今月上旬にMAKIKYUが九州を訪問した際には、久留米~日田間で久大本線を利用する機会があったのですが、その際には1編成しか存在しておらず、遠方の人間にとっては乗り難い列車の一つである特急「ゆふDX」号の運行時間帯だった事もあり、この列車に乗車する機会がありましたので、少々取り上げたいと思います。
「ゆふDX」号は現在博多~大分間を、久大本線経由で結ぶ特急列車「ゆふ」号3往復の中で、半数に当たる列車を「ゆふDX」号として運転しているもので、両者は運転時刻こそ同一ですが、「ゆふDX」号に充当するキハ183系1000番台気動車が1編成しか存在しない事もあって、奇数日と偶数日で充当車両や編成、列車名を変える異色の列車(キハ183系1000番台車の検査時など、「ゆふDX」号の設定そのものが存在しない日も存在します)として知られています。
このキハ183系1000番台気動車は、定期特急列車などで多数が大活躍している旧国鉄~JR北海道の「キハ183系」の構造を基本に設計した事もあって、同系の1000番台という付番となっています。
キハ183系気動車の大多数が活躍する北海道とは遠く離れた九州の地に、4両1編成のみが導入され、名鉄パノラマカーや小田急ロマンスカーの如く展望席を設けた車両である上に、電車(485系)との併結も可能な構造となるなど、北の大地を走るキハ183系気動車とは同一形式ながら、大きく異なる車両となっています。
ちなみにこの車両はJR発足からまもない1988年に「オランダ村特急」へのアクセス用列車として製造され、導入当初は赤・白・紺色の3色塗装を纏っていましたが、その後同列車の廃止に伴って長崎方面から久大本線方面に転用、「ゆふいんの森Ⅱ世」として外観を緑色に金帯の装いに改めています。
ただこの装いでの活躍もキハ72形気動車「ゆふいんの森Ⅲ世」が導入される事で終止符を打ち、再び長崎方面へ戻されて登場当時に近い装いに改められると共に、大村線を走る特急「シーボルト」号として活躍する事になるのですが、これも長続きせずに再び久大本線方面に転用、今度は「ゆふDX」号として活躍する事になって現在に至っています。
2004年の「ゆふDX」号への転用時には、最近のJR九州らしい車内リニューアルなども行われており、外観も九州新幹線「つばめ」号などで用いられている「古代漆色」と呼ばれる深みのある赤色1色という強烈な装いに改められたのですが、これも今年に入ってから塗り替えられています。
今年の塗り替えで塗装変更は5回目、コロコロと装いを変えているこの異端車両は、一体何度塗り替えをすれば気が済むのか?と感じてしまう程ですが、今度は黄色1色と言うこれまた目立つ装いとなっており、4両1編成しか存在しない異端車の存在を、一般にも強くPRするものとなっています。
また「ゆふDX」号への転用時には、先頭部の展望席は普通車指定席扱いながらも、割増料金が適用される「パノラマシート」となっているのも大きな特徴です。
先日乗車した際には当初乗車予定がなく、当日の気紛れで乗車する事になった上に、乗車区間が短く、周遊きっぷのゾーン券(フリー区間内で通用期間中であれば、特急も普通車自由席は無制限に利用可能です)を所持していた事もあって、自由席(「ゆふDX」号は真ん中の2両が自由席で、両端の車両が指定席となります)を利用したMAKIKYUも、割増料金適用となるパノラマシートの様子を視察してきましたが、この区画の座席は2+1配列でそれなりにゆとりはある様に感じられたものの、JR九州ではお馴染みの木材を用いた鉄道車両離れした感のある座席は背もたれも小さく、リクライニングや方向転換・回転機能も見受けられないなど、前面展望以外のメリットは…と感じる状況でした。
そのため最前部となる展望席区画は良いとしても、後向きとなる車両の最後部展望席などは、わざわざ割増料金を払ってまで利用する価値があるのか疑問に感じる所ですが、こちらも利用客の姿が散見されたのは意外に感じたものでした。
ちなみに「ゆふDX」号は車両自体も既に製造から20年を経ており、非電化ローカル線である久大本線を走る列車である事から、博多~大分間のアクセスとしては、新型の振り子式電車が多数走る日豊本線経由の特急「ソニック」号に比べると所要時間・車両設備の両面で見劣りする事は否めず、久大本線を走る特急列車としても、全席指定席制の観光特急「ゆふいんの森」号に比べると、設備面ではやや苦しい面がある事も事実です。
とはいえ九州内やその周辺の人間でもなければ特殊な運行形態故に、コロコロと装いや用途を変えて活躍する異端気動車への乗車機会は限られますので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も機会があれば、是非一度乗車してみるのも面白いかと思いますが、この車両が現在の運行形態や装いで当面落ち着くのか、今後更なる変化が起きるのかも気になるものです。
今回のキハ183系「ゆふDX」号乗車は当初計画にはなく、旅程を旅行開始後に変更し、久大本線に乗車する予定となって初めて構想が出てきた有様ですが、今回の旅行ではSUNQパス利用でのバス利用が結構なウエイトを占めていたものの、福岡近郊を動きやすい様に…という事で所持していた福岡ゾーンの周遊きっぷ(横浜~福岡のJR単純往復+現地移動を考えると、こちらの方が幾分割安です)が重宝した次第です。
また条件が揃えばナイスゴーイングカードによる割引乗車券利用(30歳以下・金~日曜日か祝日)や、2枚きっぷ(複数人利用)などの方法もありますが、気兼ねなく乗れるフリーきっぷに比べると、使い勝手は確かに劣るかもしれません。
あとこの車両は1編成だけの珍車である事に加え、現段階で既に5回目の塗装となっている事から、今後も更なる塗装変更が行われる可能性も否定できませんので、その様な観点からも、早めに記録しておきたい車両かもしれませんね。