美ヶ原(うつくしがはら)からの帰り道は、来た時と同じでは能がないので、和田峠方面を通って帰ることにした。
ビーナス・ラインを扉峠か和田峠で左折する予定だったが、カーナビがもっと手前で左折を指示したので、それに従って道なき道(と言うほどではないけれど、センターラインはなかった)を下る。幸い登りの車とは2台しかすれ違わなかった。
そんな山道を下ると、やがて集落が見えてきた。和田村か? 中山道(国道142号)に出る。
立科、望月、佐久などを経て、小諸まで道なり。反対車線は結構トラックなどが走っていたが、こちらはガラガラでほとんど独り旅の状態。
景色はのどかな田園風景、やがて彼方に浅間山が見えてくる。道沿いの名所らしきところは“笠取峠の松並木”くらい。むかし軽井沢に行くときに通った安中の松並木を思い出す。
途中、千曲川にかかる橋を渡ったところで、塩名田の地名が目に飛び込んできた。そして“竹廼家”の看板も見えた。
ここにも、何十年か前に佐久の鯉料理を食べに来たことがある。何から何まで鯉料理で、ぼくはあまり得意ではなかった。
塩名田はもう1つ、遠藤周作の『さらば、夏の光よ』の舞台としても有名(それほど知られていないかも?)である。
妊娠中絶するかどうかで悩む主人公の女が、確かこの塩名田の出身だったはずである。
軽井沢に滞在中の遠藤周作もここに鯉料理を食べに来て、膳を出しに来た地元の女の子を見てモデルにしたのではないだろうか。
この夜、帰宅後、小津安二郎の『父ありき』をDVDで観たのだが、偶然その舞台も上田の郊外であった。
父子(笠智衆と佐野周二ただし子役)が渓流で川魚を釣るシーンがあったが、あの辺で撮影したのだろうか。
* 塩名田の千曲川を渡ったあたり。2010/8/24撮影。