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函館市交通局 8100形電車~旧型車を車体更新した部分低床車

2009-07-10 | 鉄道[北海道]

 
先日「MAKIKYUのページ」では、函館市交通局(市電)で活躍する最新鋭の全低床車・9600形「らっくる」に関して取り上げましたが、先月MAKIKYUが函館を訪問した際には、「らっくる」以外に部分低床車にも乗車する機会がありました。

この部分低床電車が8100形と呼ばれる車両で、「らっくる」と共に車椅子乗車にも容易に対応できるメリットを生かし、2つある低床車限定ダイヤ(どっく前発着と谷地頭発着それぞれ1ダイヤ・車両検査時などは一般車両による代走)に隔日充当されています。

8100形は「釣り掛け駆動の旧式車両を車体更新した低床車」というのが大きな特徴で、車体のみを新品に載せ換え、下回りは旧型から転用した路面電車用車両は函館市電をはじめ、国内各地で多数走っていますので、車体更新車自体は路面電車としては特に珍しい存在とは言えないものの、これが低床車ともなれば国内では他に類がなく、非常に珍しいと言えます。

しかも8100形は台車も旧型車の再用品を用いており、この部分の車高は他の旧型車や車体更新車などと同等にも関わらず、乗降扉付近のみをノンステップの低床部としています。

そのため車内通路には2段の段差が介在し、こんな特異な構造の電車は日本各地を探しても函館市電だけ(前後扉に1段のステップと、ノンステップで乗車可能な中扉の間で、緩やかなスロープが存在する電車は少数ながら他都市の路面電車で存在しており、MAKIKYUも乗車した事があるのですが…)ですので、乗車した際のインパクトは相当なモノがあります。

また旧型車の下回りを転用する事で、新車導入よりも安価に低床車を導入でき、車椅子乗車にも容易に対応できるメリットもあり、この車両にはPRも兼ねてか、「車椅子対応」と大きく表記されている程です。

しかしながら函館市電は整理券方式のワンマン運転を行っており、乗客は基本的に車内を後→前へ移動する必要があり、その際には通路の段差を2段上がり、そして2段降りる必要がある上に、中扉より後部に乗車した場合は下車時に段差を下がって上がり、更に下がる事になります。

そのため「車内は段差だらけ」と言っても過言ではなく、足の不自由な乗客には一般車両以上に乗り降りが厄介な上に、そうでなくても走行中に車内を動き回ると転倒しやすいなど、危険極まりなくデメリットも大きいですので、当初は部分低床車を次々と登場させる予定だったものが、増備計画取り止め→全低床の新車導入へ計画変更を余儀なくされた程です。

こんな車両ですので、函館市電で今後同種車両が増える事や、他事業者で同種車両が登場する可能性は極めて低いと言え、趣味的には非常に興味深い存在ですが、1両だけの異端車として活躍し続ける公算が高そうです。

とはいえ広島電鉄の朝ラッシュ時や連接車両などの様に、車掌乗務で前・中(or後)の双方の扉から乗車できる方式を用いれば、車内での段差移動の問題もある程度解決でき、運用方法次第ではこの種の車両を導入するのも悪くないかもしれません。

ただ最近各地で続々と登場している低床車の中でも、松山の伊予鉄道で活躍している様に台車を車両両端に寄せた単車で、台車間を低床部として乗降扉もこの部分に配置した車両であれば、収容力は劣るものの旧型車更新でも対応可能ですので、もし今後何処かで旧型車更新の低床車が登場するのであれば、函館市電8100形の再来ではなく、「伊予鉄タイプの低床車で旧型車の機器流用車」が出てこないものか…と感じたものでした。

写真は「車椅子対応」と大きく表記されているのが特徴の外観と、段差だらけの特異な構造をした車内の様子です。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
撮影者名を記して頂ければ… (MAKIKYU)
2013-06-25 22:24:47
パワーボム様こんばんは。

この記事で使用している2枚の画像使用に関してですが、いずれも撮影者(或いは画像提供者)MAKIKYUである旨を記し、同一比率縮小以外の画像加工を行わずに使用し、第3者に画像を提供したり、営利目的で使用するのでするのでなければ、画像を使用して頂いても結構です。

但し同一比率縮小以外の画像加工を伴う場合などは、その内容次第で応相談とさせて頂きますので、その場合は折り返し連絡お願い致します。

また動画製作ができましたら、該当URLの報告も合わせてお願い致します。
(その連絡に関しては、コメント欄使用だけでなく、このページについての項に記しているメールアドレスの利用でも結構です)
返信する
画像の使用について (パワーボム)
2013-06-25 20:39:10
初めまして。
ニコニコ動画という動画共有サイトで「迷列車で行こう 北海道編」シリーズをやっているパワーボムと申します。
お願いがあるのですが、この記事に掲載されている8100形の写真を動画内で使用してもよろしいでしょうか?
製作した動画は会員登録なしでご覧いただけるyoutubeでも公開していますので、ご希望でしたら完成した作品のURLを後日お送りいたします。
ご返事お待ちしております。
返信する
彼の地を視察されたとなると… (MAKIKYU)
2009-07-14 23:16:59
乗後景様こんばんは。

こちらは路面電車が多数活躍しているヨーロッパの地へ足を運んだ事はなく、恐らく当分その機会も…という状況ですが、信用乗車が当たり前の彼の地では、確かにこの車両の様な構造でもさほど問題はなさそうです。

日本では車掌orアテンダント要員の配備を行い、乗車後に車内を移動する必要性を減らす事が、この様な車両を有効に生かす最有力手段化と思いますが、函館では今後この様な取り組みを本格的に行っていくのかどうか気になる所です。

運転士とは別個に、車掌を乗せたレトロ電車を走らせている位ですので、その気になればすぐにでも出来そうな気もするのですが…
返信する
Unknown (乗後景)
2009-07-12 01:56:45
記事を拝見し、今どきよくこんな珍車を作ったものだと感心しました。
しかし運賃収受の問題がありながらこれではちょっとどうかという感じは確かにします。

先月イタリアとスイスで路面電車にしろ低床ホームの列車にしろ、自己改札なら部分低床車で結構こと足りてしまうのか、と感心した後だけに興味深く感じました。
してみると車内での運賃収受は案外厄介な問題ですね…。
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