気ままに

大船での気ままな生活日誌

原三渓と東慶寺

2009-12-09 21:40:03 | Weblog
今朝、原三渓のことを、そして昨日、東慶寺のことを書いていて、あれ、結構、両者に縁があるんだなと思って、今、書いている。

まず、三渓園内に、旧東慶寺仏殿がある。寛永11年建築のもので、1907年(明治40)に、東慶寺から移築したものだ。先日、ここには行かずに、写真はないが、なかなか優雅な建物である。しかし、何故、移築したのだろうか。

そして、三渓が親交をもったという、朝比奈宗源円覚寺管長は、一時、東慶寺の住職を兼務していた。彼とのつきあいから書にも興味をもったということは前回、書いたが、仏殿の移築も関係しているのだろうか。

また、三渓がパトロンとなって、財政的に支援した、前田青邨のお墓と筆塚が東慶寺の墓苑にもあるが、これも、三渓と宗源との縁に由来するのかもしれない。

そして、不思議な縁が、まだある。三渓同様、著名な美術品蒐集家であり、美術家のパトロンともなった、出光興産創業者の出光佐三のお墓もあるのだ。加えて、安宅産業の創始者、安宅弥吉のお墓もある。彼自身はコレクターではないが、彼が稼いだ資金で、息子の安宅英一が、無類の美術品コレクターとなり、東洋陶磁器や、現在は山種美術館に買い取られた105点もの速水御舟の作品を所蔵していた。いわゆる安宅コレクションである。

安宅と出光のお墓の間に、鈴木大拙のお墓がある。安宅は大拙と同郷で、学生時代、おれが実業家で成功したら、おまえに援助するからと約束し、実際、東慶寺内の、大拙の松ヶ岡文庫に巨額の財政的援助をしたのだ。しかし安宅産業が破綻し、そのあとを継いであげたのが、出光だった。そうゆうわけで、3人のお墓が並んでいるのだ。

三渓と東慶寺の関係から、話がそれてしまったが、むかしの実業家は、偉い人が多かったと思う。今の実業家は、サラリーマン社長が多いせいもあるが、カネ、カネ、カネと、紙くずばかりに、目がくらんで、若い芸術家や学者を育てようとしたり、美術品を蒐集し、後世に残そうなんていう人は、ほとんど見当たらないように思う。社内の”埋蔵金”ばかり増やすことだけを考えているようでは、日本文化の先が思いやられる。

前田青邨の筆塚

出光佐三のお墓

安宅弥吉のお墓

鈴木大拙のお墓


そうそう、三渓園と東慶寺の共通点はまだありました。梅と紅葉がきれいなことです。

東慶寺の紅葉

三渓園の紅葉

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原三渓 旧蔵品展

2009-12-09 09:19:20 | Weblog


先月末、横浜根岸の三渓園に紅葉見物に行ったときに、園内の三渓記念館で”原三渓 旧蔵品展”をやっていた。そのことを、まだ記事にしていなかったことを思い出し、今、書いている。

三渓園所蔵のものは少なく、ほとんどが、東博、奈良博、山種とかの美術館のほか、個人蔵のものである。いってみれば、久しぶりに”三渓学園同窓会”に集合したようなものである。それにしても、仏教絵画、中国絵画、近世絵画、近代絵画等、非常にはば広い蒐集には驚いてしまう。

横浜で、当時の輸出の花形、生糸、絹織物等で大儲けをし、その有り余る資金で、すぐれた美術品を蒐集した。ポスター絵に採用されている、孔雀明王像は、当時としては破格の一万円の値段で井上馨から買い上げたという。これは、国宝になり、東博所蔵である。そうゆう、国宝や重文の作品がいくつも展示されていた。

孔雀明王像を筆頭に、愛染明王像、地獄草紙も、ぼくのような素人目でも、一級品にみえた。書蹟では、古今和歌集の大五(高野切)という国宝も目にすることができた。円覚寺の朝比奈宗源管長とも親交を結び、それがきっかけで書蹟にも興味を抱いたということだ。

近世絵画では、酒井法一の秋草の絵や、永徳、応挙、宗達、光琳など錚々たる画家の作品のほか、宮本武蔵の蓮池翡翠図や、原三渓自身の珍しい紙本墨絵を観賞することができた。

伝雪舟の、”四季山水図”(重文;京博所蔵)も展示されていたが、これは、一時、雪舟真筆に疑問をもたれ、ひどく落胆したらしい。でもこの絵をとても愛し、病床で、家人にこの絵を拡げてもらい、あの世に旅立ったということだ。

また、彼の偉いところは、パトロンとなり、若い芸術家を育てたことである。小林古径、前田青邨らもお世話になっている。青邨の作品、”遊魚”(三渓園所蔵)が展示されていた。先日、お亡くなりになった平山郁夫は青邨に師事していた。間接的にではあるが、平山郁夫も三渓さんのおかげで大成したのだ。サンケイ・ベリーマッチと青邨さんも古径さんも平山さんも天国で三渓さんに御礼を言っていることだろう。

三渓さんは、横浜の野毛からここに移った。そのときの家が、この地にそのまま残っている。


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