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【cinema】『ヘルプ ~心がつなぐストーリー』

2012-05-12 03:02:27 | cinema
'12.04.29 『ヘルプ ~心がつなぐストーリー』@ヒューマントラストシネマ渋谷

『アーティスト』を見に行った時、tomocoさんと見たいねって話してて、GWに行ってきた。書くの遅くなったから、多分上映終わっちゃったね・・・

ネタバレありです!

「1960年代、作家志望のスキーターは大学を卒業し、故郷のミシシッピ州ジャクソンへ帰ってくる。南部の白人家庭では黒人メイドが家事や子守をしていた。スキーターもそんな家庭で育ったが、ヒドイ扱いを受けるメイド達の存在を知り、彼女達に取材し本を出版しようと考える・・・」という話。これはなかなか良かった。感動って感じではなかったけど、泣いてしまった。ディズニー配給なので、ちょっとおとぎ的な部分や、若干キレイにまとめ過ぎな気もしたけど、重いテーマを時にコミカルに見せていて、重くなり過ぎずに見ることが出来た。ちなみにヘルプとは黒人メイド達のことだけど、おそらくダブルミーニング。

キャスリン・ストケットによる同名小説を、ジャクソン出身で彼女の幼馴染であるテイト・テイラー監督が映画化。実はこの原作小説、60社以上から出版を断られたそうで、監督は出版支援も行っている。断られた理由は不明だけど、その後ベストセラーになったことを考えると、小説の出来というよりはそのテーマか?などと勘ぐってしまう。まぁ、単純に=黒人差別だからということではなく、売れないと判断しただけかもしれないけれど、それにしても60社がミス・ジャッジ?と考えてしまうほど、人種差別問題は根深い。黒人大統領が誕生し、様々な人種が世界各地の都市で暮らす時代になっても、差別が完全になくなったわけじゃない。もちろん、それは単に人種差別だけじゃない。

と、いきなり重いところから入っちゃったけど・・・(笑) この映画でも大きなテーマにまぎれて、様々な差別が盛り込まれている。その辺りも上手いと思った。まず、主人公のスキーターは大学を卒業したのに、新聞社では最初全く相手にされない。何とか粘って得た仕事は、病欠中の人の代わりに家事のコラムを書くこと。まぁ、この辺りは新聞社の雇用状況にもよると思うので、一概に女性差別だとは言いにくいし、母親をはじめ地元の友達が女性は結婚するものと決めつけている状況も、時代的なことを考えると仕方がないかとも思うけれど、21世紀になってもこの風潮が完全になくなったわけではないことを考えると、複雑ではある。ただ、スキーターが進歩的で自立心の強い女性であり、それがジャクソンという南部の町では異端であったからこそ、彼女は本を出版しようと思ったわけだし、エイブリー達も心を開いたのだと思う。

スキーターがヘルプ問題に強い関心を持ったのは、自分を育ててくれたコンスタンティンとの美しい思い出があったから。スキーターにとって彼女は母のような存在だった。帰宅してみたら彼女はいなくなっており、代わりのヘルプがいた。コンスタンティンはどうしたのか尋ねても誰もハッキリ答えてくれない。このヘルプの制度は母親の代に雇われ、その子供を世話をし、子供が成長し家庭を持つと、その子に雇われることもあるらしい。アカデミー助演女優賞を受賞したオクタビア・スペンサー演じるミニーもそうだった。コンスタンティンの行方と何故家を出ることになったかについては、後に母親から語られるけれど悲しい話。この母親は口うるさい人ではあるけれど、それには理由がある。もちろん元の性格もあるとは思うけれど。スキーターがコンスタンティンと良い関係が築けたのは、コンスタンティンがヘルプとして優秀なだけでなく、愛情深い良い人であったからだし、スキーターが素直な良い子だったから。でも、この母親が女主人としてコンスタンティンに好意的に接していたからだと思う。事実、あの日も老いたコンスタンティンがもたついてしまったことが、歯車を狂わせたわけだけど、裏を返せばもたつきがちな彼女をずっと雇ってくれていたとも言える。そういう事が後からきちんと分るのがいい。

もう一人の主人公はヘルプのエイビリーン。彼女はスキーターの同級生エリザベスの家で働いている。彼女は現在妊娠中で、まだオムツをしている娘がいるけど、どうやら娘に愛情を持てない様子。彼女は必死に南部の良き女主人になろうとしている感じ。子供に愛情を持てないけれど、かわいがっているフリをしているし・・・ それはズル賢いのではなくて、生きるすべだから。人の目ばかり気にしている。悪い人じゃないけど自分がない。エイビリーンのことも嫌いではないと思う。トイレを使うこともイヤではなかった。でも、グループのリーダーであるヒリーに言われると逆らえない。だから、ダンナさんにも反対されるのに黒人用トイレを作ってしまう。こういう閉鎖的な社会で、いわゆるママ友みたいなグループで上手くやっていくには、彼女みたいに流されて我慢している人もたくさんいると思うけれど、このタイプが一番厄介なのかも・・・ 差別やイジメを実際に横行させちゃっているのは多分こういう人達。彼女が最後に勇気を出してくれればと、願いながら見ていたけれど、残念ながら最後まで変わらなかった。まぁ、映画としてはそれもまたよしかもしれない・・・

話がそれてしまったけれど、エイビリーンは心に悲しみを抱えた強い女性。そして賢い。記事を書くために家事を教えてもらおうと、エイビリーンに取材したスキーターは、彼女の聡明さと強い意志、そして正義感に惹かれて本の取材を申し込む。最初は、報復を恐れて断るエイビリーン。神父の言葉に感銘を受け、取材に応じる決心をする。熱が入り彼女の家で夜を明かすこともあるスキーター。2人の間に友情が芽生える。元々スキーターに黒人に対する偏見はない。エイビリーンが沈黙を破ったのは、息子の言葉に従ったからでもある。聡明な息子には夢があったけれど、不慮の事故で瀕死の重傷を負ってしまう。でも、彼の雇い主は黒人病院の前に彼を置き去りにした。発見された時には既に手遅れだった。雇い主には使用人を守る責任があるのではないか? 黒人だからというだけで、息子は死ななければならなかった。そんな彼が、この家から作家が出るよと言っていた。もちろん自分の夢だったけれど、果たせなかった。自分が語ったことが本になるのであれば・・・ これはラストシーンにもリンクしている。

ヘルプのミニーは夫のDVに耐えながら、子供達を育てる肝っ玉母さん。スキーターの同級生ヒリーの母に雇われたが、今は娘のヒリーに雇われている。このヒリーが今作の悪役。演じるのはブライス・ダラス・ハワード。上手い。上手いだけに憎たらしい(笑) 後にとんでもない目に遭ったりして、コミカル要素にもなっているけど、こういう大物ぶったり、偉そうな態度をとることで、リーダーになる人っているけど、本当に厄介・・・ グループを形成するならリーダーはいたほうが楽だし、面倒だからなってくれるのはありがたいけど、リーダーだから自分の考えを通すのは当たり前と考えられては困る。黒人用トイレを作ることが正しいとは思わないけど、正しいと思うなら自分だけ作ればいいのでは? 病気がうつるからと、トイレを分けることにこだわっているけど、だったら何で料理は食べられるんだろう? 料理しないから分らないのかな? 大好きなチョコパイの生地は手でこねて作るのだけど? トイレとチョコパイは後の伏線(笑) まぁ、彼女としても実際は自分を守ることに必死だったわけで、自分が傷つけられたら倍にして返すことで、自分の地位を守ろうとしている。エイビリーンに「疲れませんか?」と言われて、泣き出しちゃったってことは、やっぱり疲れているんでしょう。ある意味かわいそうな人・・・ 同情はしないけど(笑)

ミニーは自分の尊厳を守るため、白人用トイレを使ったフリをしてヒリーの家をクビになる。報復のため得意のチョコパイを持参し、ヒリーをとんでもない目に遭わせる。これはちょっとやり過ぎ・・・ 自分が食べたら嫌だけど、ギリギリ立ち直れるくらいのものにしておいてくれないと、見ている側が辛い(´ω`;) ざまあみろと思いたかったけど、やり過ぎると思えなくなっちゃう。まぁ、思ったけど(笑) このことが原因で彼女はどの家からも雇われなくなってしまう。そして、ミニーもスキーターの取材に答えることになる。知的で理性的なエイビリーンと、直情的なミニーとの3人の会話が楽しい。ミニーはその後、ある人物に雇われることになる。この2人の関係がまたいい。ミニーの肝っ玉ぶりがいい。キレやすいところが欠点だけど憎めない。オクタビア・スペンサー助演女優賞は納得。ミニーのフライドチキン食べてみたい! チョコパイは中身が気になるから遠慮しとく(笑)

ミニーを救ったのはシーリア。他所から来た女性で労働者階級。アメリカは階級社会という印象は薄いけど、南部はそういう部分があったのかな? 彼女はいい人なんだけど無教養で、奔放な感じの女性。昔ならマリリン・モンローが演じるみたいな。多分、イメージしてると思う。ただ、彼女のそういう部分が差別の理由となっている。つまり、自分達のような品の良い白人社会には受け入れられませんわということ。本当の理由はヒリーの元カレと結婚したから。彼女に取られたと思っているヒリーの入れ知恵で、彼女は仲間はずれにされている。確かに教養もなく、セクシー過ぎて、空気を読めない彼女は、素直でいい人だけど、一緒にいると疲れるかも(笑) だからって、無視されたり、バカにした態度を取られるのは見ていて辛い。パーティーでの醜態は正直・・・ だったけど、後日ホームパーティーから締め出すのは本当にヒドイ。でも、こういうことフツーにありそうで怖い・・・ あまり身近で聞かないのは、自身が独身で母親じゃないから? 会社などでも良く聞く話だけど、何となくママ友という言葉が浮かんでしまう。シーリアはこの件だけじゃなくて、悲しい思いをしている。本当は強い人。人を見かけで判断してはいけない。頭が足りないように見えるのは、無邪気であるということだし、きちんと教育を受けていないから。彼女はミニーのおかげで立派な女主人になっていく。ヒリー宛の小切手に( ̄― ̄)ニヤリ

と、つらつら書いているとおり、これは女性の話。黒人差別を描いているけど、ヘルプという黒人メイドに焦点を当てているため、彼女達と多く関わる女主人達との関係を中心に、白人社会の問題点も描き出している。奴隷の延長としてのヘルプという制度は、今では存在しないけれど、やっぱりアフリカ系、アジア系などのマイノリティーに対して差別が完全になくなったわけではないと思うし、前述したとおり職場や学校、ママ友の間でも差別やイジメはなくなっていない。躍起になって黒人問題を訴え、シーリアを追い出そうとしているヒリーもさることながら、自分も含め多くの人がなりがちなエリザベスを見ていると、こういう人達が奮起しない限り、この状況は永遠になくならないのだろうと思った。1960年代といえば公民権運動。映画の中でも度々テレビ画面に登場するキング牧師が「悪意の人々よりも、善意の人々の沈黙に、より多くの絶望を感じる」と語ったそうだけど、まさにそうなのだと思う。悪意自体は、みんな悪意であることが分っているのだから、それを増殖したりしなければ問題はない。まぁ、なくは無いけど(笑) でも、それを悪意だと分っていながら沈黙してしまうのは、それを容認してしまっているのだということ。どんなことにでも「No」と言うのは勇気がいるし、リスクもある。でも、ハッキリ「No」と言えないまでも、何とか悪意に巻き込まれないようにできないものか・・・角が立たないように、黒人トイレを作らない方法もあったはず! 自分なりにしなやかに、差別する側にもされる側にもならないようにしたい。人間だから合う、合わないはあるので、嫌いな相手と無理に仲良く必要はないし、それは差別ではないと思う。と、そんなことを考えながら見ていた。

女優達の競演が見事! それぞれの人物紹介時にチラリと書いたけれど、ヒリーのブライス・ダラス・ハワードがあっぱれ(笑) 最近、性格の悪い役が多いけど、確かに似合う・・・ 切れ長の目で睨まれたら美人だけに怖い。そして演技が上手いから憎らしい(笑) コミカルな演技も良かった。チョコパイ食べる姿は笑える。そんなヒリーとそりが合わず(合う人いるのか?)イヤミを言い合う母親役はシシー・スペイセク! そういえば、ちょっと似てるかも。口は悪いけど娘より良識ある母親を少しコミカルに演じていて、さすがの存在感。スキーターの母役アリソン・ジャネイも良かった。彼女もヘルプに対して良識ある態度で接していた。それがあの日、裏目に出てコンスタンティンを追い出すはめになる。そのことをずっと後悔している。もう少し上手く立ち回れていれば・・・ 末期ガンであるため、娘の結婚を決めてしまおうと思っている。それは娘の将来を思ってのこと。でも娘の望む将来は別にあることに気づく。その2つの後悔がヒリーへの毅然とした態度と、娘を行かせる決心をするシーンに表れている。このシーンは良かった。

主役の2人も良かったのだけど、狂言回し的な役割もあったためか、他のキャラが濃すぎたためか、ちょっと食われた感じも・・・ スキーターのエマ・ストーンは真っ直ぐに育った良家のお嬢さんを好演。本来、彼女の考えや主張、そして生き方は間違っていないはずなのに、古い考えに凝り固まった人々からは異端視されてしまう。それでも毅然として、自分の信じた道を進む姿が魅力的。挫折したり失敗したりする姿も共感できる。それはエマ・ストーンの明るさのおかげ。息子を亡くし理不尽な思いをしてきたエイビリーンが、ヘルプの思いを語る決心をしてくれたから、ほんの少しジャクソンが変わるきっけができた。エイビリーンはヘルプという仕事に誇りを持っている。だから家事をきちんとこなすし、母親から愛されない子供に愛情をそそいでいる。彼女が「おじょうちゃんは、かわいい子」と語りかけるのは感動。ヴィオラ・デイビスのいつも感情を抑えている表情が印象的。最後にヒリーに「疲れませんか?」と語りかけるセリフが素晴らしかった。

今回印象的だったのは助演女優賞候補の2人。ミニーのオクタビア・スペンサーはちょっと演技が大きいかなと思う部分もあったけど、感情をあまり表に出さないエイビリーンとの対比になっているのでOK。彼女もまたヘルプという仕事に誇りをもっている。じゃなきゃあのヒリーとやっていけいないと思う(笑) ハッキリ物を言い、怒りっぽいけど憎めないのは、オクタビア・スペンサーのおかげ。くるくると変わる表情が印象的。お人形みたい(笑) そしてもう1人はシーリアのジェシカ・チャスティン。この映画でシーリアの存在にすごく救われた。空気を読めないキンキン声の彼女は、ちょっと疲れるけどかわいい人。まぁ、パーティーで泥酔してお粗相してしまうのは困るけど(笑) それでも魅力的だったのはジェシカ・チャスティンのおかげ。『ツリー・オブ・ライフ』のブラピ妻。別人! ミニーとシーリアのシーンは好きだった。彼女達の関係は、エイビリーンとスキーターと対になっているのだと思う。

1960年代の南部の豪華で古いスキーターの家や、エリザベスのミッドセンチュリーモダンな家も好き。ヒリー達の衣裳が素敵! ボリュームをつけてセットした髪とか、きちんとアイラインを引いた目元とか、バービー人形みたい。フラッパー・スカートのワンピがカワイイ

KKK(クー・クラックス・クラン)に襲われたというシーンはあるけど、暴力的なシーンはほとんど出てこない。本当はもっと理不尽な目にあったと思う。その辺りの描きこみが甘い気もするけれど、目をそむけたくなるようなシーンを見せられたから、伝わるというわけでもない。そしてこれは”女性”の話なので・・・ 女性の抱える悩みがきちんと描かれていたと思う。最初にも書いたけど、重いテーマを重くなり過ぎず見ることができた。

悩み挫けながらも明るく強く生きる女性達の映画が好きな方オススメ! 女優達の演技は必見!

『ヘルプ ~心がつなぐストーリー』Official site



コメント (2)
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