山口県・下関~中国山東省・青島間を結び、オリエントフェリーが運航する国際航路「ゆうとぴあ」は、中国事情に精通されている方をはじめ、船旅に対して関心を抱いている方であれば、存在をご存知の方も多いと思います。
オリエントフェリーでは先月上旬、急遽今年限りでの運行取り止め(休航)を発表、このリリースを見て驚いた方も居られるかと思いますが、日本発の「ゆうとぴあ」航海は明日(23日)が最後となります。
(オリエントフェリーHPをご覧になりたい方は、こちらをクリックして下さい)
MAKIKYUはこの「ゆうとぴあ」には1往復だけ乗船機会がありましたので、「MAKIKYUのページ」でも「ゆうとぴあ」惜別企画として何度かに渡り、乗船した際の様子や感想などを取り上げたいと思っています。
日本側の発着港となっている下関港は、下関駅から徒歩数分の所に位置しており、「ゆうとぴあ」に乗船した事がない方でも、このターミナルへ足を運んだ事があるという方も決して少なくないと思います。
下関港国際ターミナルは「釜山・青島へ」という標記も見受けられ、日本発着の国際航路としてはトップクラスの地名度や歴史を誇り、基本的に毎日就航となっている釜山航路(関釜フェリー)と共に、下関市の友好都市にもなっている青島への航路が就航している事を強くPRしている雰囲気を感じたものでした。
中国側の発着港となっている青島港は、青島火車站(青島駅)から市内公交汽車(路線バス)で10分程、最寄りのバス停「海員」から徒歩5分程度の所に位置しており、港周辺は飲食店などは余り多くない(現地系コンビニなどがあり最低限の食料調達などは可能)ですが、青島火車站周辺との間を結ぶアクセスは決して悪くない立地です。
ターミナル内にある地図に国際航路の就航先として威東(Weidong)海運が運航する韓国・仁川などと共に下関への航路が記されていましたが、休航後も友好都市間を結ぶ国際航路が運航していた痕跡を留め続けるのか気になる所です。
ちなみにオリエントフェリーの下関~青島航路就航は1998年、その後2002年に同じSHKライングループ内の新日本海フェリーにおいて、日本国内航路(新潟~小樽)で用いていたフェリー「ニューはまなす」が移籍、「ゆうとぴあ」(船籍はパナマ)に改称して運航を開始し、現在に至っています。
ニューはまなすの就航は1987年ですので、就航開始から30年弱が経過、フェリーの中ではかなり古参の部類に入る存在となっており、近年の需要減と合わせて休航の要因になってしまったのでは…とも感じます。
日中間航路はハウステンボス関連会社が長崎~上海間で運航した貨客船も短期間で運航取り止め、神戸~天津間を結ぶ「燕京(YAN JING)」も2012年に運航終了となっていますので、ゆうとぴあの休航で残る航路は関西~上海間を結ぶ「新鑑真」と「蘇州號」の2航路(新鑑真は日本側発着地が神戸と大阪が隔週で入れ替わり・蘇州號は大阪発着)のみとなってしまいます。
関西発着の2航路は片道45時間程度を要し、日本発着の定期旅客航路ではどちらも運航時間・航行距離共に最長クラスに属するだけに、どちらも週1便ずつの運航となっていますので、週2便運航していた「ゆうとぴあ」を合わせると毎週4便が就航していた日中間国際旅客航路は、来年からは半分の2便に激減してしまいます。
ただ下関港からは有名な釜山航路(関釜フェリー)が毎日就航、下関からさほど遠くない博多港からは釜山へ向かう高速船(JR九州高速船「BEETLE」と、共同運航を行う未来高速「KOBEE」)が毎日複数便就航しています。
これらの航路で韓国・釜山へ向かい、その後韓国内を列車などの陸路で移動すれば、韓国の首都・ソウル市内からも都市交通(広域電鉄・市内バス)を利用して容易に足を運べる仁川港から出航する中国行国際フェリーに乗り継ぐ事ができます。
仁川発国際フェリーの行先は東北地方や山東半島の様々な都市をはじめ、それ以外も天津や連雲港など様々な行先が存在、毎日複数便が就航するなど、日中間どころか日韓間とも比べ物にならない程充実しています。
(東北地方は大連や丹東など、山東半島は煙台や威海など。一覧は仁川港国際旅客ターミナルHP(한국어)をご覧下さい)
そのため関釜フェリーやBEETLE+韓国内の陸路移動+威東海運を乗り継げば、「ゆうとぴあ」休航後に下関~青島間を陸路と海路の乗継で移動する事が可能で、個人的には最も容易な代替移動手段かと思いますし、他に仁川~山東省他都市への国際航路利用+山東省内を列車や長途汽車(高速バス)などを利用する方法も、「ゆうとぴあ」休航後の代替手段として利用価値ありかと思います。
(威東海運HPをご覧になりたい方はこちらをクリックして下さい-※English・한국어・中文のいずれかです)
しかし威東海運のフェリー予約や乗船は、日本国内で取り扱っている箇所が存在せず、Eメールや韓国か中国への国際電話などで直接予約・現地発券か現地入りした後の手配となり、威東海運以外の韓中間国際航路会社に関しても同様です。
そのため日本語を用い、日本国内で乗船券が容易に手配可能だった「ゆうとぴあ」に比べると面倒な印象が否めず、「ゆうとぴあ」での日中間直航に比べると韓国内を陸路移動する手間も要しますので、乗継を含めた移動時間も長くなる事を考えると、不便さが否めないのも事実です。
(MAKIKYUが以前単独で威東海運の仁川~青島航路に乗船した事もありますので、韓国内を単独で動き回れる方なら無問題かと思いますが、海外旅行未経験の方が初めての海外旅行で威東海運のフェリー予約や乗船を行うとなれば、一人旅などの場合は少々ハードルが高いと思います)
また関釜フェリーやBEETLE+韓国内の陸路移動+威東海運などをセットにした乗車船券も販売されていません(それどころか近年、日韓共同きっぷすら廃止される状況です)ので、下関→青島(或いはその逆)という表記の乗船券も当然ながら見納めとなってしまい、私用の旅行であれば「ゆうとぴあ」が就航しないなら今後中国、特に青島へ足を運ぶ気になれないという方も出てくるのでは…と感じます。
(写真は氏名や日時など一部分を塗消加工・また特別企画乗船券につき所定運賃とは異なる金額で発券された乗船券画像です)
個人的にも次々と新路線が開業する中国高鉄(CRH)などで、中国内の移動利便性が飛躍的に向上する一方で、日中間の心理的な距離が遠くなってしまい、日中間で友好都市としての交流を続けている下関・青島2市間を直航する交通手段が途絶えてしまう「ゆうとぴあ」休航は非常に残念と感じています。
「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方で「ゆうとぴあ」に乗船された事がある方が居られましたら、是非その際の感想などをコメント頂けると幸いです。
また船内の様子などに関しては、近日中に別記事で追って取り上げたいと思います。