横浜のそごう美術館で、はじまった日本画の革新者たち展に初日に行ってきた。午後1時に入場したら、ちょうど、福井県で”出前授業”で活躍されている牧井さんの”落葉”鑑賞ガイドがはじまるところだった。子供向けの授業(ここでは、生徒はみな大人)なのだが、これがとてもわかりやすくて、面白くて、ああ、そうだったのかと、合点がいくことばかりだった。みえないものをみる、なんてふかいことばもあった。
春草の六曲一双の屏風の名作、”落葉”は、福井県立美術館の至宝で、今回も”特別出品”という別格で展示されている。牧井さんの講義では複製の屏風が使われていたが、本物は展示室の中程にでんと置かれている。いつか、竹橋であった”春草展”にも出展されていたものだ。春草は落葉シリーズのいくつかを36歳で亡くなる晩年に描いている。福井本は、それと双璧をなす永青文庫本の後に描かれていて、より、淡い色彩になっている。春草は眼を患い、次第に風景もみえにくくなっているという事実もあるが、寂寥感がより溢れていて、きっと春草自身の心象風景であろう。何度、見てもいい絵だ。
落葉(春草)
そごう美術館は、この展覧会を第一弾として、今後、日本各地の美術館の所蔵品展を展開するとのこと。これは、ぼくにとってもとてもうれしいこと。旅先でみる美術館の所蔵品の素晴らしさに驚くことが多い。トップランナーに選ばれた福井県は、横浜と関連が深い。岡倉天心の父親は福井藩士で、藩の特産品の絹を扱う貿易商石川屋を横浜で営んでいた。天心はここで生まれている。
午後二時から、福井県立美術館の学芸員の方のギャラリートークがあるというので、それも聞いた。この方も話の上手な方で、つい最後までついていってしまった。結局、トータル2時間、ここで過ごすことになった(汗)。今回、うちの主要な作品はすべて、ここに来ていますので、今、福井へ行っても見るべきものは何もありませんと、取り囲む、たくさんの聴衆を笑わせる。彼女の話を思い出しながら、以下の作品を紹介してみよう。
天心ゆかりの画家たちの作品が並ぶ。はじめに狩野芳崖の伏龍羅漢図。この作品はフェノロサの私蔵だったが、1920年に里帰りした。しかし、その後、行方不明となり、1994年、所在が判明し、福井県美に寄贈されたものだそうだ。
芳崖に師事した岡不崩。晩年は本草学の研究に専念し、名著、”万葉集草木考”を著わしている。見事な菊花図。
そして、天心の四大弟子といってもよい、大観、春草、観山、武山の屏風がそろって展示されている。豪華なラインアップ。
大観の春秋図 1909年(明治42年)の作で、落葉と同じ年に描かれた。右隻が枝垂れ桜(はじめ柳かと思ったほど淡彩)で、左隻が紅葉とつがいのオオルリ。
観山の寿星 寿星とは寿命を司る南極老人星のことで、寿老人がその化身といわれる。七福神の一人である。名作、”弱法師”も同時期に描かれ、同様に、広く、空間をとっている。1915(大正4)年作。
武山の日盛り(花鳥図) 1917(大正6)年作。右隻に白の立葵と凌霄花。左隻にクリーム色の葵。琳派への傾倒が伺われる。
素晴らしい屏風群だった。
さて、一旦、休憩します(笑)。岩佐又兵衛もいっぱい、それらは後半に登場します。
(つづく)