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【tv】「デトロイト暴動 真実を求めて」

2018-02-04 23:57:38 | tv

【tv】「デトロイト暴動 真実を求めて」

 

 

 

キャスリン・ビグロー監督の映画『デトロイト』(公式サイト)が見たいと思っていたので、たまたまテレビ欄で見かけた番組を録画しておいた。まさに映画の題材となったアルジェ・モーテル事件のことを取材する番組だったので、メモを取りながら鑑賞。要点をTweetしておいたので、残りのメモを追記して記事にしておく。

 

 

キャノン・ハーシーについては、日本語版・英語版ともWikipediaが見つけられなかったのだけど、シルクスクリーンなどの作品を発表しているアーティストらしい。祖父のジョン・ハーシー(Wikipedia)はピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストとしか紹介されなかったけれど、どうやら原爆投下直後の広島を取材したルポ「ヒロシマ」が有名らしい。この祖父がデトロイト暴動を取材した著書The Algiers Motel Incidentをもとに、キャノン・ハーシーが取材するという形の番組。

 

キャノン・ハーシーは社会問題をテーマにした作品を発表しているそうで、現在最も関心があるのが人種問題。そのきっかけとなったのが2014年7月にスタテン島で起きた事件。無許可でタバコを販売していた黒人エリック・ガーナーが白人警官たちに羽交い絞めにされ死亡してしまった事件。これ実際の映像が流れたけれど、地面に押し付けられたガーナーが息が出来ないと叫んでいるのに警官たちは押さえつけたままだった。

 

エリック・ガーナーが白人だったらこの悲劇が起きなかったのかは不明だけど、少なくともキャノン・ハーシーはこの事件の根底にあるのは人種差別だと思ったわけで、そしてそれが彼が祖父が著書に記した"我々もみな共犯者である"という言葉の意味を探ることにつながった。

 

 

 デトロイトについて詳しくはWikipediaで! 

 

 

 

 

 

 Tweetではずっとアンジェ・モーテルって書いちゃってるけど正しくはアルジェ・モーテル! アルジェ・モーテル事件自体のWikipediaは見つけられなかった💦 ちょっと補足しておくと、1967年7月に起きたデトロイト暴動(Wikipedia)時に起きた事件。当時、モーテルには10人の黒人男性と2人の白人女性がおり、うち3人の未成年の黒人男性が射殺され、女性1人が亡くなった事件。

 

この事件の生存者リー・フォーサイス(69 事件当時19)によると、1967年7月26日、モーテルの2階の部屋で仲間といた時、カール・クーパーがふざけてモデルガンを発砲。気づくとモーテルの周囲を警官や兵隊が包囲していた。フォーサイスたちがからかって窓から大声で彼らを煽ると、警官たちが銃撃してきて、やがて突入してきた。フォーサイスは廊下で警官と鉢合わせ、銃を向けられるも不発。階下へ降りるように言われ従うと、カール・クーパーの遺体があった。警官はくたばっていると吐き捨てた。フレッド・テンプル(18)も死亡していた。

 

その後、モーテルにいた黒人たちは廊下の壁に手をついて並ばされた。フォーサイスは警官に別室に呼ばれた。部屋に入ると殴られて悲鳴を上げるマネをするように言われ、そのようにすると警官は不服そうに出ていくように言った。次にオーブリー・ポラード(19)が呼ばれた。彼は反抗的なところがあったので、おそらく言いなりにならなかったのだろう。銃殺された。実際、オーブリーは至近距離から股間を撃たれていた。酷い。

 

 

当時守衛をしていたメルビン・ディスミューカス(74)は、突入後に遅れて入って来たロナルド・オーガスト(当時31)、デイビッド・セナック(当時23)、ロバート・ペイリー(当時30)の3人が特に黒人たちを執拗に攻め立てており、警官たちの中には関わりたくないと去っていった者もいたとのこと。白人女性の服は引きちぎられていたらしい。

 

警官たちは銃を探していたようだけれど見つからず、ディスミューカスがリーダー格のデイビッド・セナックに報告した。彼はデトロイト郊外に在住しており、黒人を敵視していたとのこと。映画はこのディスミューカスの視点で描かれているのかな?

 

ジョン・ハーシーはこの事件に強い関心を持った。この事件こそ人種問題の縮図であると考え、他人事のように書くことが差別であり、我々みなが"共犯者"であり、ここには"社会の罠"があり、善良な市民が持っている差別の毒が関係していると考えた。

 

ちなみに、1964年公民権法(Wikipedia)が成立しており、法律上は人種差別は禁止されている。

 

 

 

 

1967年8月下旬。ダン・オルドリッチ(当時24)は抗議集会を開いた。これには全国の有力黒人活動家も参加したらしい。これ、具体的な人物も紹介されていた気がするけどメモ取れてない💦 ここで行った人民裁判は、もちろん判決に効力はないけれど注目を集めたのだそう。

 

1967年9月の裁判で弁護を担当したノーマン・リピッド(当時31)によると、事件当時の警官は95%が白人で、ブルーカラーの白人家庭に生まれ育ち、警官となって黒人社会を監視するようになるという背景があった。事件当時の3人はデトロイト暴動の恐怖の中、人を撃っているような相手に立ち向かわなければならなかったと語る。確かにこの人の言うとおりなのだと思うし、モーテルにいた彼らの行動は軽はずみで自業自得という側面もあるとは思うけれど、今回の論点は彼らの"恐怖"の根本が人種差別じゃないのかってことだと思うのだけど? この人の上から目線の物言いは好きじゃなかった。そして、至近距離で股間を撃つことが正当防衛なのかな? まぁ、この射殺に至るまでの証言が信用されなかったってことなのでしょうけれど・・・

 

マイク・マッキノンは暴動の2年前に警官になり、デトロイト市警察長官を務めた人物。当時は警官のほとんどが白人で、一緒に組んだ白人警官はニガーと一緒かよと吐き捨て、パトロール中の8時間一言も口をきいてくれなかったと語る。

 

 


 

ジョン・ハーシー・コレクションはイエール大学に保管されているそうで、リーダー格のデイビッド・セナックのインタビューテープは25本中6本。彼は、ずっと警官になりたいと思っていた。YMCAで活動した。警官になって最初の仕事はパトロールで、後に売春の摘発を行うようになった。犯罪現場では普通の人と違う意識を持つ。デトロイト暴動の夜は恐怖で眠れなかった。と語っていた。

 

キャノンはセナックにメールでインタビューを申し込んでいたようで、しばらくたって来た返事は、自分に何か手助けができるか?という質問OK的な記述があった。画面上に英文と日本語訳が表示されたけれど、英語もとても簡潔で難しくなくそのままで理解出来た。そして、とても誠実な印象を受けた。これを受けてキャノン氏は彼に面会を求めている。後述するけれど、結果面会は出来なかった。

 

 

 

 

アルジェ・モーテルで射殺されたオーブリー・ポラードの妹セルマ・ポラード(当時17)の証言。オーブリーが画家を目指していたとは言っていなかったけど、この場合の支援というのは学費等のことかな? 中学時代の恩師キャロル・ホールは、大学に行っていたとしてもオーブリーの人生は変わらなかっただろうし、今もその状況は変わっていないと語る。

 

ジョン・ハーシーは黒人たちは12歳くらいになると白人のおしつけを受け、職を得てまっとうな人生を歩むか、トラブルに巻き込まれて身を持ち崩すかに分かれると考え、これが社会の罠の分岐点であるとしている。

 

 

 

元検事補のテネス・マッキンタイアは南部における人種差別犯罪を訴追すべきだと考え、ワシントンの司法省に連絡し、起訴に至ったらしい。結果はTweetどおり無罪。これについてキャノンが国が負けたわけですねと語ると、マッキンタイアはその通りだと答えている。そして、2014年のファーガソン事件(Wikipedia)を例に挙げ、アメリカは何も変わっていないと語る。この事件では検察官が手心を加えたそうで、司法の欺瞞だと語る。そして、勝とうが負けようが訴追すべきだと語った。力強い。

 

 

特に追記することはないかな。他にも意見は出ていたけれど、特に2つの意見が気になった。白人の意見は字面だけ見ると納得いかない感じがするし、実際語っていた女性も上から目線な気がしなくもなかったけれど、虐め加害者が被害者に言っているという感じは受けなかったということは付け加えておく。

 

 

キャノンはデビッド・セナックからの返事を待っていたが、前述のマイク・マッキノンからセナックと再会したという連絡があり、マッキノンから話を聞きに行った。事件のことを語るのはNGという感じだったとのこと。セナックは現在はデトロイトから車で40分のブライトンの白人住宅街に住み、Facebookでは家族に囲まれた幸せそうな写真を掲載。教会でボランティアをしており、刑務所では服役者のケアをしており、周囲から尊敬を集めている。キャノンのもとには、憎しみをさらに助長するつもりはありませんという返信が来たとのことで、結局会うことはできなかった。

 

このことを受けて、事件の生存者リー・フォーサイスは、関係者はあの事件を背負って生きていくしかなく、真実はどうでもいいと語る。人種、民族にこだわっていたらきりがない。何かのために戦っていたら終わりは来ないとも語る。

 

 

デトロイトに壁があるとは知らなかった。人々を隔てる壁といえばベルリンの壁(Wikipedia)が浮かぶけど、1950年代に築かれたのだとすれば、ベルリンの壁よりも早い。そして、ベルリンの壁は30年も前に崩壊したのに、デトロイトの壁は未だにあるのね・・・

 

ジョン・ハーシーは著書の最終章を"この国の何が間違っているのか?"としたそうで、ロバート・ケネディ暗殺、キング牧師暗殺にも触れているのだそう。アルジェ・モーテル事件の結論はいつか出るかもしれないが、それが正義とは限らないと書かれているとのこと。

 

番組は、何が出来るのか、責任ある答えが見いだせるかと疑問を投げかけて終わった。

 

 

ザックリした感想はTweetどおり。アジア人として差別される側でありながら、先進国である日本人としてアジアの中では優位である部分もある身としては、人種差別をしていないつもりでも、全く皆無ではないだろうと思う。公民権運動までのWhite Only的な差別はなくなったとしても、実質差別はなくなっていないのだろうし、逆に差別されていることを主張し過ぎて逆差別が起きている場合もあるかもしれない。立場や視点、場所などによっても違ってくるだろうし、これは本当に難しい問題。人類が抱える最も難しい問題かもしれない。

 

人種問題については結論が出ないけれど、アルジェ・モーテル事件についてはとても分かりやすく見応えがあった。『デトロイト』を見た人や、興味がある人は見てみたらいいかもしれない。とはいえ、現在再放送の予定はなし💦 

 

NHKドキュメンタリー -デトロイト暴動 真実を求めて

コメント
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