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【cinema】『ランナウェイ・ブルース』(試写会)

2014-03-12 01:07:42 | cinema
'14.02.24 『ランナウェイ・ブルーズ』(試写会)@シネマート六本木

cocoで当選! ちょっと重そうだなと思いつつ、エミール・ハーシュとスティーブン・ドーフが兄弟を演じるということで、楽しみに行って来たー

ネタバレありです!

「身寄りのないフランクと、障害者の兄ジェリー・リーは身を寄せ合うように生きていた。ある日、ジェリー・リーが事故を起こしたことにより、兄弟の運命は最悪の方向へと・・・」という話。あらすじ短いな(笑) まぁ、でもネタバレしないように書こうとしたら、これだけになってしまう。想像していたとおり、重いテーマだったけれど、淡々とした語り口で語られるので、ズッシリ重すぎてドンヨリしてしまうことはない。その辺りは狙って作っているのかなと思うけれど、ちょっと淡々とし過ぎていたような気も・・・ つまらなかったわけではないのだけど、寝不足が続いていたので、ちょっとウトウトしてしまう場面もあった(o´ェ`o)ゞ

2012年ローマ国際映画祭観客賞、最優秀脚本賞、最優秀編集賞、オンライン批評家賞を受賞。ウィリー・ヴラウティンの原作を、アラン・ポルスキー&ガブリエル・ポルスキー兄弟が映画化。ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『バッド・ルーテナント』のプロデューサーとして知られる2人は、これが監督デビュー作。脚本のノア・ハープスター&ミカ・フィッツァーマン ブルーも初長編デビューというフレッシュな顔ぶれ。作品の題材的にフレッシュ感のあるものではないけれど、主人公たちと一緒に悩んでいるような語り口だったかもしれない。マイク・スミスのアニメーションも重要な役割をしていて、その使い方がちょっとぎこちない感じなのも良かった。

冒頭、フランクが壁に貼られたイラストを眺めているところから始まる。カメラがイラストによるとアニメとなって動き始める。そこにフランクのナレーションが入ってくる。僕と兄さんは第二次世界大戦中パイロットだったと・・・ え?!そういう話しだっけ?と思っていると、内容はアニメ的なというか、現実的ではない感じになってくる。なるほど、これはフランクが創作した話なのだと分かる。その都度、内容は変わるけれど、時々唐突に差し込まれるこのアニメは、後に兄弟にとって大切なものであったことが分かる。それがちょっと切ない・・・

アニメに気をとられていると、安モーテルの一室で眠る男性の姿。夜中。部屋に帰ってくる男性。呼吸が荒い・・・ 寝ている男性を起こそうとしている。寝ていたのはフランク、帰ってきたのは兄のジェリー・リー。取り乱している様子。何があったのか尋ねるも、要領を得ない。手には血がついている・・・ 逃げようというジェリー・リー。どうやら、彼女とケンカしたジェリー・リーは大雪の中車を運転し、飛び出してきた少年を避けきれず、事故を起こしてしまったらしい。慌てて車を降り駆け寄るも、少年は既に亡くなっていた。病院の前に少年の遺体を置き、逃げて帰ってきたと告白する。だから、2人で逃げようと言うのだった。普通に考えたら自首を勧めるべきところだけど、何故か一緒に逃げてしまうフランク。この行動を不思議に思うのだけど、後にフランクがジェリー・リーを見捨てられない理由が分かり切なくなる・・・

2人の父親が亡くなったのか、離婚して出て行ってしまったのか忘れてしまったけれど、母親が病気になった時、父親は居なかった。余命宣告を受けた母親は、親戚の元に引き取られるであろう兄弟を憂い、何があっても2人離れずに一緒にいるようにと告げる。その、言いつけを守るように、2人は列車に飛び乗り逃げ出そうとする。先に列車に乗ったのはフランク、遅れた兄の手を離してしまったために、ジェリー・リーは片足を失うことになってしまった・・・ それ以来、フランクは兄の面倒を見てきた。14歳の頃から中古車ディーラーのアールの元で働いてきたフランク。2人はお互い負い目がある。お互いを愛しながらも、負い目がある2人の姿が切ない・・・

事故を起こした車で逃げる2人。途中の町でフランクに使いを頼み、そのまま走り去ってしまうジェリー・リー。1人雪原で車を燃やし、川辺のベンチで自殺を試みる。結局、勇気が出ず自分の脚を打ち抜いたジェリー・リーは病院に運ばれる。駆けつけるフランク。迷惑ばかりかけるジェリー・リーにもイライラするけれど、何とか2人で逃げようと画策するフランクの態度も解せない。幸せになれるとは思えない。でも、フランクは逃走資金を得るため、父親のウィンチェスター銃を友人の父親が経営する銃器店に持ち込む。自分の店では400ドルまでしか出せないが、この銃はもっともっと値打ちのあるものだと言われる。即金が欲しいため400ドルで売ってしまうフランク。そこへ、友人が声をかける。

今夜、マイク・タイソン対ジェームズ・ダグラスの試合がある。その、試合に賭けようというのだった。この友人はギャンブル狂いで借金もある。こういう人苦手・・・ ギャンブルだってちゃんと計画的にするならいいけど、大博打ばっかり打って負けてばかりいるタイプ。しかも、友人のお金まで当てにするとか、嫌い・・・(´・д・`)ヤダ フランクは本来真面目なタイプなので、最初はこの誘いを断るけれど、結局賭けに乗ってしまう。ほとんどがマイク・タイソンに賭ける中、400ドルをジェームズ・ダグラスに賭けるフランクたち。これが! なんとジェームズ・ダグラスがKO勝ちしてしまう! 400ドルが9450ドルになる! ずっと暗い内容で、淡々とした語り口の中で、ここの場面と病院からの逃走場面が、唯一楽しくスカッとする場面。

友人に分け前を払い、犠牲者宅のポストにお金を入れる。少年も2人と同じく孤児で、里親を転々としていたらしい。この辺りのことは詳しく語られなかったけれど、激しく雪の降る夜中に、道路に飛び出してきたのだから、もしかしたら里親との間になにか問題があったのかもしれない。虐待とまではいかないまでも・・・ ただ、映画としては里親を転々としていたということしか語られないので、あくまでも自分の想像でしかないし、少年の本当の両親を探したいというジェリー・リーの願いも、雑誌の尋ね人欄に投稿しただけで、その後は何も語られずに終ってしまう。登場する人々がことごとく辛い現実を生きているという感じだったので、この少年もそういう設定だっただけかもしれないけれど、膨らませた割りに結末を語らないなら、このエピソードは特別必要なかったような・・・ 別にいいけど(o´ェ`o)ゞ

フランクは逃走に使う車を手に入れるため、久しぶりに元上司のアールの店を訪ねる。後部座席に横になれるスペースが必要だと言うフランクに、アールは何か感じ取ったのかもしれない。アールが去り行くフランクに掛ける言葉が泣けた。「お前は立派な男だ、自分をクズだと決めつけて道を選ぶんじゃない。負け犬のように振舞うな!胸を張って生きて行け!」 警察に追われ、間一髪逃げ出した車の中で、アールの言葉を思い出し涙を流すフランクの姿には泣けた・・・

ネバダ州リノからエルコを目指す。フランクが以前つきあっていた彼女アニーが暮らす町。母親と2人暮らしだったアニーは、母親に売春を強要されていた。ある夜、アニーの家を訪ねたフランクは、その場面を目撃してしまう。必死で謝るアニーを、彼は受け入れることが出来なかった。フランクとしてもアニーが悪いわけではないのは分かっているのだろうけれど、それを受け入れるには彼は純粋過ぎたのでしょう。もちろん、簡単に受け入れられることではないし、アニーがあの日懇願したとおり、あの家に帰りたくないと言われて、2人で逃げるにはフランクは力不足だったかもしれない。ジェリー・リーもいたし・・・ このアニーのエピソードは女性として辛かった フランクがエルコに来たのは、アニーから手紙を貰っていたからで、彼女がまだ自分を思っていてくれることや、他に頼る人がいないからでもあるけれど、もちろん彼自身がアニーを忘れられないから。お互いにとって辛い出来事だったけれど、それでもお互いが大切ならば、きっと乗り越えていける。2人が寄り添うようにベッドで微笑みあうシーンは好き。

エルコのモーテルでつかの間、穏やかで楽しい時を過ごす兄弟。動けないジェリー・リーを気遣い、自分よりも兄といてあげてというアニーも素敵な子。ジェリー・リーのシャワーを手伝ううちに、全身びしょ濡れになってはしゃぐ2人のシーンは良かった。でも、脚の傷が癒えない兄は次第に衰弱していく。トイレにも1人で行けなくなってしまう。フランクはアルコール依存症になっているようで、ウィスキーを飲んでは血を吐くようになっていた・・・ そんな姿を見て、ジェリー・リーがフランクに言うセリフが泣ける 「1人で抱え込むな。俺じゃなくてもいい。誰かに心を開け。」この言葉に後押しされるフランク。映画が始まってから、ジェリー・リーが一方的にフランクに迷惑をかけているシーンばかり見てきた観客としては、このセリフでジェリー・リーの弟に対する思いを感じることが出来たし、兄らしい姿を見ることが出来た。脚を失ったことで、負い目を感じていたのはフランクだけじゃない。フランクが自分に対して負い目を感じていること、結果、それに甘えてしまっていることの負い目は、実はジェリー・リーの方が苦しかったかもしれない・・・

結局、ジェリー・リーは亡くなってしまう・・・ そして、冒頭の絵を見つめるフランクの後姿。このイラストはジェリー・リーが描いていたもの。フランクは中古車ディーラーのアールから以前「頭の中に隠れ家を作って、つらいことがあったらそこへ行け、兄さんにも夢を話してやれ」と言われたことがある。それ以来、兄弟の間ではフランクが話を作り、ジェリー・リーがイラストを描いてきた。それらが、映画の中ではアニメとなって登場する。社会の底辺で、兄弟2人で生きてきた彼らの、ささやかな楽しみであり、支えであったことを思うと、その"男子"という感じの内容含め、とっても切なくなってくる。

フランクにはアニーがいる。少し希望が持てるラストは個人的には好きだった。ジェリー・リーが亡くなったことで、フランクの重荷が無くなったという見方もできるので、複雑ではあるけれど、大切な人を失って、失意のどん底にいたとしても、それでも人生は続くのだから、生きていくしかない。だったら、少しでも希望が持てた方がいい。立ち直りが早いか遅いかは人それぞれだし、フランクの表情に希望が見えたとしても、それがジェリー・リーの死を喜んでいることにはならないと思う。辛い内容だっただけに、この終りは個人的には好きだった。

キャストは、アールのクリス・クリストファーソンが良かった。グッとくるセリフなど、おいしい役どころだったとも言えるけれど、それを生かしたのは役者の力量だと思うので。アニーのダコタ・ファニングが大人っぽくキレイになっててビックリ! もう、誰も子役とは思わないね! 登場シーンは少ないけれど、辛い過去を持ちながら、前を向いて生きて行こうとしている女性を好演。彼女に救われたのはフランクだけじゃない。儚げな姿がいい。ほぼ、2人芝居というくらい2人のシーンが多かったので、後はフランクのエミール・ハーシュと、ジェリー・リーのスティーブン・ドーフに尽きるという感じ。スティーブン・ドーフは迷惑ばかりかけている兄という損な役どころを繊細に演じていたと思う。兄の方が逆に負い目を感じているという部分まで感じさせた。そして、エミール・ハーシュはこういう繊細な役はピッタリ! 淡々とした語り口だけに、エミール・ハーシュじゃないと辛かったかも? もう、ホントにこういう生い立ちのフランク・フラナガンなのではないかと思ってしまう。見ている間ずっと気になってたんだけど、フランク・フラナガンって、『昼下がりの情事』のゲイリー・クーパーの役名だよね? 何か関係あり?

原題は『MOTEL LIFE』 文字通り2人モーテルに暮らしている。途中、何度かフランクがアパートの部屋に荷物を取りに行っているシーンが出てくるのだけど、何故モーテルに住んでたんだろう? 家賃が払えないから? ジェリー・リーと一緒に暮らしているからかな? イヤ、逃走してからは当然モーテル暮らしなのは分かるけど、冒頭からモーテル暮らしだったので・・・ その辺りの説明がなかったような・・・

雪のシーンから始まって、2人が逃げるシーンは寒々とした画。エルコで2人が穏やかな日々を送り、フランクがアニーと再会してからは、暖かそうな日差しになる。心の変化を表した画がイイ。マイク・スミスのアニメもカッコイイ!

cocoのアンケートでも答えたけれど、『ギルバート・グレイプ』『レインマン』など、兄弟愛を描いた作品好きな方オススメ! エミール・ハーシュ、スティーブン・ドーフ、ダコタ・ファニング好きな方是非!

『ランナウェイ・ブルース』Official site





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