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【cinema】『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(試写会)

2012-02-21 02:01:56 | cinema
'12.02.10 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(試写会)@よみうりホール

rose_chocolatさんのお誘い。自分でも応募したけどハズレ 見たかったのでうれしい♪ ありがとうございました!

*ネタバレありです!

「9.11で父親を亡くしたオスカー。ある日、父のクローゼットから古い鍵を見つける。鍵が入っていた封筒には"Black"の文字。鍵にはきっとピッタリの鍵穴があるはず! オスカーはNew York中のBlackさんの中から、鍵穴を知る人物を探し始める・・・」という話。これは良かった。ジョナサン・サフラン・フォアの同名小説の映画化。原作は未読。どのくらい原作に忠実なのか不明だけど。とにかくオスカーが健気で泣けた。

実は、この作品の脚本家エリック・ロスとは何となく合わないものを感じていた。といっても見たのは『フォレスト・ガンプ』と『ベンジャミン・バトン』だけなので、一概には言えないのだけど、障害を持つ主人公が明るく健気に生きる姿や、彼らを温かく見守る人々を、おとぎ話的に描きつつ、反戦などの社会的メッセージを絡めてくる感じが、なんとなくあざとく感じてしまって・・・ 嫌な感じの人は出てきても、基本的にはいい人しか出てこないキレイなまとまり方も・・・ うーん。ごめんなさい 悪い人に出てきて欲しいわけじゃないし、おとぎ話的語り口も嫌いじゃない。軽いタッチで社会的メッセージや重いテーマを語る作品も好き。でも、何となく優等生っぽいというか・・・ 上手いし、見ている間は楽しいし、感動もしている。決して嫌いなわけじゃない。2時間超の作品も飽きることなく見れる。でも、あまり心に残らない・・・ とにかく、何となく合わないとしか言いようが無く、本当にこれはあくまで個人的な好みの問題。なので、決して前述の2作品がダメなわけでも、彼の脚本がダメと言っているわけでもありません! で、つらつら何が言いたいかといえば、今作はとても良かったということ。

今作の主人公オスカーは、頭は良いけど、人とコミュニケーションを取るのが苦手。アスペルガー症候群の検査を受けたことがあり、不確定と診断されたとのこと。アスペルガー症候群については、『モーツァルトとクジラ』『親愛なるきみへ』でも少し触れたと思うけど、「知的障害のない自閉症」と言われることが多い。主にコミュニケーションに問題があるが、知能が高く、ある分野に突出した才能を発揮する場合もあるらしい。でも、医学的には未整理である部分が多いのだそう。とっても難しいので詳しくはWikipediaで!(笑) オスカーは不確定。不確定とはその可能性があるのか、ないのか・・・ ただ、彼が人とコミュニケーションを取るのが苦手であることは、生前の父親がとても心配していて、New Yorkにかつて存在した第6区探しゲームをさせることにより、人とコミュニケーションと取るようにさせていたことから、事故によるトラウマだけではないことが分る。この探検ごっこがとてもよく考えられていて、少年が夢中になるのがよく分る。見ている側も本当に第6区が存在したんじゃないかと思ってしまう(笑)

このエピソードについては、オスカーがクローゼットで鍵を見つけた時、父の残した新たな謎だと思い込む伏線になっているし、彼がBlackさんを探す行為を冒険としてとらえていることに説得力がある。彼はこの冒険を楽しみたいと思っているわけではないけど、自分に与えられたタスクだと思っているのではないだろうか・・・ もちろん、やり遂げても父親が戻って来ないことは分っていると思うけれど。彼がアスペルガー症候群であるかどうかは別として、感受性が強過ぎるのは確か。感受性が強いと美しいものをたくさん見ることが出来るけれど、反面見たくないものも見てしまう。大人になって自分の感情を上手く出せるようになると、少し楽になるけど、自分の中に湧き上がった感情や思考が、自分でもコントロールできない子供の頃は、実は結構辛い 自分の中では思っていることがたくさんあって、ちゃんと全部分っているのに、言葉を知らないから、自分の思いを上手く伝えられず誤解されてしまう・・・ まぁ、子供の頃は誰でもそういう部分はあると思うのだけど、またちょっと違う。自分を例に取るとなんだかいやらしいけれど、実はblogを書くようになってすごく楽しくて、人ともコミュニケーションが取りやすくなったような気がする。と、書くと大げさで、何だか作家気取りみたいだけど、こんな拙いblogでも自分の思ったことを書くというのは、感じたことを整理できるし、それがどうすれば人に伝わるか一生懸命考えることは、実生活でコミュニケーションを取ることに役立っている気もする。って、自分のことはいいですね・・・(o´ェ`o)ゞ

オスカーはBlackさんを探す計画に夢中になる。子供の頃って基地を作ってみたり、自分ルールを作ったりするの好きだけど、オスカーはそれがハンパない! 徹夜でNew York中のBlackさんをピックアップ。地区ごとに分類。地図に印をつけて、1日で何件周るかペース配分を考える。正確な数は忘れちゃったけど450件近くあったんじゃないかな・・・ 1人1人カードにして分類したりして楽しい! こういう細かい作業好き 途中でキーッてなっちゃったりするけど(笑) とにかく、オスカーのこの準備作業がポップでかわいい! いくらオスカーが頭が良くても、クォリティー高過ぎでしょと思うけど、見ていて楽しいのでOK。納戸の秘密の部屋も好きだった。こういう感覚分る。自分で考えてしっかり荷造りして、リュック背負って出掛ける姿が、甥っ子1号(7歳)に重なっちゃって・・・ そう・・・ 書こうか迷ったんだけど、オスカーと甥っ子1号は似てる。もちろん甥っ子1号はアスペルガー症候群ではないけれど、やっぱり感受性が強過ぎるタイプで、自分の感情を持て余すところがある。オスカーのようにタンバリンで心を落ち着けなければならないというようなことはないけど、自分の思いが上手く伝えられないから「僕なんか・・・」ってなっている姿が見ていて辛い でも、自分で乗り越えないとね・・・ 最近あまりしないけど、こういう分類とか好きでよくしてた。何十冊も本を出版したり(笑) 自分のベッドを秘密基地にしたり。記憶力がすごくて1度見ただけで、完璧にお墓描いたりしてた。もちろんクォリティーは高くないけど・・・ また話がそれた(笑)

オスカーは初めての訪問で、ある黒人女性と出会う。彼女は精一杯優しく対応してくれるけど、今まさに夫が家を出て行こうとしている。彼女と夫は後に重要な役割を担い、オスカーも彼らに重要な影響を与える。こういうことがコミュニケーションの醍醐味なのでしょう。オスカーのBlackさん訪問の旅は、時々失敗もあるけど概ね好意をもって迎えられる。実は密かにあるミッションが進行していて、感動エピソードではあるのだけど、いつの間にっていう気がしないでもない(笑) ネタばらしは後ほど行われるので、この時点では見ている側も何も知らない。オスカーは「9.11で父親を亡くして・・・」と自己紹介するので、こんな言い方はどうかと思うけれど、ある種のキーワード的な感じなのかもしれない。当時、直接テロの被害に合っていなくても、アメリカ国民が悲しみを分かちあっていたのだと思う。だから、オスカーがそう自己紹介するたび、ハグしてくれる彼らの姿に説得力がある。

9.11については、ワールド・トレード・センターに偶然居合わせてしまった父からの留守番電話と、自分のオフィス・ビルの窓から夫の居るWTCを見守ることしか出来ない母の姿、そしてテレビのニュース映像で見せる。これは9.11そのものを描くのではなく、偶然そこに居合わせてしまったために、被害者となった家族の話。死を覚悟した父親が一番辛かったとは思うけれど、大切な人がそこに居ると分っているのに、何もできずにいた家族も辛い・・・ 何もできなかったのは仕方のないこと、でも自分を責めてしまうのだろうな・・・ 父親からの留守番電話は6回。6回目を聞いたのはオスカーだけ。これは辛かった・・・ 彼には勇気が足りなかったかもしれない。でも、誰も彼を責められない。あの日、こんな思いをした子供達は他にもたくさんいたかもしれない。テロ実行犯も、指示した人物も、犠牲者や彼らの家族の顔も知らない。やり切れない・・・ 9.11のこと自体の善悪は声高に語ってはいない。だから余計に響いてくる。この描き方は良かったと思う。

で、もう一人重要な人物が登場する。オスカーの向かいのマンションに住む祖母の家の間借人。彼は過去のある出来事により失語症になってしまった老人。偏屈だから気をつけてと言われて怖がるオスカー。オスカーと祖母との距離感も良かった。オスカーのベッドから祖母のベッドが見える。電話で話したり、光で合図したりカワイイ。どうしても祖母が起きてくれなかった夜、間借人から光のコンタクト。間借人を訪ねて筆談。間借人は一緒に鍵穴を探そうと言ってくる。この時点で見ている側には間借人が誰なのか分る。2人の感じがまた・・・ 自分の父親は口ベタで感情表現の下手な人だった。決して怖い人でも癇癪持ちでもなかったので、上手く愛情表現出来ず威張ってしまう日本オヤジではなかったけれど。愛情表現はとんでもなく下手だった。間借人とオスカーの姿が、甥っ子1号と自分の父親に重なる。時にコミカルに描かれる感受性豊か過ぎるオスカーのルールや、感情表現に戸惑う間借人。おかしくもあり切ない。オスカーもすぐに間借人の正体に気づく。その気づき方もいい。オスカーはある日、留守番電話の6回目を間借人に聞かせようとする。一緒に受け止めて欲しかったから・・・ でも、間借人には受け止めきれない。ここの2人の演技は素晴らしい!

オスカー最大の傷。6回目の留守番電話は意外な人物が受け止めることになる。これも良かったと思う。同じ痛みを抱えている家族だと、お互い辛過ぎて受止めきれないかもしれない。でも、第三者ならば受け止められるし、それが自身の癒しとなることもある。この辺りちょっとおとぎ話的ではあるけれど、オスカーの鍵は、持ち主の鍵を開けたし、オスカー自身の鍵も開けた。そして、彼自身を受け止めてくれる存在に気づく。心を開けばコミュニケーションを取ることはそんなに難しいことじゃない。

キャストが豪華。父親にトム・ハンクス。実はエリック・ロスとほぼ同じ理由でちょっと苦手。上手いので感動するけど、ちょっと優等生っぽい感じで・・・ この映画もトム・ハンクスがもっと前面に出てたら、個人的に印象違ったかも。ごめんなさい あくまで個人的な好みです! でも、この映画の登場の割合はすごく良かった。少ない出番ながらも、しっかり印象を残す。父親がちゃんと自分を見てくれている、愛してくれていることがオスカーに伝わってる感じ。やっぱり上手い!(←フォローじゃなく本心) 母親のサンドラ・ブロックも良かった。自身も傷を抱えていること、夫とオスカーとの結びつきなど、彼女自身がオスカーに接することに臆病になっている感じが伝わってきた。前半ちょっとかわいそうだけど、後半感動エピソードが! ちょっと盛り過ぎな気もするけど、サンドラなら出来る気がする(笑) ジェフリー・ライトも良かった。彼になら話せちゃう気持ち分る。間借人のマックス・フォン・シドーが素晴らしい! 失語症の役なので一言も話さない。なのにちゃんと感情が伝わってくる。愛情表現が下手過ぎて、かわいくてしかたがないのに表現できない・・・ 大げさな表情をするわけではなく、むしろ無表情なのに全部伝わる。イヤ、もう画面に居るだけでスゴイ存在感はさすが! 素晴らしい!

でも、この映画は何と言ってもオスカーのトーマス・ホーンくん! 実はクイズ番組に出演していたところをプロデューサーに発見されたそうで、何と演技は初めて。初めてでこの演技はスゴイ! 繊細で、頭の回転が早く、感受性が豊か過ぎる彼の、心の支えであり、感情を上手く吐き出させてくれた父親を失った悲しみ。その悲しみすら、ある事のために出すことができない。その辛さゆえバランスを崩したり、自傷行為をしてしまったり・・・ ちょっと背中を押したら崩れちゃいそうな危うさ。でも、鍵に思いを託して進む姿。リュック背負って、タンバリンを持って間借人と歩く後ろ姿がいい。感情のコントロールが出来ないから、時々キレてしまって厄介といえばそうだけど、それすら彼の感受性の豊かさゆえと思えてしまう。よく彼を見つけてくれました! プロデューサーGJ 子役出身はなかなか難しいと思うけど、彼にはこのままいい役者になって欲しい。

オスカーの部屋のデザインが好き。彼が好きなものを集めた感じ。訪ねたBlackさんの写真などをコラージュするスクラップ・ブックもカワイイ! ポップなオスカーに黒ずくめの間借人という画もいい。怖がって乗れなかったブランコを思い切り漕ぐオスカー。このラストいい。彼は冒険をして勇気を手に入れた。

そう、これちょっとロールプレイング・ゲームっぽいかも・・・ だから、おとぎ話的な感じやポップな感じがすごく合う。『リトル・ダンサー』のスティーブン・ダルトリー監督だけに少年を描くの上手い! 英語タイトルそのまま日本語にした邦題も(・∀・)イイ!!

3.11で傷ついた日本。勇気をもらえる映画! オススメ!

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』Official site


コメント (2)
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