
”昭和の光悦”だという、”東の魯山人、西の半泥子”ともきいたことがある。要するに、マルチタレント芸術家ということだな、と、銀座松屋に出かけた。彼の作品をみるのははじめてである。
会場に入ると、ぼくも好きな、雄雌の(ど、どこをみてるのだ;汗)黒い狛犬が迎えてくれた。こんなものまでつくっている、それにどことなくユーモアを感じさせる。この”初対面”で、すっかり半泥子さんと気が合ってしまった(笑)。
マルチタレントといっても、陶芸が主で、いいものがいっぱい並んでいた。もともと古志野、古唐津、李朝初期、古染付、楽焼き等が好きで、また乾山好みでもあった。でも、自分がつくるときには、それらを真似するようなことはなく、これら古陶の印象だけを頭にちょっこと入れて、あとは、ただもう気が向くまま、指の動くまま、つくったという。それがはからずも、”破格”と評される半泥子流の、茶碗になったり、水指になったり、食器になったりするのだ。



右側の、粉引茶碗 銘たつた川、なんかも気に入った。桜は吉野、紅葉というとよく”竜田川”が出てくる。一度、是非行ってみたいものだ。左の水指も形も色もなかなか面白い。

書も気ままな自由な風情だった。それに、ふつうなら、よく知られている漢詩とか和歌、あるいは箴言などを題材にするところだが、”福は内”とかHow are you?を”波和遊”にして書くなど遊び心にあふれている。絵も、格好をつけない”画風”で、ろくろを回している自画像なんか、楽しそうに”仕事”(遊んでる?)している様子が戯画風に描かれていて、つい微笑んでしまった。

三重県津の素封家に生まれ、自身は何とか銀行の頭取までして、50代から自邸のある千歳山に登り窯をつくり、こうゆう趣味生活に入った。もともと、作品を売るつもりはないし、どう評価されようが、気にすることもないので、のびのびと、気がむくまま、陶芸作品を次々つくりだしていった。そして、合間に、書画や、(若いときには)写真も、そうそう俳句までつくっていましたよ。
秋風の吹くろくろの廻るまま
蓑虫に金箔つけて遊ぶ哉
いいなあ、こんな人生おくれる人は。
。。。
これから遊びに行ってきます。
寒風の吹くみあしのうごくまま(瀧汗)