まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

愛憎の流刑地

2006-10-24 | イギリス、アイルランド映画
 最近、肌がますますキレイになったね!と周りからよく言われます。秘訣は?特別な何か使ってるの?という問いに、私は微笑みながら答えるのだった。
『洗顔だけ♪』
 って、ちょっと前のバー○ルのCMかよ!洗顔だけだなんて、でも大嘘です。めちゃくちゃ努力してます。鬼のようにスキンケアに命を賭けてます。
 努力の結果が出ると、嬉しくてますます血道をあげて頑張る私ですが、よく考えてみると、自己満足もいいところ。美肌になったところで、素敵な幸運や利益など、何もないし。返って、肌のためにアレもしなきゃコレはダメだと、強迫観念&自己制約ばかり。美肌は、喜びよりも心労と虚しさだけくれるのでした...
 肌よりも、心を磨かなきゃなあ...
 
 「山羊座のもとに」
 アルフレッド・ヒッチコック監督の作品は、だいたい制覇したと思ってましたが、この日本劇場未公開作は、初めて観ました。
 「白い恐怖」「汚名」など、ヒッチコック監督が最も愛した女優、イングリッド・バーグマン主演。
 ヒッチコック&バーグマン、この日本でも人気の高い二人のコンビ作が、なぜ我が国では公開されなかったのかな?と、不思議に思ってましたが...
 物語は、開拓時代のオーストラリアを舞台にした、ある夫婦の愛憎ドラマ。ヒッチコックといえば、サスペンスの代名詞のような監督ですが、これはちょっと毛色の違う作風です。
 イギリス貴族でオーストラリア総督の従弟である若者が、前科者の成金男と知り合い、彼の邸宅へ招かれる。そこで出会った成金男の美しい妻の、異常な様子の理由は?そして、彼女と夫との間にある、恐ろしい秘密とは?
 従来の作品と比べると、かなり異色。ヒッチコックの作品中、最も興行的に失敗した、彼自身も認めた失敗作らしいです。確かに、暗いドラマは展開も緩慢で、ちょっと退屈ですが、悪評ほどヒドい出来ではないと思います。ヒッチコックらしい、サスペンスフルな演出も、随所に見られるし。ミイラの首が、キモい。

 昔は、イギリスで重罪を犯した者を送る流刑地でもあったオーストラリア。前科と卑しい身分という強烈なコンプレックスのせいで、人間性が歪んでしまっている成金男の、妻への不器用な愛が、悲しい。なので、悩める妻を救う貴族の若者が、本来ならヒーローに見えるはずなのに、何だか哀れな成金男から妻を奪う間男に見える。この若者、すげー良い奴なんだけどね。
 いちばん強烈なキャラは、成金男の屋敷の家政婦。すげー陰険&姑息な女!ヒロインへの意地悪&イヤガラセも、韓国ドラマの悪女みたいな短絡的で大ざっぱなものじゃなく、極めて遠まわしで慇懃無礼でコソコソと、しかも狡猾。ご主人さまへ忠義づらして、ヒロインを貶め陥れる、あることないこと的讒言も、陰湿で憎々しくて、巧妙。こいつのせいで、ますます夫婦の間に暗雲と亀裂が。キー!ムカつく!けど、この女の出てくるシーンが、いちばん面白いだよなあ。「レベッカ」のデンバース夫人を、卑小にした感じのキャラです。ちょっとヴィヴィアン・リー似?
 夫との間にある秘密の重圧と、馴染めない異国生活のせいでアル中&ノイローゼ状態なヒロイン、イングリッド・バーグマンが、美しい熱演。鬼気迫る精神不安定演技と、清麗な美貌に魅了されます。まさに大女優の魅惑です。
 バーグマンみたいな、清らかだけど華やかで、高貴だけど柔らかな、たおやかな女らしい美しさ&圧倒的なスケールのある女優、今のハリウッドにはいませんよねえ。JRとかGPなんて、安い&小さい。まさに、不世出の大女優バーグマンです。
 当時のオーストラリアにおける、階級社会の実態も興味深かったです。オーストラリアなのに、カンガルーもコアラもワラビーも、出てこなかったのが残念。
 原題“Under Capricorn”のカプリコーンとは、ここでは山羊座のことではなく、南回帰線を意味するそうです。
 
コメント
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