先日「MAKIKYUのページ」では、先月MAKIKYUが乗車した新潟交通の「新潟~池袋線」に関する記事を取り上げましたが、先月に続き今月もMAKIKYUは長距離を運行する高速乗合バスに乗車する機会があり、その際に乗車した路線が今日取り上げる「はかた号」です。
「はかた号」は福岡(博多・天神)~東京(新宿)間を運行、一時期は首都圏方の事業者と2社共同運行を行っていた時期もありましたが、近年は福岡に拠点を置き、バス事業においてはグループ全体で国内最大規模を誇る西日本鉄道(西鉄)による単独運行となっています。
西鉄グループでは一時期、4列席車による福岡~首都圏間の廉価路線「Lions Express」を西武バスグループと共同運行しており、この路線は東京(池袋)だけでなくさいたま(大宮)まで足を延ばしていましたので、この路線が存在していた時期は、「はかた号」は運行時間や距離の面で国内最長ではない状況でした。
「Lions Express」の運行終了後は再び国内最長距離を運行する高速乗合バスに返り咲き、所要時間も最長クラスの存在ですので、一部では「キングオブ深夜バス」とも呼ばれる存在になっています。
日本最大のバス事業者が運行する、日本最長の高速路線バスという事で、長距離高速バスを多数抱える西鉄グループの中でも「はかた号」は特別な存在として扱われており、通常は「はかた号」専用に用意された専用塗装車が充当され、近年では三菱製のスーパーハイデッカー車が充当されています。
(繁忙期の増便時などは、他の長距離路線で用いている車両なども充当されます)
この専属車両は夜間高速バスとして一般的な独立3列席に加え、前方2列(計4席)は個室型の「プレミアムシート」となっているのが大きな特徴で、この座席は通常運賃に加えて+5000円、幅運賃制を導入している「はかた号」では片道17000円~20000円を要し、早期購入割引対象からも除外されるなど、運賃面でも際立った存在になっています。
高速バスというと廉価な印象が強い中で、異色の存在とも感じる「プレミアムシート」ですが、MAKIKYUが「はかた号」を利用する際には乗車当日まで予定が確定しない上に片道のみ利用、そうなると早期購入割引や旅行会社パッケージ商品の利用などは厳しく、プレミアムシート利用でも新幹線の回数券バラ売りよりは若干割安ですので、空席があれば利用するのも…と思っていました。
乗車当日の午前中に西鉄の窓口で「はかた号」の空席状況を尋ねたら、「プレミアムシート」も1席だけ空席ありとの事で、「はかた号」に乗車するだけの時間も確保できる状況でしたので、なかなか利用する機会のない「プレミアムシート」を試してみました。
西鉄窓口で購入した乗車券(画像の日付部分は塗消加工しています)は、券面に「プレミアムシート」表記などはなく、席番と販売金額を除くと、ビジネスシートと大差ない状況なのは少々物足りないと感じたものでしたが、乗車時に回収され、またネット予約での自宅などでの乗車券を印刷する事も当たり前の状況では、致し方ないのかもしれません。
そして夕方博多駅交通センターへ足を運び、いよいよはかた号乗車となりますが、プレミアムシートは合板の仕切りとカーテンで個室状態にする事が出来る構造(上部で僅かに透明となっている部分があり、休憩後に乗務員が車内を巡回する際には、在席有無を確認する事が可能な構造)となっており、これだけでも一般席(ビジネスシート)とは別格の存在である事を実感させられます。
座席は白い革張り、LED読書灯や電動リクライニング機能も装備され、JR東日本が一部の新幹線車両で導入している「グランクラス」の座席を連想したものでした。
専任アテンダント配置やプレミアムシート利用者向けの飲食物配布などはありませんが、プレミアムシートのみの付帯サービスとして、座席脇にiPad端末(ネット接続は1回30分×1日3回まで)が備え付けられています。
この他にビジネスシート利用者を含め、各乗客に対してミネラルウォーターやアイマスクなどの配布が行われていましたが、以前実施されていた軽食類の配布などは現在廃止されていますので、途中で食料調達が必要になった場合は、夜と朝に各1回停車するSAでの開放休憩時間(佐波川SA/静岡SA・各15分程度)を利用し、SA内にあるコンビニで各自調達する事になります。
座席のリクライニング角度は深夜帯に座席を最大まで倒した際、思った程は…と感じる面もありましたが、個室形状になっている事もあって前後の利用者に気兼ねする事がない上に、足元の空間などは広さも充分確保されており、今までに乗車した路線バスの座席の中では最上級と感じたものでした。
合板の仕切りとカーテンで通路と仕切られた構造は個室感覚で高級感が漂い、周囲の目を気にしなくても済むのが大きな利点となる反面、通路を挟んだ反対側の車窓を眺めるのが困難なのは難点で、MAKIKYUは博多発の「はかた号」が出発翌朝に通過する富士山南麓一帯は幾度も通過していますのでさほど問題ないものの、九州や海外などから「はかた号」に乗車し、初めて首都圏を目指す途中で富士山を眺めたいと思う場合などは…とも感じたものでした。
(MAKIKYUが乗車したプレミアムシートは進行方向右側・新宿行だと富士山は進行方向左側となります)
またMAKIKYUは「はかた号」の一般席(ビジネスシートと呼称)はまだ利用した事がありませんが、「はかた号」と同じく西鉄が運行しており、運行距離や方面も近い状況にある高速路線バス「博多・フジヤマExpress」は以前1度乗車した事があります。
(この路線は富士急グループと共同運行で、両者の車両が隔日運行となっていますので、乗車日次第では西鉄ではなく富士急の車両に当たります)
ビジネスシートの設備は、夜間高速バスでは一般的な独立3列シートを配した「博多・フジヤマExpress」と大差ない雰囲気と感じたものでしたが、「はかた号」のビジネスシートは座席モケットが革張りとなっており、やや高級感が漂う雰囲気になっています。
「キングオブ深夜バス」と呼ばれる路線の専属車両であると共に、「博多・フジヤマExpress」+JR御殿場線普通列車+小田急線急行等の乗継で博多・天神~新宿間を乗り継いで移動(御殿場・松田~新松田乗換)するよりも少々割高になる事が多い分、若干の差別化が図られているのでは…とも感じたものでした。
乗車した際の感想としては、夜間運行が主体となる路線で、明るい時間の運行は静岡県内と関東地方という状況、ましてプレミアムシート利用で合板の仕切りなどが存在する事もあってか、車窓面などは余り…と感じましたが、 以前「博多・フジヤマExpress」に乗車した事があり、その際にも乗車前に予想していた程は疲れなかったと感じる身(多少の疲れは感じましたが…)ですので、新宿到着10分強の遅れで国内最長クラスとなる15時間弱の乗車でも、その気になればまだ乗っていられると感じたものでした。
ただ近年は首都圏~福岡県内間の往復新幹線(直通のぞみ号限定)+九州内宿泊がセットになったビジネス向けパッケージ商品(1人用)が33000円程度で出回り、この商品の宿泊費が5000円程度=新幹線片道が実質14000円程度で乗り遅れ時に当日中の後続列車自由席も利用可能、これが更に若干割引される状況になっています。
(2人以上での利用で乗り遅れ時の救済なしであれば、更に割安なパッケージ商品も多数存在しています)
そのため夜行バスへの乗車、それも最長路線という話題性や楽しみはあるにしても、幾ら列車やバスが好きでも夜を越すなら座席よりはホテルのベッドの方が快適な事は言うまでもない話で、事前に予定が決まっていてビジネスパックが利用可能な状況なら、価格面などを考えると個人的には「はかた号」利用は少々厳しいとも感じたものでした。
(予め乗車日が確定できる帰省の学生などであれば、ビジネスシートの早期購入割引などは利用価値大だと思いますが…)
とはいえ片道のみ当日購入の場合などは、福岡~東京間で「はかた号」はプレミアムシート利用でも新幹線バラ売り回数券などに比べて運賃面などで優位、北九州地区では新幹線の東京行最終よりも遅い時間に出発→大幅遅延がない限りは新幹線の東京行始発よりも早く都内に到着できるメリットもあります。
バスへの長時間乗車は好き嫌いがかなり分かれる所かと思いますが、個人的には首都圏~九州間を結ぶ移動交通手段としては最有力とは言い難いながら、状況次第では「はかた号」も選択肢の一つとして利用価値アリと感じたものでした。
また記事中でも触れた「博多・フジヤマExpress」に関しても、機会があれば別記事で取り上げたいと思います。
(お断り)「はかた号」は九州~首都圏に跨って運行する高速乗合バスですが、「九州本土」カテゴリーでの取り扱いとさせて頂きます。