こんばんわ。
東博で開催されている”やまと絵展/受け継がれる王朝の美”の感想文というか記録も、今日で3回目となる。初回は、四大国宝絵巻勢揃い、二回目は本展の序章と第1章についてであった。残りがあと4章もある。このまま前回方式で進めてゆくと、いつになっても終わらず、他の美術展の感想文に移れないので、今日で一気に完結させることにした(笑)。たらたら各章別に展示作品を紹介するのを止め(笑)、思い出の作品(?)を中心に記載することとした。
ぼくの、この展覧会の目玉は、何と言っても四大国宝絵巻を揃ってみることだった。これだけで十分、満足したのだが、2章以下の鎌倉時代の絵巻にもすごいのがいくつもある。たとえば、国宝・一遍聖絵。2015年に全12巻の展示が遊行寺宝物館で始まり、その後、4巻づつ、遊行寺、神奈川歴博、金沢文庫そして、連携企画の東博で第七巻展示と全巻展示された。ぼくは、地の利を生かし、完全制覇した。”国宝中の国宝”という宣伝文句だった。風景画としても人物画としても素晴らしい絵巻であった。全国行脚する一遍上人の生涯物語も面白い。本展では、全巻というわけにはいかず、巻九、巻十が展示されている。
国宝・一遍聖絵(巻十)
ほかの国宝絵巻では、春日権現験記絵巻(高階隆兼筆、三の丸尚蔵館)、随身庭騎絵巻(大倉集古館)、平治物語絵巻 六波羅行幸巻(東博)もぼくも何度か見ている、印象に残る作品。
国宝・春日権現験記絵巻(高階隆兼筆、三の丸尚蔵館)藤原氏一門の西園寺公衡が、一門のこれまでの繁栄に感謝し、またさらなる繁栄を祈願して制作を企てたという。ここではニ、九巻が展示されているが、ぼくは巻19の”雪の御笠山と春日奥山”が好き。世界初の雪景色の絵画だそうだ。明日(11月3日)、新装なった三の丸尚蔵館のオープン記念展でこれが展示される。どうぞ、この場面を開けて下さい(笑)。
国宝・随身庭騎絵巻(大倉集古館)随身とは貴族が外出する際に警護にあたる官人のこと。騎馬が巧みで、身体が頑丈だけではなく、かつ、容貌もよく、教養もある人が選ばれるとのこと。この絵巻には9名の随身とそれぞれの馬が描かれ、彼らの名前も書き込まれている。大倉集古館で見ているが、そのときのちらしから。紙本淡彩である。
国宝・平治物語絵巻 六波羅行幸巻(東博)2012年に平治物語絵巻の三巻同時期展示があり、三巻制覇の思い出がある(笑)。あとの二つは”信西巻”(静嘉堂文庫美術館)と「三条殿夜討の巻」(ボストン美術館)。”信西巻”は本展に来ているので、今回は”二巻制覇”となる。
さて、佐竹本三十六歌仙絵の展示もうれしい。2019年に京博で”佐竹本三十六歌仙絵展”が開催されたが、歌仙さま、37人中(住吉大明神を含め)、31人が出席という大盛会となった。もとは三十六歌仙絵の絵巻物だったが、大正8年(1919年)に売りに出された。余りに高額のため、三井の益田孝(鈍翁)の提案で一歌人ごとに分割して、それら断簡を数寄者がそれぞれ購入することになった。19年の大同窓会に比べるとさびしいが、今回は 住吉大明神 、小大君 、小野小町、藤原高光、壬生忠峯、大中臣頼基、源信明の7名が出席された。
それぞれの断簡は掛け軸に仕立てられ、茶席などに利用された。所有者は、競って、趣向を凝らした表具を施し、美術品としての価値をさらに高めた。
佐竹本三十六歌仙絵 小大君
ほかにも、ぼくの好きな国宝・明恵上人像(京都・高山寺)や国宝・那智瀧図(根津美術館)もI期ではないが展示される。
おわりに、公式サイトから第2章以下の紹介を載せておこう。
第2章 やまと絵の新様 /鎌倉時代
鎌倉時代になっても、やまと絵を担っていたのは宮廷貴族社会でした。写実性に関心を払いながらも人物や風景の理想化が志向され、王朝時代を追慕する美術やさまざまな主題の絵巻が数多く作られました。これら新しいやまと絵の動向をご紹介します。
第3章 やまと絵の成熟 /南北朝・室町時代
南北朝・室町時代には、水墨画に対抗するかのように多彩な色目と金銀加飾による華やかで眩い画面がやまと絵で志向されます。和漢の美が融合し、新たな文芸に触発された美術が花開いた成熟期のやまと絵の様相を探ります。
第4 章 宮廷絵所の系譜
南北朝・室町時代には、水墨画に対抗するかのように多彩な色目と金銀加飾による華やかで眩い画面がやまと絵で志向されます。和漢の美が融合し、新たな文芸に触発された美術が花開いた成熟期のやまと絵の様相を探ります。
終章 やまと絵と四季 /受け継がれる王朝の美
およそ千年にもわたって描き継がれてきたやまと絵において、四季の景物を描くことは主要なテーマの一つでした。過去の伝統を踏まえながらも新たな表現を獲得してきたやまと絵の真髄を、四季絵の要素を踏まえた作例を中心にご覧いただきます。
日月山水図屛風 室町時代 16世紀 (東博)
素晴らしい展覧会でした。(完)
では、おやすみなさい。
いい夢を。