まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

もののけ美よ永遠に

2006-11-23 | フランス、ベルギー映画
 涙さえしぐれに添へてふるさとはもみぢの色も濃さぞまされる
 今日は一日、冷たい時雨でした。
 晩秋初冬の、わびしい愁いが、そぞろに悲哀をそそります。袖が濡れたのは、しぐれのせい?それとも、涙のせい?それさえも分からないまま、今日が終わろうとしています。
 
 お松の独りフランス映画祭④
 「愛のはじまり」
 私の女神さまイザベル・アジャーニが、長い冬眠?後、沈黙を破って銀幕に復帰した、記念すべき作品。飢餓感を耐え忍んでいたファンにとっては、まさに砂漠にオアシス、な映画になるはずだったのですが...
 刑務所を出たばかりのヒロインが、行く当てもなく辿り着いたニースで、初老の男と出会い...
 うう~ん。ぶっちゃけ、つまんない映画です。話が、ほとんどない。イザベル扮する謎の女が、フラフラさすらう姿を追ってるだけ。ヒロインも、彼女に絡む男たちも、わけがわからない。いったい、何が言いたい映画だったのでしょうか。 
 同じ長い冬眠後のカムバック作&女流監督作でも、「可愛いだけじゃダメかしら」は、とても愉快なコメディだったけど、これは...イザベルのファン以外には、かなりキツいかも。退屈で緩慢なので、眠気をこらえずに最後まで観ることはできません。
 でも。イザベルは、やっぱ驚異の“もののけ女優”です。
    
 当時は46、7歳。とてもじゃないけど、そうは見えません。
 イザベルは、美人というより、可愛い顔だよなあ。可愛いといっても、おキャメやブリ公、上戸アヤとか倖田クミみたいな、親しみやすいチープ系とは違いますが。そのシワひとつない白い肌は、まさに魔物的美しさ。いったい、どーやって美貌と若さを保ってるのでしょうか。その秘訣を知るのは、何だか怖いような...
 いくら若く見えるといっても、さすがに弾けるようなピチピチ感はない。体つきも、ちょっと崩れてはいるけど、翳りと深みのある美しさに魅入ってしまいます。 劇中、ずっと黒ずくめのイザベル。やっぱ彼女には、ミステリアスな黒が似合う。一回だけ、鮮やかな真紅のドレス姿も見せてくれます。
 ウィノナ・ライダーも真っ青な万引きや、いきなり海辺で踊りだすシーンに、唖然。完全に危ない人です。でもまあ、誰からも好感&共感される等身大な役など、彼女に似合わないし、演じてほしくない。なので今回は、ヘンな女の役だけど、従来の彼女に比べたら、かなりおとなしいので、ちょっと拍子抜け。
 70年代に「アデルの恋の物語」80年代に「カミーユ・クローデル」90年代に「王妃マルゴ」と、世代ごとに代表作を放ってきたイザベル。新世紀にも、また大輪の花を咲かせてほしい。花や果物は、散る間際や腐る寸前が、いちばん美しく美味しいといいます。五十路を迎えた、今のイザベルにしかできない役も、きっとあるはず。
 確かに彼女は、その美貌も演技も、かなり特殊なので、使いにくいと思う。どんな役でも演じられる小器用な女優じゃないし。それに、天才特有の気まぐれ&感覚のズレというか、素晴らしい名作に出たい!とか、名演出家と仕事したい!とは全然思ってなさそうで、計算よりもフィーリングで出演作を選んでる、しかもそのフィーリングってのが、かなり???(この「愛のはじまり」や「ポゼッション」など、良い例)。さらに、仕事にも滅多に意欲的にならない怠け者女優なので、ほんとファン泣かせです。
 「ボン・ヴォヤージュ」後、再び習癖?の冬眠に入ってしまっているイザベル。寂しいけど、でも...
 かつて一世を風靡した大女優が、つまんない映画で、つまんない女優の脇役に甘んじている姿って、よく見るけど何だか悲しい。イザベルには、そんなことになってほしくないなあ。年老いた女優だから、仕方ないだろ!なキャリアをミミッチく続けられるよりも、いっそこのまま、ほんとに引退して“幻の女優”“伝説のスター”化してくれたほうが、ファンとしては望ましいかも、なんて思ってしまいます。
 でもホント、若い映画ファンには、イザベルの映画を観てほしいなあ。彼女の美貌と演技力が、いかに類まれで壮絶かを知ってほしい。今の人気女優たちが、さぞやフツーに見えることでしょう。
 そーいえば。イザベルがダニエル・デイ・ルイスとの間に儲けた息子は、さぞや美しい少年に育ってるだろうなあ。イザベル・アジャーニ&ダニエル・デイ・ルイスが両親だなんて、映画界最強のサラブレットなのでは。
 
 
コメント (4)
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