そごう美術館の”日本画の革新者たち展”は福井県立美術館所蔵のものだけによるもの。春草の”落葉”はじめとする岡倉天心ゆかりの画家たちの作品の数々にびっくりしたが、ある意味、もっと、びっくりしたのが、岩佐又兵衛の作品群。えっ!何故と思ったが、そうだ、福井にゆかりの絵師だったけ、と思い出した。信長に謀反を起こした摂津、荒木村重の嫡男で、家族皆殺しにされたが、赤ちゃんだった又兵衛は生き延びて、長じて、絵師となった。1616(元和二)年、越前、北の庄(現福井市)に移り、何と20年間、そこを拠点にして画業活動をしていたのだ。
熱海のMOA美術館のような重厚な絵巻物類はないが、小品ながら、山椒は小粒でもぴりりと辛い、というような作品をたくさんみることができた。以下に、それらについて、図録からの写真で紹介したい。
龐(ホウ)居士図(重要美術品) もともとは六曲一双の押絵貼屏風であったが、明治末期に十二図が軸装され、分散した。名高い金谷屏風の一図である。出光美術館の源氏物語野々宮図、山種美術館の官女観菊図(いずれも重要文化財)もその一つである。
そして、三十六歌仙図(重要美術品) 又兵衛が好む画題で多くの作例が残る。もとは画帖であったが、現在は軸装で二十二図が残る。又兵衛の特徴、ふっくらとした頬と長い顎の特長的な顔が描かれている。
三条院女蔵人左近
紀友則
在原業平
小野小町
中納言敦忠
中務
そして、和漢故事説話図。旧岡山藩主池田家に伝来したもの。和漢の物語や故事などを題材に、十二図からなる。もとは一巻の巻物であったが、現在は一図づつ軸装されている。
海辺に立つ貴人
須磨
近藤師経と寺僧の乱闘
晋武帝象車遊宴
安宅
額打論
怪異出現
浮舟
このほか、横浜の原三溪に支援を受けた、安田靫彦、前田青邨、小林古径、速水御舟らの近代日本画、また横山操、加山又造、米谷清和らの現代日本画も展示されている。
加山又造の駱駝
米谷清和の夏 福井市生まれ。現在、三鷹市美術ギャラリーで個展が開催されている。
又兵衛から明治、大正、昭和、平成と日本画の変遷が辿れる、とても面白い展覧会だった。