先日「MAKIKYUのページ」では、JR九州の筑肥線で活躍を始めたばかりの最新鋭車両・305系に関して取り上げました。
(写真は先日の記事で使用した画像の再掲です)
同系は某デザイナーが絡むJR九州だけに、内装なども非常に特徴的な車両となっており、先日公開した記事の続編で、今日は305系の内装に関して取り上げたいと思います。
305系は地下鉄線にも直通する4扉ロングシート車で、スペック的には典型的な通勤電車と言っても過言ではなく、車内LCDモニターやLED蛍光灯、座席脇の大型袖仕切りなどは、近年の通勤電車では標準仕様になりつつあるものです。
内装は白色無地の化粧板こそシンプルな印象ですが、近年首都圏で増殖している安物車両の様な貧相感はなく、同一メーカーが製造に関与している東武60000系や阪急1000系列を連想する形状のLED蛍光灯なども、見付けの面では悪くない気がします。
ただ某デザイナーが絡む車両だけあり、ただの標準的な新型車という印象で留まらないのがJR九州らしい所で、ドア付近で円状に配置されたつり革や、鹿児島本線や福北ゆたか線で活躍する817系ロングシート車(通称:白缶)を連想させる、合板を用いた非常に特徴的な座席などは、他社ではなかなか見かけないものです。
白缶のロングシートは、デザインこそかなり目を引く座席ながらも、背もたれが合板剥き出しである上に、座面も薄くて硬く、おまけに背もたれの固定が不充分な事が災いしているのか、走行中に背もたれの合板が振動する有様で、ネット上でも余り芳しくない評判が散見、一部では「板切れ」「ベンチ」などとも評される状況です。
そのため305系も見た目は白缶と同種の座席故に、構想図が発表された段階から、座席に関しては余り期待できそうにないという評が幾つも見られる程で、何らかの改善策が施されるのか否かも気になっていました。
実際に305系に乗車し、着席した際の感触としては、合板剥き出しの背もたれこそ相変わらずですが、座面のクッション厚みが増してやや軟らかくなると共に、背もたれの固定もしっかりされた印象を受けたものでした。
「DXグリーン車」や「ななつ星」と評する程のレベルではないものの、博多~篠栗間で乗車しただけでも、少々辛いと感じた817系ロングシート車に比べると、随分改良されたのでは…と感じたものでした。
(首都圏から航空便で福岡空港へ飛来した方で、首都圏方の空港アクセスに標準軌某大手私鉄を用いた方であれば、白缶でもまだマシと感じる方も少なくないと思いますし、305系に至っては天国と評する向きもあるかと思います)
特徴的なロングシートは、1車両内で様々な柄のモケットが用いられている事や、戸袋窓部分だけ枕付きとなっている事、優先席部分だけ背もたれ上部が白い革となっている事なども特徴的で、ガラス製の大型袖仕切りなどと共に、デザイナーの個性が非常に強く現れていると言えます。
車内の床材は白缶とは異なり、一部でQRコードとも評される特徴的な柄が施されており、観光列車や優等列車ではなく、地下鉄線にも乗り入れる通勤車両でこれだけ凝ったデザインの床材が用いられている車両は、他にどれだけあるのか…と感じる程です。
西唐津方の先頭車両は、筑肥線筑前前原以西の列車頻度が限られる線区特性も影響してか、303系などと同様に、地下鉄線内運行車両では珍しいトイレ装備車両となっており、当然ながら車椅子対応の大型タイプです。
この車両だけは床材がQRコードを連想させるものではなく、フローリングとなっているのも特徴で、これはQRコード以上に強いインパクトのあるものです。
この他にもJR九州では、客ドアのガラス窓下部に貼られているのをよく見かける「床に座らないでください」というステッカーが見受けられず、この位置にKUROのイラストが施されているのも特徴です。
KUROの表情やポーズなどはドア毎に異なっており、地下鉄線内を運行する通勤車両らしからぬデザイナーの遊び心が感じられる辺りも、
面白いと感じたものでした。
座席の好みは大きく分かれる所かと思いますが、305系に初乗車した際の感触としては、決して悪くない車両という印象を受けたもので、白缶に比べると大分好感の持てる車両と感じ、305系で採用された要素を、今後白缶増備が行われるとしたら是非…と感じた面も幾つもと言う状況でした。
ただドアチャイムがJR九州では一般的な1打チャイムではなく、首都圏のJRや東京メトロなどでよく聞くタイプになってしまったのは少々残念と感じたもので、ドアチャイムは今後JR九州では一般的な1打チャイムに変わらないだろうか…とも感じたものでした。
また305系導入は、国鉄時代から走り続けてきた103系(1500番台)の老朽取替えが主目的となっていますが、103系1500番台は市営地下鉄線内でも時折車両故障などの輸送障害も怠起していた事でも知られています。
車両故障などによる輸送障害が発生した際には、交通局HPのリリースでも「JR車両」と強調され、地下鉄線での列車到着案内でもJR線からの直通列車は、わざわざ「JR発」として色分け表示される有様です。
103系に比べると静粛性や快適性などは大幅に向上、地下鉄線内ワンマン運転にも対応し、エネルギー効率も大幅に向上、同車が地下鉄線乗り入れから撤退する事で、一層の安定輸送実現にも貢献する事が見込まれます。
ただ今年春の305系導入では、6両固定編成のみの代替となっており、筑前前原以西を3両編成で運行するワンマン列車に関しては、まだ103系で運行する列車が多数存在しています。
こちらは車体外板にも痛みが見受けられるなど、余り芳しくない印象も受けたものでしたが、今後こちらの代替で3両編成の305系も登場するのか、それとも暫くは103系を使い続けるのかも気になったものでした。
先代から引き継いだ額縁風で切妻の先頭デザインは80年代頃の車両を彷彿させ、個人的にあまり格好良くは見えないですね。それなりにモダンに見えるように工夫しているのはわかるのですが・・・またこの先頭形状は空気抵抗も大きそうに見えます。通勤形車両なのであまり影響ないということでしょうか。(阪急では額縁部分を削った車両もあるそうです・・・)
座席は「白缶」がアレな出来だっただけにかなり心配していましたが、意外にも評判は悪くはないようで安心しました。座面は日立の新標準座席に近いように見えますね。
817系の要素にプラスして新たにガラスを多用した内装はスタイリッシュで好感が持てます。
また、JR九州では初めて案内表示器にフルカラーLEDやLCDを初めて採用したのも特徴的です。
今までデザイン崩してまでバス用のと同じ案内表示器を使っていたのは一体・・・
ドーンデザインではインテリアデザインでは妥協しない一方、エクステリアはコストを抑えようとする傾向があるそうです。(ただし特急形車両はJR九州側の意向で凝ったデザインにしているらしいです)ここまで気合の入ったインテリアなら、もう少しエクステリアに力入れても良さそうなのですが・・・
同じデザイナー車両でもノイマイスター氏(500系新幹線やメトロ10000系のデザイナー)が手がけると、ローカル線向け車両であってもエクステリア面で妥協しないのとは対照的です・・・(その代わりセミオーダー式にして同じデザインの車両を量産することでコストを抑えています)
導入発表後は一部で直流4扉地下鉄直通対応の「白缶」とも言われた305系、白缶とは共通点も多いものの意外と差異もあり、問題点の改善や進化が見受けられるのは、歓迎できる事と感じています。
座席も合板剥き出しの背ずりなどは、好みが分かれると思いますが、薄くて硬い座面や、固定が不充分な為に背ずりが振動するといった問題は解消されており、白缶も今後305系レベルへの改善は期待したいものです。
またバス用の行先表示器も、キハ220形の様なワンマン運転主体のローカル用ならまだしも、多数の種別が入り乱れる鹿児島本線や福北ゆたか線の博多近郊では少々難があり、今後導入されるであろう817系かその後継車主に関しても、305系の実績を反映したフルカラーLED導入を期待したいものです。
305系が現状違うチャイムなのは残念ですが、末永く使用し続けて欲しいものです
JR九州の1打チャイムはかなり特徴的で、他に西鉄電車でも同種のチャイムが用いられていますが、九州以外ではまず聞く機会がないものですので、このチャイムを聞くと九州へ来たと実感するものです。
これに対し305系は、首都圏で最もよく聞く(しかも増殖中)のドアチャイムですので、この点は少々残念と感じていますが、せめて他車両でのチャイム換装が進むことだけはない事を願いたいものです。
できれば305系も今後、1打チャイムかこのチャイムのリピート(2打か3打)にでも改められれば嬉しいのですが…