2017.6.17 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』鑑賞@TOHOシネマズ錦糸町
試写会応募したけどハズレ そんなに本数なかったような? 公開館数が少なくてなかなか行けなかったけど、TOHOシネマズ錦糸町でやってるの見つけて行ってきた~
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「ボストンでマンションの便利屋をしているリー・チャンドラーは、兄が亡くなったため、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに帰って来る。弁護士から兄が16歳の甥パトリックの後見人に自分を指定していたこと、リーがマンチェスター・バイ・ザ・シーに住むことが条件であることを聞かされる。しかし、リーにはこの町に住めない理由があった・・・」という話。とっても良かった。ズッシリと重い内容だけど、淡々と多くを語りすぎない描き方で見せるので、心にじんわり沁みてくる。特別大きな事件が起きるわけでもなく、パトリックとの日常が淡々と描かれるだけだけれど、役者たちの演技が上手いのと、回想シーンを交えて主人公の過去が明らかにされ、飽きてしまうことはなく見れた。
監督はケネス・ロナーガンで、脚本も担当している。過去の監督作品も脚本担当作品も未見。毎度のWikipeidaによりますと、2014年9月6日、ケネス・ロナーガンとマット・デイモンが共同で本作の製作に乗り出し、オッド・ロット・エンターテインメントのオーナーであるジジ・プリッツカーが資金調達を行うと報じられた。なお、ロナーガンとデイモンがタッグを組むのは2011年の『マーガレット』以来2度目のことである。とのことで、実は今作マット・デイモン主演で話が進んでいたらしい。でも、これはケイシー・アフレックで正解だと思う!
2014年9月8日にはプロジェクトが本格的に始動した。12月12日、『ボストン・グローブ』が行ったインタビューにおいて、ケイシー・アフレックは「マット・デイモンは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』に出演しない。僕が主演を務める予定なんだ。」と述べた。2015年1月5日には、アフレックの出演が正式に決まった。9日、ミシェル・ウィリアムズが出演することになったと報じられた。2月24日、カイル・チャンドラーが本作に出演することが決まった。3月、キンバリー・スチュワード、ケヴィン・J・ウォルシュ、クリス・ムーア、マット・デイモンの4名が本作に出資するという報道があった。また、プリッツカーが本作の製作から離脱した。本作の主要撮影は2015年3月23日にマサチューセッツ州のマンチェスター・バイ・ザ・シーで始まった。撮影はセイラム、ノース・ショア、ビバリー、グロスターでも行われた。
2016年1月23日、第32回サンダンス映画祭で本作は初めて上映された。アマゾン・スタジオズはその会場で本作の配給権を1000万ドルで購入した。とのことで、評価としては、アメリカ合衆国の『タイム』誌による「Top 10 Everything of 2016」では、本作が第6位に選出されている。賞レースではかなり有名どころでノミネートされているけれど、メインとしては第74回ゴールデングローブ賞、第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞にノミネート、アカデミー賞では助演男優賞にもノミネートされ、それぞれ主演男優賞を受賞し、アカデミー賞ではケネス・ロナーガンが脚本賞を受賞している。全作品を見たわけではないけど、これは納得という気がした。個人的にはミシェル・ウィリアムズに助演女優賞あげたい!
薄暗いボストンのアパートで、主人公であるリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)が水漏れの苦情に対処したり、雪かきしたり、ゴミを整理したりする姿が淡々と映し出される。覇気はないけどいい加減にやっているわけではないし、それなりに誠実に対応しようとはしている様子。でも、お世辞にも愛想がいいとは言えない。トイレの詰まりを直している間、聞こえよがしにリーに気があると電話で友達に話す女性に対してもそっけない態度。まぁ、その気がなければそうだろうとは思うけれど、水漏れするシャワールームの件で、自分がシャワーを浴びてる横で水漏れチェックをするのか?としつこく言う女性に、あんたの裸にはクソ興味もないと無表情で言うのはさすがにまずい。まぁ、この女性最初からケンカ腰で、見ている側もうるさいBBAだなと思っていたので、ちょっと胸がスッとしたのだけど でも、やっぱりクレームが入ったようで、その後上司に注意されていたけれど、まったく反省していない様子。しかし今作やたらとFワードが出て来る。
とにかく覇気がなく、人と関わりたくないという印象なのが気にかかる。一人バーで飲んでいる。全くの引きこもりというわけでもないんだなと思うけれど、隣の女性がチラチラ見ているのも無関心。この女性は積極策に出たようで、わざとリーにグラスをぶつける。ヤダー!ぬれちゃったわー!などという分かりやすいアピールは、リーにも当然伝わっていると思うけれど、彼はOKを繰り返すだけ。その後、女性が自分の名前を名乗っても無反応。女性はあからさまな呆れ顔をする。まぁ、リー側にその気がないのであれば、お酒を掛けられた上にムカつかれても迷惑な話なのだけど、ここは女性に恥をかかせちゃダメということなのでしょうかね。しばらくしすると、リーは向い側で飲む2人の男性が気になる様子。サラリーマンっぽい2人。リーが見ているので、彼らもこちらを見る。するとリーは彼らの元へ行き、何故こちらを見ていたのだと言いがかりをつけて殴りかかる。この時点ではこの行動が理解出来なかったのだけど、後にも同じようなシーンがあり、これはリーが自虐的であるという描写なのでしょうかね。
実は映画は子供の頃の甥っ子パトリック(ベン・オブライエン)と兄のジョー(カイル・チャンドラー)と漁船で釣りをしている回想シーンから始まっている。ものすごく明るいわけではないけれど、少なくともこのシーンのリーは甥っ子をかわいがっているし、冗談も言っている。今のリーとは別人のよう。チラシなどでリーが兄を亡くし、甥っ子の後見人になること、それにより辛い過去に向き合うことは知っていたので、この少年が後の人生に関わってくるのだなということと、リーの現在の状況が辛い体験によるものなのだろうと考える。
今作では、回想シーンがよく出て来るのだけど、それがリーの過去やそれにより現在の状況になっていることなどが説明される形になっている。そのシーンの入り方がとっても自然。例えば、リーが元妻という言葉を発すると、元妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)や家族のシーンが出て来て、それで彼には2人の幼い娘と、生まれたばかりの息子がいたこと、特別裕福ではないけれど4人で幸せに暮らしていたことが分かる。そして、現在の孤独な姿からすると、リーの辛い過去はこの家族が関係しているのだろうと考える。この回想シーンが過去だけでなく、現在の状況も見ている側に推測させる感じは上手いと思ったし好きだった。その分追体験して辛い部分もあったりするし、後に大変なショックを受けることになったりもする。全体的に暗く地味な作品の中において、その出来事がある意味山場となるので、その見せ方は上手いと思う。
話を戻す。ある日いつものように仕事をしていると電話が入る。いい知らせではなさそう。兄が死んでしまうことは知っていたので、これは兄の身に何かあったのなのだなと思う。予備知識がなくてもハッキリしたセリフがないのに、それと分かるのが上手い。リーは自分の仕事を引き継いだこと、しばらく休むことなどを連絡しつつ車で兄の病院へ向かう。リーが車を走らせるシーンが結構続いた気がするけど、これはリーと故郷であるマンチェスター・バイ・ザ・シーとの距離感のようなものを表しているのかな?
病院に着くと看護婦と兄の親友が待っており、兄が1時間前に亡くなったことが告げられる。この親友がとってもいい人で、親友の死を悲しみながらもリーのことを気遣って、細かな手配などを請け負ってくれたりする。彼がそこまでしてくれるのは兄とのよい関係が築けていたからで、となると兄も良い人だったのでしょう。この親友は後にキーパーソンとなる。でも、キーパーソンなのに公式サイトにもWikipediaにも全くキャスト情報がない なので、役名も俳優さんも不明。なかなか良い演技していたと思うんだけど何故だろう?
主治医べサニー先生は現在産休中で、この先生のことについてリーが感謝の気持ちを述べると、例によって回想シーンになる。アジア系の女医べサニー先生(Ruibo Qian)から病状について説明を受けている。病室には兄、リー、父親、そして兄嫁エレン(グレッチェン・モル)がいる。どうやら兄の病気は心臓病で発作を繰り返すらしい。この病気でも60年生きられる場合もあると女医が言うと、兄はこれから60年なのかトータル60年なのか質問する。女医は静かにトータルだと答える。兄の年齢は不明だけど、実質余命宣告。そしてそれはそんなに長くはない。この感じも上手い。
エレンが急に取り乱して家に帰ってしまうけれど、彼女がキレた理由がよく分からなかった。まぁ、受け止めきれなかったということなのでしょう。後にエレンはあられもない姿で泥酔している姿をリーやパトリックに目撃されており、そのことがリーが現在も彼女に不信感を抱かせているらしい。このシーンは後から挿入されるのだけど、リーは自分の元妻には兄の死を知らせて欲しいと言っているのに、甥っ子の母親であるエレンには連絡不要と指示していることからもわだかまりがあることが分かる。そういうことがいちいち説明的ではないのに伝わってくる。
葬儀のことなど一通り説明を受け、後のことを兄の親友に頼んで甥っ子パトリックを迎えに行くリー。パトリック(ルーカス・ヘッジズ)はアイスホッケーチームに加わっており、その練習場に向かう。リンクサイドに現れたリーの姿を見たコーチ(テイト・ドノヴァン)が「あれがリー・チャンドラー」かと言うのが印象的。いい方向の言い方ではない。リーの過去に一体何があったのか?
パトリックは思いのほか淡々と父親の死を受け止めていたように見えた。兄の病気が病気だけに覚悟ができていた部分もあったのかもしれない。ただ、父親の遺体と対面するかという問いにハッキリ答えなかったりして、リーが勘違いしてちょっとおもしろい場面になったりする。今作はコメディーではないし、リーが故郷へ帰って来た経緯や、彼の背負っているものを考えると、笑える感じではないのだけど、例えばパトリックとのやり取りなどが微笑ましいというか、居心地の悪い部分を笑っちゃうというか、不思議なユーモアがある。上手く言えないけど、クスッと笑えるところまではいかないけど、ニヤリとしちゃうというか。でも、その感じが後に見ている側を救うことになる。
ストーリー自体はそんなに進展のある作品ではなく、しかもテンポよく進むわけでもない。2時間超と結構長い。自分的には結構なくてもいいかなと思うシーンやエピソードもあった。例えば、父親が亡くなったその日に恋人と友達が家に来てくれるのはありかなとは思うし、恋人シルヴィー(カーラ・ヘイワード)が泊まっていくというのも、パトリックが高校生じゃなければありかなとは思う。でも、シルヴィーが泊まった理由は彼を慰める部分もあるとは思うけれど、どう考えてもエッチが目的っぽい。事実、彼女が泊まる許可を求められたリーが避妊しろと言うべきか?と言っているし、それに対してパトリックはニヤリとしている。
しかもパトリックは二股を掛けている。友人たちとバンドを組んでいて、ボーカルであり稽古場提供者のサンディ(アンナ・バリシニコフ)。シルヴィーとは既に経験済みだけれど、サンディとはまだなようで、彼女の母親の目を盗んでなんとかエッチしようと頑張る描写が頻繁に出てくる。笑える場面ではあるけれど、前述の友人や恋人はまだしも、二股の描写とか必要ない気もする。
でも、このパトリックの友人たちやシルヴィーとの翌朝の会話とか、サンディの家に送り迎えする時の彼女の母親(ヘザー・バーンズ)との感じとかで、リーのコミュ障ぶりを見せてクスリと笑える感じにすることで、息抜きしているのかな?と思ったりもする。このサンディの母親はリーを食事に誘ったりと気がある風だったのに、サンディとエッチするため時間稼ぎしてくれと言われたリーと、全く会話が成り立たず娘に助けを求めに行っちゃうシーンはちょっと笑えた。まぁ全体的に要らないと言えば要らない気もするけれど。
うーん。前述したとおり今作の重要なポイントであるリーの過去は思ったよりも早く種明かしされる。おそらく、そのことにどう彼が向き合い、どう対処したかということが描きたいわけなので、種明かしとしてはそのタイミングなんだろうなと思うのだけど、自分としては衝撃が大きかったので、感想を書く際のクライマックスとしたい。なので、ちょこっと順番を変えて種明かしはもう少し後にしようと思う。まぁでも、既に順番を変えていたりするのだけど(o´ェ`o)ゞ
リーはパトリックと共に弁護士を訪ねる。兄ジョーの遺言を聞くため。兄はリーをパトリックの後見人に指定していた。リーは自分にはできないと断るけれど、ジョーは余命を知ってからきちんと計画していたようで、リーが後見人としてマンチェスター・バイ・ザ・シーに引っ越して来る費用まで用意してあった。実はここで弁護士のリーの体験は想像を絶するものだという発言をきっかけに、リーの"過去"の回想シーンが入ってくる。なので、何故兄がリーをこの町に戻そうとしたのかと考えるととても切ない。
まだ冬で土を掘り返すのはコストがかかるため、温かくなるまで兄の埋葬は行わない。兄の遺体は冷凍保存されることになるけど、たしかこれも兄の指示で費用も用意されていたはず。でも、リーとパトリックの意見が合わない。パトリックは父親を冷凍したくないと言う。その気持ちは分かるけれど、現実的に無理だと説明するリー。この言い争い自体はまた独特のユーモアで描かれているけれど、後に冷凍肉を見てパトリックがパニックを起こし、父を冷凍したくないと泣くシーンがある。結構ドライに父の死を受け止めていたかに見えたパトリックだけれど、ここで思いが爆発した感じ。このシーンのルーカス・ヘッジズの演技は良かった。
お葬式自体は行われて、リーの元妻ランディも列席する。彼女には新しいパートナーがおり妊娠している。この時点ではリーの"過去"はランディとの離婚に関係ありだと考えていて、リーは彼女に未練があるのだろうと思っていたので、彼女にパートナーがいること、そして新たな命を宿していることで、もう元には戻れないんだなと見ている側は考える。この感じも上手いと思った。意図的にミスリードさせたのかは不明だけど、事実はもっと重いものだった
さて、リーとしてはパトリックの後見人になるのは無理だと考えているけれど、パトリックの保護者としては全面放棄してしまうわけにはいかないわけで、なんとかよい道はないかと模索する。リーとしてはパトリックとボストンで暮らすことを考えているけれど、パトリックとしてはこの町が現在の自分の世界だから離れたくないと言う。兄ジョーの遺言としてはリーがマンチェスター・バイ・ザ・シーに住むことを希望しているわけだから、パトリックとしては理不尽に思う部分もある。このやり取りがされている時点で、見ている側はリーがこの土地に住めない理由を知っているので、ちょっとパトリックの態度にイラッとするけれど、彼の言い分も分かる。
前述したとおりリーはパトリックの母親に嫌悪感を持っていて、兄の死を知った彼女からの電話に驚いて切ってしまったりしている。葬儀にも呼んでいない。でも、パトリックは密かにメールのやり取りをしていた。どんな母親でも彼にとっては母親だからね。そして、ある日母親から家に来て欲しいと連絡が入る。ハッキリした描写やセリフがあったか忘れてしまったけれど、アルコール依存症になってしまったのかな? でも、現在はそれを克服し、婚約者(マシュー・ブロデリック)と暮らしている。リーは送迎しただけで食事会には参加しない。婚約者は結構裕福な感じで、インテリアなどもシャレているし、母親の身なりも見違えるよう。母親としてはパトリックと共に暮らしたいようだけれど、食事会はなんとなくぎくしゃく。後に婚約者から遠回しな表現ではあるけれど、ハッキリとそれと分かる拒絶のメールが届く。ちょっと酷いなとも思うけれど、連れ子との同居を誰もがすんなりと受け入れるわけでもないか・・・ ということで、パトリックが地元に残れる可能性は、リーがここで暮らすという選択をする以外になくなる。
一応、リーとしてもマンチェスター・バイ・ザ・シーで仕事を探したりもしている。ボスに仕事がないか聞いてみるよと言ってくれる男性もいるけど、事務員らしい女性が自分は反対だと言ったりする。これはやっぱりリーの過去が理由なのでしょう。彼女のことも酷い・・(ll゚∀゚)と思ったりもするけれど、分からなくもない。ということで八方塞がり。
さて、いよいよリーの過去について書こうかな。どの位置に挿入されていたのか忘れてしまったのだけど、リーの家で兄や兄の親友を含む10人くらいの男たちが夜中までビリヤードをしながら、お酒を飲んで騒いでいるところをランディに叱られるシーンがある。さりげなく時計が映ると深夜2時。小さい子供がいる家でこれはちょっと非常識。Fワード連発で怒るランディだけど、男たちを帰した後のリーのことは冗談を言ったりして受け入れていた。見ている時はこのシーンの意味が分からなかったのだけど、後にこれが全ての原因であり、兄が自分の死後もリーを立ち直らせようとしていたり、兄の親友がリーに対して親身になってくれた理由の一端もここにあるのだと分かる。分かった時にはショックだったし上手いと思った。
前述したとおり、弁護士の一言でリーの"過去"が明らかになる。回想シーンは夜中リーが家を出てどこかに向かうところから始まる。夜道で誰かに襲われるのか?と思うけれど、そんなこともなくコンビニ的なお店に辿り着く。カッとなりやすいリーが店員ともめて暴力沙汰?とかも思うけれど、普通に買物をして店を出る。店までは結構な距離がある。雪道を帰るリーの前方が明るくなり、サイレンの音が聞こえる。慌てて走り出すリー。ここで見ている側もリーの過去を理解する。リーは火事で子供たちを亡くしたのだった。家に辿り着くと野次馬が集まっており、子供が中にいると燃える家の中に入ろうとするランディを消防隊が必死に抑えている。呆然とするリー。場面変わって点滴をされて救急車で搬送されるランディの手を取ろうとするリー。ランディはそれを拒絶する。リーを残して去る救急車。何故ランディはこんな態度を取るのか?
警察署で事情聴取を受けるリー。仲間たちと騒いでランディに叱られたあの夜は、お酒も飲んでいたしコカインもやっていた。皆が帰った後も目が冴えて眠れなかったのでお酒を買いに出かけた。暖房を入れるとランディが頭痛がするので使えないため、暖炉に火を焚いていた。ランディは1階の寝室で眠っており、子供たちは2階の子供部屋で寝ていた。コンビニに向かう途中で暖炉のストッパー?(字幕に名前が出ていたけど失念 薪が転がり出ないストッパー的なものと理解)を立て忘れた気がしたけれど、そのまま店に向かった。店までの往復は20分程度。要するに、リーの不注意で彼は3人の子供を失ってしまったということ。警官たちはリーの話を聞き納得。過失はあるけれど、誰も君を責めないと言い、帰宅を許可する。無表情のリー。部屋を出てしばし呆然としていたけれど、警官の腰から銃を奪い、自分の頭に銃口を向ける! 結局、取り押さえられて未遂に終わる。リーの過去が分かってからずっと泣いてたけど、このシーンで涙腺決壊。これは辛過ぎる。これはここにはいられないわ それを求めるのは酷だよ。
同じく回想シーンでひっそりと町を出ていくリーを見送る兄とパトリック。落ち着いたら必ず連絡するように言う兄。リーはボストンでマンションの便利屋の職を得て、半地下の部屋に住むことになる。兄は殺風景なその部屋に愕然とし、家具を買いに行こうと言うけど、家具はあるからいいと断るリー。家具と言っても簡単なテーブルと簡易ベッドのみ。これは家具じゃないという兄。確かにまるで牢屋。リーはあえてそうしたかったのだろうけれど、兄は強引にリーを連れて買い物に行き、ソファなどの家具を買い、部屋を整えてくれる。兄が必死に弟を救おうとしている姿に感動 兄としても罪悪感はあったのだと思う。あの夜の責任の一端は自分たちにもあるのに、弟にのみとんでもない重荷を背負わせてしまったのだから。もちろん罪悪感だけでしていることではなく、弟を救いたいと思っているのだと思うけれど。
ある日、リーは町で偶然ランディと再会する。軽く挨拶して去ろうとするリーを呼び止めるランディ。今度ランチでもしない? 戸惑うリーに対し感情が噴き出すランディ。あの頃、あなたを責め続けてごめんなさい。あの時、私の心は壊れたの。あなたもそうでしょう? イヤ、俺は・・・ 恨んでいないし、あなたを愛してる。その一言で救われた。ランチは? 無理だ・・・ ランディがリーを責めてしまったことは誰も責められない。彼女だって自分を責めただろうし、苦しんだと思う。でも、ランディはリーを責められただけましだったかもしれない。リーは自分しか責めることが出来ず今も責め続けている。そう思ったら泣いた~。・゚・(ノД`)・゚・。 このシーンがチラシの場面。チラシを見ていた時はこんなに重く切ないシーンだとは思わなかった。ランディは号泣しているけど、リーは泣きそうになりながらも泣いていなかったと思う。それがまた切ない このシーンの2人の演技がスゴイ! 特にミシェル・ウィリアムズが素晴らしい
ランディと別れた後、リーはバーで飲んでいる。隣の客と口論になり、リーの方から殴りかかる。そして逆にボコボコにされる。これは 心が痛い。止めに入った兄の親友が自宅に連れ帰り、妻に手当をしてもらう。そして、リーは号泣する。見ている側も泣いている。゚(PД`q。)゚。
家に帰ったリーは食事をしようと鍋を温め始める。そのうち寝てしまったようで、夢を見る。私たち燃えてるの?という娘の声が聞こえて我に返る。家の中は煙が充満している。幸い火事にはならなかった。そして、リーはある決断をする。切ない
リーはパトリックに今後の話をする。パトリックは高校を卒業するまで兄の親友の家で暮らすことになる。彼らの養子になったんだっけ? 親友がサインしているシーンがあったような? これでパトリックはこの町で過ごせる。ここで一緒に暮らせないかと問うパトリックに、辛過ぎて乗り越えられないと答えるリーが切ない そうだよね。無理なものは無理。再生というにはリーの過去は重すぎる。リーが眠る寝室の3つの写真立てをパトリックが見たのはこの後だったっけ? 写真自体は映されないけれど、それが誰の写真であるかは見ている側にも分かる。そしてパトリックがリーがこの町で暮らせない理由を悟ったのも分かる。写真を見せないことを含めてこの見せ方は好き。
温かくなり兄の遺体を埋葬する。埋葬式にはランディもパートナーと来ている。たしか兄のジョーはずっとランディと連絡を取っていたんだよね。この2人の関係も切ない
森の中を2人で歩くリーとパトリック。落ちていたボールを拾いパスしあいながら歩く。これは2人の気持ちがやっと通じたっていう描写なのかな? するとリーはボストンで2つ部屋がある家を借りると言う。人が泊まれるように。パトリックに来て欲しいということ。この感じも良かった。リーの傷が癒えることはきっとない。でも、少しだけ傷が小さくなったのかなとは思う。ラスト、2人であの漁船に乗るシーンで終了。余韻のあるいい終わり方。
キャストは全員良かった。パトリックのルーカス・ヘッジズは二股かけたり実はチャラいキャラを、嫌なヤツにしてしまうことなく、繊細さも感じさせて良かった。兄のカイル・チャンドラーは、兄が弟を思う気持ちが伝わって来て切なかった。ランディのミシェル・ウィリアムズが素晴らしい! 少ない出演シーンで印象を残す。特に良かったのはやっぱりリーに思いのたけを伝えるシーン。ランディも苦しんでいたこと、そして今リーを救うとしていることが伝わって来る。出演作はかなり見ているけど、これは自分が見た中で最高の演技だったかも。
リーのケイシー・アフレック良かった! アカデミー賞主演男優賞納得の演技。もともと無表情でもごもご喋るタイプでだけど、それがこの役にピッタリ。前述したとおりマット・デイモンが主演する予定だったようだけれど、これはケイシーで良かったと思う。マット・デイモンだと品行方正過ぎる気がする。ホメてます! ホントに見ていてずっと切なかった でも少しユーモラスな感じも良かった。
メインとなる季節が冬というだけでなく、春になっても曇天で全体的にどんより暗い画面。リーは終始無表情。重い話で、一応パトリックの問題について結論は出るけど、スッキリ解決したわけじゃない。兄はパトリックのことだけでなく、弟も救おうとしていたけれど、結局救うことはできなかった。でも、それが逆に良かった。再生ってそんなに簡単じゃない。その傷が大きければ大きいほど、癒すのは時間がかかるし、きっと完全に消えることはない。痛みを抱えたまま生きていくしかない。そして、乗り越えられないことを恥じることはない。そんなことを考えていたら泣けた。じわじわと沁みる作品だった。
公開から時間が経ってから見て、さらに感想書くのも時間がかかったので、ほぼ上映終了しているかな? シネスイッチ銀座では上映中。じっくりと映画を見たい方。人間ドラマを見たい方オススメ。ルーカス・ヘッジズ好きな方是非。ミシェル・ウィリアムズ、ケイシー・アフレック好きな方必見です!
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』Official site