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【cinema】『ノクターナル・アニマルズ』

2017-12-07 23:53:40 | cinema

2017.11.17 『ノクターナル・アニマルズ』鑑賞@TOHOシネマズシャンテ

 

試写会応募したけどハズレ💦 TOHOシネマズのシネマイレーズ会員は1,100円で見れるシネマイレーズ週間最終日、見たかったコレ見に行ってきた~

 

 

ネタバレありです! 結末にも触れています!

 

「画廊を営むスーザンは、経営者の夫と裕福な生活をしていたが、お互いの心が離れているのを感じていた。そんな時、19年前に別れた夫から小説の原稿が届く。読み始めると次第に引き込まれていき・・・」と、あらすじとしてはこんな感じかな~ これはなかなか面白かった。スーザンの現実、元夫との回想、そして小説の3つ場面が交互に描かれるけど、スッキリと整理されていて、ゴチャつきがない。役者たちの演技が素晴らしく、20年前と現在、小説の主人公と20年前を演じ分けているので、混乱してしまうことがない。それぞれでセットや衣装、画のトーンまで違っていて、登場するアートまで美醜含めてトム・フォードの美意識が感じられる。

 

デザイナーのトム・フォード監督作品。前作『シングルマン』に続く2作目。前作も評判が良かったように思うけれど、自身は未見。GUCCIを見事再生させた言わずと知れたデザイナーだけど、ここではデザイナーとしての経歴は割愛。作品について毎度のWikipediaから引用しておくと、『ノクターナル・アニマルズ』(Nocturnal Animals)は、オースティン・ライトの1993年の小説『ミステリ原稿』を原作としたトム・フォード監督・脚本による2016年のアメリカ合衆国のドラマ・スリラー映画である。出演はエイミー・アダムス、ジェイク・ジレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー、ローラ・リニーらである。主要撮影は2015年10月5日よりカリフォルニア州ロサンゼルスで行われた。第73回ヴェネツィア国際映画祭ではコンペティション部門で金獅子賞を争い、審査員大賞を獲得した。2016年11月18日にフォーカス・フィーチャーズの配給により米国で封切られた。

 

2015年3月24日、スモーク・ハウス・ピクチャーズのパートナーのジョージ・クルーニーとグラント・ヘスロヴがオースティン・ライトの1993年の小説『ミステリ原稿』を基にしたスリラー『Nocturnal Animals』を製作予定であることは発表された。監督にはトム・フォードが就任し、脚本も自身で手掛けた。翌日、ジェイク・ジレンホールが主人公のトニー役に決まり、またエイミー・アダムスが女性主人公のスーザン役で交渉中であり、さらに別の役でホアキン・フェニックスとアーロン・テイラー=ジョンソンが候補に挙がっていることが報じられた。2015年5月17日にフォーカス・フィーチャーズが米国での配給権、ユニバーサル・スタジオが国際配給権を獲得した。2015年8月6日マイケル・シャノンが暴力事件を調査する刑事役でキャストに加わった。2015年8月28日、アーミー・ハマーがアダムスのキャラクターの夫のウィーカー・モロー役で加わった。2015年9月9日、トニーの妻のローラ・ヘイスティングス役でアイラ・フィッシャーが加わった。2015年10月5日、主要撮影がカリフォルニア州ロサンゼルスで始まった。撮影は2015年12月5日に完了した。

 

ワールド・プレミアは2016年9月2日に第73回ヴェネツィア国際映画祭で行われた。また2016年9月9日に第41回トロント国際映画祭、10月14日にロンドン映画祭でも上映された。北米では2016年11月18日より劇場公開が始まった。第73回ヴェネツィア国際映画祭での上映の際の批評家の反応は概ね良く、アダムス、ジレンホール、シャノン、テイラー=ジョンソン、シーンの演技が賞賛された。Rotten Tomatoesでは30件の批評家レビューで支持率は80%、平均点は7.3/10となっている。またMetacriticでは14件の批評家レビューで加重平均値は75/100となっている。とのこと。

 

OPからビックリ! 失礼ながら醜く太った女性たちが全裸で踊る姿をスローモーションで映す。最初に出てきた女性の体を見て、うわ~💦と思っていたら、次々とそれを上回って行くのでさらにビックリ。けっこう長く続く。そして、そのまま映画スタート。激しく踊っていた彼女たちは、展示品となって台の上に横たわっている。それを人々が眺めている。観客の中に太っている人はいない。美とは真逆の体を鑑賞する。そこに美を見出す、もしくは醜として鑑賞するということなのかな? 芸術は好きだけれど現代アートはよく分からないし、分からないものを分かった風に見るのも好きじゃない。なんとなくグロテスクなものを感じた。彼女らの体がということではなくて、それをアートだと見せることも、見ることも。でも、それが狙いなのかな。とにかく、このOPから引き込まれたことは間違いない。

 

裸体アートを眺める人々を見つめるスーザン(エイミー・アダムス)。スゴイ化粧。現在のスーザンは小説を読む時以外は、この濃いメイク。そしてメイクしている時はほとんど笑わず、あまり幸せそうではない。これは意図的にしているのだと思う。戦闘モードというか、自己防衛のような。説明がないのでよく分からないけれど、おそらく企画展のパーティーでも楽しそうではない。

 

インテリア雑誌にできそうなスタイリッシュで豪華な部屋。グレーを基調にしたインテリアは素敵だけれどぬくもりは感じられない。スーツ姿の男性が郵便物を持って来る。A4サイズくらいの小包。開けようとして手を切ってしまい、男性を呼び戻し開けてもらう。中には手紙が入っており、それも男性に読んでもらう。元夫からで主旨としては小説を書いたので読んでほしいという内容ながら、異性の第三者に読んでもらうには気まずい内容も書かれている。男性はためらうのに読ませてしまう感じもスーザンの性格を表しているのかもしれない。この男性はモデルのような容姿でスーツもビシッと着こなして素敵だけど、このシーン以外で見かけないけど秘書の人なのかしらね? 別にいいけど

 

元夫から小説が届くことは知っていたので、興味津々ではあるのだけど、意外に直ぐ読まない。これまた雑誌から抜け出したようなキッチンで夫との会話シーン。週末は海辺で過ごさないかと誘うも、夫のハットン(アーミー・ハマー)は会社が経営危機だから今からニューヨークへ行かなければならず、週末も戻れないと言う。スーザンは仕事は別にいいじゃないか的なことを言うけれど、そうはいかないというハットン。もちろんそうなのだけど、2人の間にはしっくりいかないものがあって、スーザンはそれを修復しようとしているけれど、夫はそれを望んではいないように思える。この会話だけでそれを感じさせるのはスゴイ。後に分かることだけど、ハットンは浮気している。エレベーターに1人で乗っているはずのハットンの電話の向こうから、部屋のある階に到着したことを告げるためマダムと呼びかける声が聞こえる。それで全てを悟る感じもいい。

 

後に一瞬だけ登場するので、2人の間には少なくとも娘が1人いるようだけれど、既に家を出ているのか、2人暮らしのようで、夫が留守にすると広い家に1人きり。夜、メイクも落として小説を読み始める。うろ覚えだけど、小説を読んでる間はメイクはしていなかったように思うのだけどどうだったかな? あえてそういう演出になっている気がするのだけど違うかな?

 

さて、ここからどうやって書いて行こうかな。というのも、前述したとおり小説を読んでいる現在、小説の内容、そして小説を読むことによってよみがえってくる過去の記憶の3つの視点をクロスして描いているので。中心にあるのは小説で、それが現在のスーザンに影響を及ぼしているけれど、ハッキリとリンクしているわけではないので。画面で見ているならともかく、レビューで同じことをしても読み辛いし、小説部分がおもしろいので、これをぶつぶつ切ってしまうのはもったいない気もする。ということで、とりあえず小説部分をメインで書いて行き、そこに重要なポイントだけ現在の部分を加えて、過去部分については最後にまとめて記載、そしてラストへという形で書こうと思う。いつもながら、どうでもいいかと思うけれど、断り書きとして書いておく

 

『ノクターナル・アニマルズ』というのは小説のタイトル。字幕では「夜の獣たち」と訳されていたように思う。これは元夫がスーザンをこう呼んでいたからだそう。これって意味深なのかしら? 小説はかなりハードな内容となっていて、前述したとおり小説の主人公も元夫役のジェイク・ギレンホールが演じている。おそらくこれは後の場面で出てくるように、小説家である元夫はスーザンと結婚していた当時、自分のことを題材とした小説を書いていたため、スーザンが自然と主人公を元夫に設定したということと、小説がスーザンに与えている影響を表しているのかなと思う。

 

夫婦と10代と思われる娘の3人が夜、車で出かけるところから始まる。後から分かるけれどベンツに乗っているので比較的裕福な家庭なのかな。目的地までは3時間程度かかるようなので結構長旅。人通りのない真っ直ぐな道は、ヘッドライトに照らされている部分以外は暗闇の中。運転は夫トニー(ジェイク・ギレンホール)助手席には妻ローラ(アイラ・フィッシャー)が座り、後部座席の娘のインディア(エリー・バンパー)は反抗的で、スマホをいじり続けているけど、途中で電波が届かなくなってしまう。ごく普通の家族。これから何が始まるのか? 余分な情報を排除した映像がスゴイ。夜の闇が不安にさせる。

 

しばらく行くと目の前に2台の車が現れる。1台は対向車線に出て併走している形で、ノロノロと走っている。後から種明かしとなるようなシーンもあるけど、実はこの光景には重要な意味があったのだった。しばらくイライラしながら様子を見るけれど、2台の並走は続く。道をふさがれた形になっているわけだから、クラクションを鳴らしたりアピールするけれど、どいてくれない。イライラも頂点に達して煽ると、やっと道を譲ってくれる。車を追い越す際にインディアが中指を立て相手を刺激してしまう。この娘はもう(*`д´) すると、相手が猛追してきて、横にピッタリと並ぶ。そして止まれと叫んでくる。当然止まらない。すると今度は車をぶつけてくる。ローラとインディアはパニックになり始める。この並走はしばらく続くけど、前に回り込まれ追突してしまい、止まらざるを得なくなる。

 

車から降りてきたのは3人組の若い男たち。車を囲む。リーダー格の男性レイ(アーロン・テイラー=ジョンソン)が窓を開けるよう促す。車を降りるように言うけれど、降りては危険だというのはトニーたちだけでなく、見ている側にも伝わってくる。レイは激高しているわけではないけれど、トニーが自分たちの車に追突したことをの責任を取れと迫ってくる。どう考えても言いがかりだけど、非常に危険な状況であることは間違いない。なるべく相手を刺激しないようにしようとするけれど、ローラとインディアはたびたび反抗的な態度を取ってしまう。レイはそれに対して怒りをあらわにするわけではないけど、決して許すことはない。底知れない恐ろしさがある。そんなやり取りが続く中、別の男がタイヤがパンクしているから直してやると言い出す。そんなのウソに決まっているというローラ。トニーも信じない。何とか車を出そうとするも、男たちの言うとおりパンクしていた。おそらくは先ほどの男がパンクさせたのだと思われるが、パンクしてしまっていてはどうしようもない。仕方なく車を降りるトニー。この時だったと思うけれど、車が通り過ぎ運転席の男性と目が合う。先ほど並走していた車だと思われる。おそらく彼もいやがらせにあっていたのでしょう。それを煽ってトニーたちが身代わりになってしまったというわけ。

 

タイヤを交換するので車を軽くしろとローラとインディアも車の外に出すように言われる。身の危険を感じて拒否する2人。どなったりするわけじゃないけど、ネチネチと因縁をつけてくるレイ。仕方なくトニーは2人に車を降りるよう説得する。順番は忘れてしまったけれど、パトカーが通りかかり、トニーが止まってくれるように声を掛けるも、気付かずに行ってしまう。ローラとインディアは外に出るが、その際インディアはまたしてもレイたちを刺激してしまう。この娘はしょうがないな(*`д´) するとレイはもう1人の男と共に、ローラとインディアを自分の車に乗せ、ルー(カール・グルスマン)という男にトニーの車で彼を連れてくるように指示する。もう嫌な予感しかしない。ここまで一気に見せて結構な尺があって、嫌な気分しかしないのに目が離せない。

 

ルーが道を指示しトニーに運転させる。途中、小屋のようなものがあり、そこで車を見かける。あれ? もしかして車逆だったかも? トニーの車でレイたちが妻と娘を連れ去って、この小屋の前で見かけたのはトニーの車だったかもしれない。とにかく、おそらく2人はそこに連れ込まれたのだろうと思われる。ルーはもっと奥へ進むように指示、最終的に何もない広い場所に出る。本来ならばここでトニーは殺されるはずだけど、ルーはトニーを置いて去る。すると車が戻って来て、レイがルーに何故トニーを始末しなかったのかと罵っている。まぁ、普通に考えたらそうだよね。でも、トニーが生き延びないと意味がないからね。

 

トニーは必死に歩く。ちょっと忘れてしまったのだけど、あの車の止まっていた小屋の前も通ったんだっけ? 通ったけど車がなかったから通り過ぎちゃったんだっけ? 曖昧な記憶だけど、要するにトニーは妻子が連れて行かれたと思われる場所に行かなかったということで、これが後に彼を苦しめることになる。そして、これは作者であるエドワードの苦しみでもあるのだと思う。夜が明け有刺鉄線をくぐって道路に出る。車が1台やってきたので止めようとするも素通りされてしまう。仕方なく歩き続けると一件の民家を発見する。そこで電話を借りて警察に連絡する。

 

トニーは指示どおりにモーテルにチェックインする。バスタブに浸かり涙を流す。しばらくすると警察より連絡があり、今後はアンディーズ刑事(マイケル・シャノン)が担当すると言われる。アンディーズ刑事は鋭い顔をした中年男性で、やる気がないわけではないけど、全体的にダルそうな雰囲気。どこか具合が悪いのか? 常にタバコを吸い、激しく咳き込んでいる。助手の運転するパトカーで、あの家からトニーの記憶をたどる。道路に出るときにくぐった有刺鉄線を発見する。そこからは徒歩で向かう。そして、あの小屋で妻と娘の遺体を発見する。塀に囲まれた裏庭のような場所に置かれた赤いソファ? その上に全裸で向かい合うように寝かされていた。この瞬間、現実に戻りスーザンは電話を掛ける。けだるそうに電話に出た娘は、小説の中で殺された娘インディアと同じポーズをしていた。違うのは相手が同じ年頃の男性で、彼女は生きていること。見ている時は、スーザンも母親なのだなと思った程度だったけれど、後にこれは重要な伏線であることが分かる。小説の中では、トニーが残酷な事実を告げられる。妻は頭を殴られて死亡、娘は苦しんだであろう窒息死。2人ともレイプされていた。

 

1年後、トニーはアディーズ刑事から呼び出される。3人組の1人ではないかと思われる男が別件で逮捕されたので面通しして欲しいと言うのだった。ビックリしたのはこの面通し、会議室のような場所で行われてて、容疑者たちからもトニーが丸見えであるということ。これって普通なの? それとも小説だから? この小説のジャンルが何なのか不明なのだけど、とっても不穏でハードな内容なので、もしかしたら小説オリジナル設定なのかもしれない。中の1人がルーであることはトニーだけでなく見ている側にも分かる。もちろん指摘するけれど、ルーは否認。まぁそうでしょうね。

 

えーと。ちょっと記憶が曖昧になってしまったのだけど、ルーがあの時の男で間違いないということで、彼を取り調べてレイに辿り着いたんだっけ? それともアンディーズ刑事がある程度目星をつけていたんだっけ? いずれにせよ、主犯格がレイであることが判明する。アンディーズ刑事はレイの家にトニーを連れて行く。森の中のような場所にある家は、何故か家の外に便座があり、レイが全裸で用を足していた。トイレットペーパーもついていてるし、ちゃんと水も流れるようだけれど、何故こんな場所に? 雨の日はどうする? これ何でこの設定入れたんだろう? 原作にあるのかな? トム・フォードの趣味?←どんな趣味

 

レイは連行されるけれど、結局レイもルーもトニーの件では証拠不十分ということで釈放されてしまう。やり切れない思いを抱え帰宅したトニーの元にアンディーズ刑事から連絡が入り、呼び出しを受ける。自分はガンで余命わずかだから、トニーにその覚悟があるなら、多少の無茶をしてもいいと言う。要するに法で裁けないなら、自分たちで始末をつけようということ。もちろんOKする。

 

アンディーズ刑事は事件現場となった小屋(だよね?)にレイとルーを連れてきていた。この後におよんで2人はまだ否定する。ルーは怯えている様子もあるけれど、レイは相変わらずふてぶてしい。トニーに制裁を加えるように言うのだけど、何故かアンディーズ刑事は2人の手錠を外してしまう。これは何故? そしてアンディーズ刑事が咳き込みその場を離れると2人は逃走してしまう。そりゃそうだろ。するとアンディーズ刑事が逃げる2人に発砲。レイは逃げるがルーは射殺される。トニーは自らの手で制裁を加えたかったと言う。アンディーズ刑事はトニーに銃を渡す。これ、トニーに託したってことなんだっけ? 二手に分かれて探そうってことだったんだっけ? 後者のように思ったけどどうだったかな。

 

トニーはある小屋を見つけ中に入るとレイはベッドで寝ていた。レイかなりの大物感だな。大胆なのかバカなのか。まぁ、バカではないと思う。トニーはこの時レイをどうするつもりだったのだろう? 反省して謝罪するなら自首させるつもりだったのか、謝罪しても自ら制裁を加えるつもりだったのか。自分は前者だったと思うけれど、結局レイから謝罪も反省も聞かれなかった。お前の妻子は自分を侮辱したのだから、報復されて当然なのだというのが言い分で、自分は人を殺すことに罪悪感などないとのこと。それがハッタリではなく、本心で言っている感じがするのが怖い。アーロン・テイラー=ジョンソンの演技がスゴイ! トニーはずっとレイに銃口を向けていたけれど、レイは隙を見て棒を掴む。トニーはレイに向けて銃を撃つけれど、レイに殴られて気を失ってしまう。

 

しばらくしてトニーが目を覚ますと、殴られたショックで目が見えなくなっていた。手さぐりで探すとレイは床に横たわっており、死んでいた。トニーは外に出ようとドアに向かう。おぼつかない足取り。外に出たところで転んでしまい、誤って自分を撃ってしまう。ここで終了。なんてこった。・゚・(ノД`)・゚・。

 

とにかく救いが全くない話で、レイたちに嫌悪感しかないのに、何故か惹きつけられて続きが気になって仕方がない! 現在と過去のスーザンの映像が差し込まれるけれど、それぞれのトーンと全く違った乾いた景色と、ヒリヒリする緊張感と、アンディーズ刑事から醸し出される倦怠感が全体を覆っている。この映像が現在、過去の映像と対比となっていて、でもどこかでリンクしていて、とにかく一瞬も目が離せない。

 

さて、ここからは「夜の獣たち」の作者であり、元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール2役)との過去について。回想は2人がニューヨーク(かな?)の街角で偶然再会するところから始まる。食事をすることになり、食事の席で2人が昔話をすることでお互いの関係が分かるようになっている。この辺り自然でとても上手い。エドワードは兄の親友だったのだけどれど、彼が兄に近づいたのは実はスーザンが目当て。兄はゲイでエドワードに恋していたそうなので、ちょっと残酷。スーザンの実家がどこだか忘れてしまったのだけど、地元の名士の家庭っぽい。母親は家名を重んじ、階級意識が強く、差別的な人物らしい。上流階級に一定数いる感じかな。父親のことを話していたか忘れてしまったけれど、両親は兄を勘当してしまったのだそう。このシーンのエイミー・アダムスがかわいい。たしか大学を卒業した後、アートを学ぶために別の大学(イェールだっかな?)に通っているって言っていたし、20年前に分かれているのだから、この当時はまだ20代。エイミー・アダムスの実年齢は43歳だけど、全然20代に見える! ジェイク・ギレンホールもいい。

 

2人は結婚を決意するけれど、母親(ローラ・リニー)はスーザンを呼び出し反対する。シャネル?スーツを着て、高価なジュエリーを身に着け、バッチリ髪をセットした姿はまさにブルジョア。論点としては2人の価値観が合わないから上手く行かないということ。たしかにこの母親には上流意識があるとは思うけれど、思っていたほど差別的ではないように思う。エドワードはこの母親を好きだと言っていたし、母親の方も彼を嫌っているわけではない印象。スーザンが一方的に母親は偏見があり、自分は母親とは違うと反発しているようにも思う。まぁ、この時点ではスーザンもまだ若かったしね。この時、母親がスーザンにあなたは私と違うと思っているようだけれど、実はとても似ていると言うのが印象的。後に納得することになる。

 

それでも2人は結婚したようで、しばらくはとても幸せな時を過ごす。エドワードは作家志望で小説を書いては投稿しているけれどなかなか成果が得られない様子。そんな状態が続き殺伐としてくる2人。小説を書き上げるとエドワードはスーザンに意見を求めていたようで、この日もスーザンは作品を読み意見を述べる。自分以外の人のことを書いてみたら? それに対してエドワードは反発する。人に意見を求めておいて、自分の意に沿わないと怒るというのはどうか?と思うけれど、きっとエドワードはスーザンの言葉の中に"何か"を感じ取ってしまったのかも。自分に対する失望とか、自分への無理解とか、自分の方が文学や芸術を理解しているというような優越感みたいなもの。その辺りのことが短いシーンながら伝わって来る。

 

2人の仲がぎくしゃくしてきた頃、スーザンは大学で魅力的な男性と出会う。顔が良くてお金持ち。それが現夫のハットン。なかなか分かりやすい。エドワードはなんとか2人の仲を修復しようとしていたようだけれど、スーザンにはその気はない。もう限界だと言う。そしてスーザンは罪を犯す。エドワードとの子供を堕してしまったのだった。しかも、それに付き添ったのは当時は不倫相手だったハットン。そして、その夜2人が車の中にいるところをエドワードに見られてしまう。これはヒドイ。その後のことは描かれないけれど、このことが決定打となって離婚したことは間違いない。

 

このことは確か部下の女性との会話で、決定的に彼を傷つけたと話していたので、罪の意識はあるのでしょう。ただ、それがどう悪いと思っているかによるというか・・・ エドワードを傷つけたことについてはもちろん自分が悪いと思っていると思うし、不倫自体も夫の子供を堕胎したことにも罪の意識はあると思うけれど、きっと本質的にはそうするしかなかったと思っているような気がする。つまり本当の意味では反省していないのではないかという気がする。何故なら、それだけのことをしておいて、本当にエドワードに対して悪いことをしたと思っているならば、いくら彼の方からコンタクトを取ってきたからといって会いたいなどと言えるはずがないから。

 

エドワードがスーザンの現状をどの程度知っているのか分からないけれど、イケメンで金持ちの男性と結婚し、画廊を経営して成功しと何もかも手に入れたように思えるけど、実情は夫は浮気しており心が離れてしまっていて、仕事にも喜びを見いだせないでいる。そんな時、元夫からの刺激的なコンタクトを受け、心がザワつく気持ちは分かる。実際、その影響は大きく、自ら変革が必要とクビを切った職員を庇って解雇を撤回したりしている。ささくれ立って攻撃的だったけれど、エドワードとの思い出に引っ張られて心が潤い、人を思いやる余裕が出たということなのかな? 芸術やビジネスの観点からするとそれでいいのかは別として。無機質だったスーザンにだんだんと人の温かさを感じたりする。この辺りのエイミー・アダムスの演技と、淡々とした中にそれを感じさせる演出が見事

 

あと、やっぱりスーザンには芸術を見抜く力と、ビジネスの才能があるのだと思う。エドワードの小説に魅力を感じているのは確か。これをビジネスチャンスと考えているとまでは思わないけど。スーザンにはエドワードに対してもハットンに対しても、彼らの付加価値の方に魅力を感じる人なんだと思う。本人を愛しているわけではなくて、小説家であるエドワード、イケメンで金持ちなハットン。本人はそれを自覚していず、いつでも相手の理解者だと思っている。いわゆる上から目線とは違うけれど、でも視点は上からなんだと思う。これも本人は自覚していない。

 

母親が本質は自分と似ていると言っていたのはこういう部分なのかもしれない。実際は俗物であるというような。ただ、スーザンが過去にしたことについては置いておいても、こういうスーザン的な部分は誰しも持っているような気もする。そして現代の女性には多いのではないかという気もする。女性に求められるものが増えている中、その落としどころというか、自分らしさみたいな部分で模索しちゃうというか。誰だって欲しい物は手に入れたいし、幸せになりたいと願うはずで、その価値観はそれぞれだけど、軸がブレていないようでブレてしまうというか、アグレッシブに突き進んで空回りしてしまうというか。人さえ巻き込まなければ別にどう生きようがその人の人生なので、それがダメとも思わないし、自分の中にも少なからずあると思う。そういう意味で、スーザンはある種の女性像として描かれているのかなと思う。

 

スーザンはエドワードに小説の感想をメールする。とても素晴らしい、会って話がしたい。するとエドワードから返事が来る。時間と場所は君に任せる。当日、出かける支度をするスーザン。念入りに服を選び、鏡を見る。そして、しっかりと塗られていた口紅を落とす。エドワードと結婚していた頃、スーザンはナチュラルメイクだった。その頃を思い出して欲しいという演出なのか、キスされるかもしれないという想定なのか。印象的なシーン。

 

選んだのは高級そうなアジア風レストラン。庭が見える席に通されるスーザン。もちろん予約済みでしょう。少し早めに着いたのか余裕をもってお酒を頼む。ウィスキー? しかし、いくら待ってもエドワードは現れない。入店時にはまばらだった席も満席になり、その席も客が入れ替わり、そして誰もいなくなってもエドワードは来ない。そして、映画は終わる。スーザンの表情の変化が興味深い。エドワードの復讐に気付いたスーザンの表情が印象的。

 

エドワードの復讐についてはいろんな意見があるらしい。回想シーンでエドワードは自分をモデルにした小説しか書かないことが分かっているので、「夜の獣たち」のトニーはエドワードがモデルで間違いないでしょう。ジェイク・ギレンホールが2役で演じているし。エドワードがスーザンのことを夜の獣と呼んでいたというセリフがあるから、レイがスーザンなのかな? レイはトニーの妻子を殺しているけれど、堕胎=子殺しということなのかなと。そして、スーザンのこの行為により、自分から"妻"も奪われたということなのかも。となると、スーザンの罪を糾弾している小説に感銘を受けてしまった時点でエドワードの復讐がなされたということなのかな?

 

現在のエドワードは一切登場しないので、何故このタイミングで彼が小説を送ってきた=コンタクトを取ってきたのか真意は謎なのだけど、映画としては彼の復讐として描いているし、それを分かりやすくした形があのすっぽかしなのかなと。小説自体がスーザンの罪を描いたものだとしたら、それに気付くどころか、自分に会いたいと言ってくるスーザンをどう思ったのだろう。バカな女だと嘲笑ったのか? 自分がエドワードだったらより傷ついちゃうきもするのだけど。だって、自分は19年間忘れることが出来ず、ずっとスーザンを恨んでいたわけで、そのことをスーザンが気付くどころか、ケロリとして会いたいと言ってくるなんて。

 

とはいえ、2人の関係が悪化した原因の1つには自分の小説が上手く行かないことがあり、しかも一番の理解者であってほしいスーザンにもダメ出しされていたわけで、それを認めさせてやったという小説家としての喜びはあったように思う。そう考えると、スーザンが絶賛した時点で復讐が成立したので、後はどうでもいいということなのかも。もちろん初めから会うつもりなどなかったと思うけれど、すっぽかすこと自体が復讐なのではなく、小説の真の主人公に気付かないスーザンへの最後通牒だったのかも? この復讐を器が小さいという意見もあるようだけれど、芸術的センスがあるというスーザンのプライドを打ち砕いたという意味では、結構壮大な復讐のように個人的には思った。トム・フォード監督的にはそういう意図があるように思うのだけど違うかな。

 

小説の中のトニー=エドワードが死んでしまうので、エドワードは自殺してしまったのではないかという意見もあるそうで、確かにそれもあり得るかなとも思うけれど、個人的にはエドワードとしてはこれで区切りをつけて、新たな一歩を踏み出すのではないかなと思ったりする。スーザンは表面的なものに価値を見出してそれを手に入れてきた。それが分かりやすかったからだと思う、自分にとっても他人にとっても。ステータスとして。やっぱり母親に似ている。別にそれは悪いことではないと思うけど、そこのみを追求してきたからいつまでも満たされないということなのでしょう。

 

結婚も離婚も2人でするものだから、スーザンだけに一方的に責任があるわけではないと思うけれど、今作ではスーザン的な人物について描きたかったのかなと思う。なので、浮気してる夫に罪はないとでも?!というようなツッコミはなしとしておく

 

キャストは皆素晴らしかった。アーミー・ハマーは損な役どころだったかな。アクセントにはなっているけど、毒にも薬にもならない浮気亭主の役なので。画的なスタイリッシュさや美しさには一役買っていたと思う。母親役のローラ・リニーがわずかな出演シーンで印象を残す。この母親には確かに嫌な面があるかもしれないけれど、それは彼女の立場というものを考えると、家を守る主婦として、そうならざるを得ない場合もあるのではないかと思う。いいことだとは思わないけれど、属している階級によっては、世間体を重んじることが家庭を守る第一条件の場合もあるのではないだろうか。そう思わせたのはローラ・リニーのおかげ。

 

アンディーズ警部のマイケル・シャノンがいい。アンディーズ警部の決断は法律的には間違っているけれど、法では裁けない悪もある。それがとっても伝わって来た。そして、常にダルそうな佇まいも良かった。このマイケル・シャノンは素晴らしい そして レイのアーロン・テイラー=ジョンソンがスゴイ! ホントに怖くて、憎らしくて、でも魅力的。レイの思考は全く理解できないし、絶対に関わりたくないけど、見ている分にはとっても魅力的。最悪な人物なのに魅力的。それはアーロン・テイラー=ジョンソンのおかげ。

 

トニーとエドワードを演じたジェイク・ギレンホールも良かった。演技上手いのもそうだけれど、作品選びのセンスが良くて、いつもたいがい面白い。ジェイク・ギレンホールにハズレなし! 2役演じているけれど、トニーはエドワード自身を描いているというという設定なので、どこかリンクさせているし、でも小説=劇中劇の主人公としても演じていて見事。登場しない現在のエドワードの不気味さまで感じさせた。

 

そしてスーザンのエイミー・アダムスがスゴイ! この作品に登場するシーンのほとんどでスーザンは幸せではない。冒頭の夫に浮気されている描写では彼女に同情するけれど、回想シーンなどを見せられるにつけ、この境遇を招いたのは彼女に大きく要因があるのだということが分かる。エドワードにしたことを除けば、特別嫌な人物というわけではないけれど、いい人とも言い切れない。まして、過去が明らかになれば、嫌悪感を覚える人もいると思う。でも、どこかで共感とは違うけれど、分かってしまう部分がある。仕事も、家庭も自分にとって最高のものを求めた場合、こうなってしまうこともあるのではないかと思ってしまったりする。ただ、その最高のものというのはその時々の条件でしかないから幸せにはなれなかったというような。共感してしまってはダメだけど、理解できないことはないという感じが絶妙。自分もそうなってしまったかもしれないという感覚が怖いわけだからね。その辺りを的確に表現していたと思う。素晴らしい

 

とにかく全編スタイリッシュ! 冒頭のビックリアート映像や、劇中劇である「夜の獣たち」の荒野のシーンなど、本来は美しいとは思わないものまで含めてトム・フォードの美意識が感じられる映像。演出も計算されていて、3つの視点が交互に描かれているけれど、それぞれ色のトーンを変えたり、セットやメイクを変化させたりしているので分かりやすい。女性に対して時には厳しく、時にはエールを送っているようにも感じた。せいぜい頑張りなさいよね的な突き放したエールではあるけれども。

 

とにかく映像が美しい。劇中劇の夜のハイウェイの暗闇の黒とかホントにキレイ。そして、何より劇中劇がおもしろい! イヤな話なのに続きが気になって仕方がない。この構造は上手い!

 

見てから3週間くらい経ってるし、公開日から1ヶ月近いけど、まだ上映してるかな? もう終わっちゃったかもだけど、これは劇場で集中して見て欲しいのだけどな~💦

 

とにかくオススメ! サスペンス好きな方、女性の生き方的な作品好きな方もオススメ。アート作品好きな方も好きだと思う。ジェイク・ギレンホール好きな方是非! エイミー・アダムス好きな方、アーロン・テイラー=ジョンソン好きな方必見!

 

『ノクターナル・アニマルズ』公式サイト

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【動画】宇野昌磨選手 Grand Prix Final 2017 SP

2017-12-07 22:12:31 | 【動画】ShomaUno

⛸【動画】宇野昌磨選手 Grand Prix Final 2017 SP⛸

 

 



現在、名古屋で開催中のグランプリファイナル。グランプリシリーズ6戦の内、2試合に出場しその順位でポイントを競い、上位6人が出場できる。試合の格付けで言えば、オリンピック>世界選手権>GPFという感じではあるけれど、優勝すれば現時点での世界一であることは間違いない。

 

日本からただ一人出場した宇野昌磨選手のSP演技。テレビ朝日が生で放送してくれないので、先にネットで結果確認しちゃって、減点2となっていたので2コケしたのかと思ったけど・・・ 冒頭4Fはキレイに着氷。4T-3Tも問題なし。イーグルからの3Aは着氷したものの転倒。開脚するような形になってしまったので心配したけど、演技後舌をペロリと出す余裕があったので、痛めてはいないかな? それ以外に転倒はなかったのだけど? と思ったら、コールされてから30秒以内に演技開始していないための減点という説と、演技時間2分40秒±10秒をオーバーしてしまったという説があるのだけどどっち? いずれにしてもめずらしいミスではあるけど残念💦

 

プロトコル見ていないのでスピンやステップのレベルや、ジャンプの加点など分からないのだけど、2点減点で101.51点は悪くないでしょう! ネイサン・チェン選手に僅差の2位! 表現力も良かったと思う!

 

ということで動画をドゥゾ♪(っ'ω')っ))

 

B.ESP(HD). Shoma UNO 宇野昌磨 SP - 2017 Grand Prix Final

FSガンバレ(●'д')bファイトです!

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