『家族の灯り』元は舞台劇で場面がほぼ変わらない会話劇。105歳の監督、超ベテラン俳優達に敬意を表するけど、父のセリフが聞き取りにくい貧困から放蕩する息子、彼を溺愛する母、母を愛するゆえ嘘をつく父と嫁。誰が一番罪深い?不条理なラスト http://coco.to/movie/35891
ネタバレありです! 結末にも触れています!
ザックリした感想はtweetどおり。正直に言うとあまり誰にも感情移入出来ないまま終わってしまったのだけど・・・ これは映画館でじっくり見たら入り込めるのか? それとも逆に暗がりで寝てしまうのか? 微妙なところかも・・・(笑) tweetにも書いた通り、ほぼ狭い部屋の中で展開し、カメラもほとんど固定で動かない。役者たちも若夫婦以外は超がつくベテランばかりなので若干滑舌が 特に父親役のマイケル・ロンズデールはほぼ聞き取れない まぁ、フランス語なので聞こえても分からないけど(o´ェ`o)ゞ
父親は帳簿係をしていて、成功した昔の友人たちから集金して回っている。その姿を母親は情けなく思っている。父親は自分に能力がないことは承知しており、分相応の暮らしに満足こそしていないものの、受け入れてはいる。もちろん諦めもあるかと思う。仕事を持たない母親は、息子に愛情を注ぐことを生きがいにしてきたのでしょう。その息子が8年前に家を出てしまってからは、ただただ彼の帰りを待つだけの毎日を嘆いている。生きている実感がない・・・ 何歳の設定なのかは不明だけど、演じているのがクラウディア・カルディナーレなのであれば、60代後半から70代というところでしょう。そんなに刺激的なことがあるとも思えないし、毎日に刺激がないのは貧乏のせいでも、不甲斐ない夫のせいでもないとは思うけのだけど・・・
息子の嫁は身寄りがない少女だった頃、この家に引き取られて育てられたらしい。彼女の夫は8年前に失踪したということになっているけれど、どうやら何か秘密がある。冒頭、シルエットである映像が入るので、見ている側には想像がつく。母親はそれを知らず、出て行ったのは貧乏のせいだ、嫁のせいだと嘆いてばかり。本当のことを話そうという嫁に、そんなことをしたら母親はおかしくなってしまう。それだけはダメだと止める。父親の気持ちは分かるけれど、見ていてこの母親にはちょっとイライラさせられた。でも、それが家族というものなのかな・・・
そんな中、息子が帰って来る。刑務所に入っていたようだけれど、この息子からは反省の様子は全く感じられない。嫁の感じからすると、もう少し年上の息子を想像していたけれど、意外に若い印象。30代くらい? それにしても、全く大人になっていない。自分がこんなになってしまったのは貧乏だから。この家には何もない。外の世界にはいろんなものがある。だったら、自力で外の世界で頑張ればよかったじゃないか! 人のせいにするなよ(*`д´)
とか思っていると、2人の客が訪れる。1人はジャンヌ・モロー。チラシなどでは大きく扱われているけれど、出演時間は10~15分程度。ただし、重要なカギを握る。父親のカバンの中には、集金してきた大金が入っていると、バカ息子の前で何度も語ってしまうのだった┐(´∀`)┌ヤレヤレ 相変わらず、ちょっぴり意地悪で、でもカワイイおばあちゃん役似合う(笑)
その夜、嫁の制止を振り切って、バカ息子は父親のカバンからお金を奪って出て行ってしまう。騒ぎを聞きつけ出てきた父親に事情を話す嫁。父親はまたしても母親には内緒にしようと告げる。翌朝、再び息子が出て行ってしまったと知り部屋で泣いている母親。その泣き声を聞きつつ、今後のことについて話している父親と嫁。父親は顧客宛てに手紙を書き始める。お金を盗まれてしまいました・・・ ところが、父親はそれを破いてしまう。そして、ある決心をする。家に警察と男たちが訪ねて来る。「あの男です」と指さす人々。そして、父親は「はい、私がやりました」と立ち上がる。驚く母親と嫁。エンドクレジットもこの映像。
うーん・・・ これは息子の罪を被ったってことだよね? でも、そもそものお金は父親が集金したものなのに、何故顧客たちは父親を指さして犯人扱いしたのかな? 別に犯人扱いしたわけではないのか? 単にお金がなくなったってことで、警察を引き連れて事情を聞きに来ただけ?
とにかく会話だらけで、その1つ1つはちゃんと意味があったり、それぞれの気持ちを文学的な言葉で語っているのだけど、ちょっと集中力が続かず、ついついiPhoneに手が伸びてしまって・・・ なので、全部きちんと見れてたわけでもないのだけど、ちょっとこの父親がどうしてここまで母親に息子のことを隠さなきゃならないのかが理解できなかった。母親が心臓が悪くてショックを受けると発作を起こすとかなら分かるけど、そういうわけでもないみたいだし・・・
元凶はバカ息子なのだけど、その息子を嫁はコントロールできていないわけで、嫁がそうできないのは、育ての親でもある義父母に遠慮しているから。母親は自分の"人生"を持たないので、息子を溺愛している。それは貧乏だからで、貧乏なのは父親に甲斐性がないから。なので、父親は全てを自分で引き受けてきたってことなんでしょうけれど、それって"家族"なのかしら? 全て赤裸々に語り合うことが家族だとも思わないし、そうやって互いを思いやっていると言えなくもない。でも、自分が母親の立場だったら、すべてを知った時、自分だけが本当のことを知らされていなかったことにショックを受けると思うけど・・・
と、その辺りも含めてモヤモヤさせることが、現在106歳のマノエル・ド・オリヴェイラ監督の狙いでもあるのかな? ちょっと自身には荷が重すぎたかも・・・(笑)
キャストは、父親のマイケル・ロンズデール、母親のクラウディア・カルディナーレ、嫁のレオノール・シルヴェイラが素晴らしかった! 母親はちょっと損な役でもあるのだけど、自分を守るためだとはいえ、何も知らされていないのは気の毒。その辺りも感じさせて良かった。嫁もこの状況を打破したいと思いつつも、結局は諦めている感じが良かった。父親の解決方法については、いつも違うと思いながら見ていたけれど、彼は彼なりに家族、特に妻を守ろうとしていることは伝わった。そして、短い出番ながらしっかり印象を残すジャンヌ・モローが素晴らしい。先日、『ハリー・ポッター』シリーズのダンブルドア校長役でおなじみの、マイケル・ガンボンがセリフを覚えられないことを理由に引退宣言したばかり。この超ベテランキャストたちが、かなりの長セリフをキッチリ覚えて演じていることが奇跡! そういう意味では、この演技を見れたことは良かった。
いわゆるファミリー映画とは違う、家族映画を見たい方オススメ? 超ベテラン俳優たちの渾身の演技を見たい方もオススメ? ?がついているのは、その部分はが良かったと思っているものの、映画全体としてちょっと眠かったので・・・(o´ェ`o)ゞ