【tv】100分de名著「松本清張SP 点と線」

1回25分×4回で1つの作品を読み解く番組。3月は松本清張スペシャルということで、1回ずつ4作を読み解いていく。講師は原武史氏。第1回目は「点と線」。今回も録画して鑑賞。備忘メモをTweetしておいたので、それに追記する形で記事を残しておく。
ということでドゥゾ♪(っ'ω')っ))
前述したとおり3月は松本清張SPということで、「点と線」「砂の器」「昭和史発掘」「神々の乱心」を読み解く。松本清張については詳しくは
Wikipediaを読んでいただくとして、作品は「点と線」「蒼い描点」「ゼロの焦点」「波の塔」「霧の旗」「砂の器」「黒い福音」「球形の荒野」「Dの複合」「喪失の儀礼」「渡された場面」「かげろう絵図」「小説帝銀事件」短編集「顔」「黒い画集1」「黒い画集2」「張込み(傑作短編集五)」を読んだ。たしかにリアリティがスゴイので、読むとズッシリ。ズ―――(-ω-ll)―――ン
これは「点と線」の導入部という感じかな。2回くらい読んだけど詳細は憶えていない💦 清張作品は見落としてしまいそうな手がかりから紆余曲折して真相に辿り着くという作品が多い。今作は心中だということで捜査が進む中、ベテラン刑事の鳥飼重太郎刑事が食堂車のチケットにお一人様と記載されていたことに疑問を持つ。こいうポイントから心中が殺人事件になっていく感じがおもしろい!
「点と線」(
Wikipedia)は、松本清張初の長編小説。列車トリックを使っているとはいえ、まさかの旅行雑誌に連載されたのね? 東京-博多間を結ぶ特急あさかぜ(
Wikipedia)。1956年開通当時17時間半かかっていたのだそう😲 寝台列車となっているので、寝台があったのでしょうけれど、それにしても17時間半は現代の感覚からすると苦行💦 でも庶民には憧れの存在であり、刑事である三原や鳥飼は乗ることが出来ず、急行で東京博多間を移動。上司からねぎらわれた三原が、二晩寝たので回復したと答えるシーンがあるとのこと。あったかね? 格差を可視化しているとのこと。
これが「点と線」最大のトリック。実は後半にもう一つ時刻表トリックが出てくるのだけど、この4分間に気づいたことが、心中が殺人事件に発展するきっかけなので、「点と線」といえば空白の4分間ということになっている。これ、実際の時刻表どおりだそう。清張の作品にリアリティがあるというのは、こういう部分へのこだわりなのかも。先日再放送されていたビートたけし氏主演のドラマでも、この場面はゾクゾクした。
佐山とお時が心中とされた経緯には、あさかぜに乗り込む2人の姿を目撃した証言があったから。4分間のトリックが解けたからには、目撃したのは偶然ではないのではないかということ。目撃者の内2人の女中は、常連客の安田辰郎に食事に誘われ、見送りを頼まれていたことが判明。安田は佐山の上司である石田芳男と仕事上のつき合いがある人物であり、事件に関与しているのではないかと考える。
ここからは香椎駅周辺でのトリックということになる。ちょっと正確な時間などが分からなくなってしまったのだけど、目撃証言からすると、国鉄香椎駅と西鉄香椎駅の間を、いくら女性連れとはいえ11分かかっているのは不自然であることから、2組の男女がいたのではないかと考える。
「点と線」は清張初の長編小説とはいえ、長い話ではない。とはいえ25分で語りつくすというのは至難の業。ということで、急にまとめた感はいなめない💦 なので補足しておくと、安田辰郎の妻亮子は肺結核を患っており、鎌倉の自宅でほぼ寝たきりの生活。安田は妻の要望もあり東京に別宅を持っている。亮子は病状から夫婦の営みは無理なため、自らお時にお手当を渡し、安田の愛人になってくれるよう依頼する。お時は幼い娘を実家に残して出稼ぎの身で、初めはお金のためにこの申し出を受けたけれど、次第に安田を愛するようになる。亮子はそんなお時がじゃまになってきたのではないか?
前述したとおり、亮子はほぼ寝たきり状態なので、暇な時間に同人誌にエッセイを寄稿している。その中に新婚旅行で香椎の海岸を歩いたという記述があり、疑いは一気に安田と亮子に向かう。また、亮子は時刻表を眺めて空想旅行する趣味があり、かなり詳しいことが判明。なので、今回の計画は亮子が立てたのではないかと考える。
現代でこそ、愛人がいることは不倫ということで、倫理に反することになっているけれど、戦前から戦後のある時期までは、愛人を持つのは男の甲斐性的な考え方が残っていた。そういう世相も描いているのではないかとのこと。
この”旦那の一番役に立つ自分が愛人を殺すよろこび”っていうのは伊集院光氏が言ったこと。結核でほぼ寝たきりで妻として夫に尽くせない自分が、夫の役に立ちながら夫の愛人を殺すことは喜びなんじゃないかっていうのはとってもよく分かる。この時、亮子はとっても幸せだったんだと思う。人を殺しておいて幸せというのは酷い話だし、いわゆる愉快犯とも違うのだけど。清張は女の業を描くのが上手いので、その辺りのことを書きたかったんだろうなと思う。夜の相手が出来ない自分の代わりにと、お時に愛人になってもらいながら、やっぱり嫉妬してしまう業。そして、夫の役に立つためという建前で、その愛人を殺す喜びを感じてしまう業。
清張の作品はとにかく女性の業が怖い💦 女性に対して何かあるのでは?という気がしなくもない。清張は辛い生い立ちで、親戚に冷遇されたり、就職した新聞社でも学歴から差別されたりと、いろいろ辛い思いをしてきた分、鬱屈したものを抱えていると思うので・・・ 中間管理職の苦悩についても、結局安田と妻が勝手にやったことということで、官僚や政治家など本当の"悪"は生き残り、中には出世するものすらある。こういう矛盾を描くことで、強烈なメッセージを放っていたんだと思う。
そして、真相に辿り着いたのは、鳥飼という決してエリートではない刑事が、ほんの小さな手がかりから地道に捜査して、苦悩しながら真相に近づいていく。その姿が清張の生い立ちに重なっているのではないかとのことだった。うん。そうだと思う。だから清張の作品はとても読みごたえがある。時代は古くはあるけれど、リアリティがあるので、その時代までも見えて来る。だから、続けて読むとちょっと疲れる💦 でも、読み始めると引き込まれて読んでしまう。「点と線」読み直してみようと思う。
100分de名著:毎週月曜日 午後10:25~10:50
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