MAKIKYUはこの利点を生かし、大阪・神戸航路の運航日に合わせて旅程を組んだ程ですが、この航路で就航している船が「琉球エキスプレス」で、如何にも沖縄(琉球)へ向かう船と言うネーミングと感じます。
(ただ船名に「琉球」を冠しながらも、船籍は沖縄県内ではなく鹿児島県奄美市なのですが…)
「琉球エキスプレス」という名前を聞くと、結構豪華そうな船なのでは…と感じる方も居られるかもしれませんが、船体こそ6000tを越える大型フェリーながらも、貨物や車両の積載スペースが多く取られ、旅客定員は大型船の割には少なめとなっており、外見も見るからに貨物輸送重視のフェリーと言う風貌です。
おまけに大阪・神戸から奄美・沖縄ともなれば結構な長時間航海になるにも関わらず、食堂(レストラン)を設けていないなど、付帯設備を簡略化した「カジュアルフェリー」となっており、どちらかと言うと船旅を楽しむ雰囲気ではなく、貨物輸送のついでに旅客輸送も扱っているといった感があります。
客室も定員が限られるだけでなく、ベッドや個室の数が限られ、大半はカーペット大部屋の2等和室、名瀬からの乗船ではこれしか選択肢が…という状況でした。
そのため設備面では余り感心できる船ではありませんが、多数設置されている自動販売機類や、案内所の物販コーナーで最低限度の食料(カップラーメンやニチレイのホットメニュー、長期保存可能な菓子パンなど)は確保でき、シャワールームの設備もありますので、一部のJR夜行寝台列車(これが酷過ぎるだけですが…)などに比べれば、まだ許容範囲といった所です。
食堂が設けられていない事もあり、案内所近くに多数のテーブルやベンチなどが置かれ、フリースペースとなっているのですが、この空間に置かれた電子レンジ数の多さも、食堂などの設備がなく、弁当類などを持参する旅客が多い事を想定しているのでは…と感じたものです。
この様な船ですので、運航時間帯の良さを除くと利点は…と感じる所で、2等和室利用でも鹿児島~沖縄航路途中下船制度の適用対象外であるなど、鹿児島~奄美大島~沖縄を移動する際に利用するとなれば、運賃面でも割高になってしまう難点もあります。
(奄美大島・名瀬~沖縄本島・那覇間のみの利用であれば、どの航路でも同一等級であれば運賃は同一です)
おまけに沖縄本島・那覇の発着港が鹿児島~沖縄航路(那覇ふ頭)とは異なる那覇新港(東京~沖縄航路もこちらを発着)となり、那覇新港の利便性も非常に宜しくないという難点があります。
一応定時運航であれば、平日なら辛うじて那覇新港ターミナルのすぐそばにあるバス停(埠頭入口)から、那覇バス郊外線(101番)を利用する事もできるのですが、埠頭入口バス停を発着する路線はこの1系統のみしかなく、運行本数も少ない上に、休日は全便運休となります。
MAKIKYUが琉球エキスプレスを下船した日は平日で、一応那覇バス101系統の運行自体はあったのですが、到着が遅れた影響で乗車予定だったバスには乗れず、その後の便を待つとなれば相当な時間待つ羽目に…という有様でした。
那覇新港は本土からのフェリー発着港の一つで、沖縄の玄関口となるターミナルは、遠方から訪れた観光客の印象を大きく左右するのでは…と感じます。
(MAKIKYUの様に沖縄へ初めて足を運ぶ人物が、那覇新港を利用するケースもありますので…)
沖縄は「観光立県」として他県からの観光客受け入りにも力を入れている地域かと思いますので、人口30万人クラスの都市とは思えない程大規模な空港(那覇空港)だけでなく、フェリーで本土から足を運ぶ観光客の事も考慮し、旅客港の整備や利便性向上にももう少し…と感じてしまったものです。
琉球エキスプレスから下船した乗客も、迎えの車などがある場合を除くと、路線バス利用もままならない有様だけあり、殆どがタクシーに乗り換えて…という状況で、フェリー自体の設備面だけでなく、那覇新港の利便性と言う観点でも、船旅に不慣れな人物の利用は余り勧められないと感じてしまったものでした。
(MAKIKYUは結局那覇新港ターミナルから国道58号線と交わる交差点まで、延々と20分程度徒歩で移動する事になり、安謝橋バス停から東陽バスで那覇市内中心部へ移動したのですが、安謝橋バス停を発着する便は沖縄本島の4社各系統が頻発しており、こちらは時刻表要らずで利用できます)
琉球エキスプレスは奄美大島~沖縄本島を移動するには、運航時刻故に便利な存在であるだけに、船内設備は致し方ないにしても、鹿児島~沖縄航路に限定されている途中下船制度の適用対象に含めたり、交通利便性の悪過ぎる那覇新港のアクセスを改善(シャトルバスを運行するなど)するなど、もう少し利用しやすくなれば…と感じたものでした。
沖縄発着の貨客船は、近年有村産業の様に廃業となったり、貨物船に鞍替えして旅客輸送を中止する事業者も存在し、宮古島・石垣島など八重山方面はとんでもない状況になっている事を踏まえると、琉球エキスプレスで旅客輸送が行われているだけ良いのかもしれませんが…