エミー賞を受賞したドラマ「ノーマル・ハート」を、やっと観ることができました~
80年代初頭のアメリカ。フリーライターのネッドは、同じゲイの友人たちが次々と死に至る謎の病気の蔓延と、同性愛者への差別偏見を訴える活動を始める。そんな中、ネッドは雑誌記者のフェリックスと出会い、恋に落ちるが…
いや~。評判通りの佳作でした!冷血人間の私が、目頭を熱くしてしまった物語も場面も演技も、衝撃的で感動的でした。
エイズ…突然 人類に襲いかかってきた、恐ろしい災い。発症し亡くなるのは同性愛者がほとんどだったことから、ゲイの病気と思い込まれていました。かくゆう私も、小さい頃はそんな世間一般の先入観や偏見を、当然のように受け止めてたし。このドラマを観て怖いな~と戦慄したのは、もちろん死の病であるHIVの恐怖にもですが 同性愛者じゃない私らには関係ない、という無知・無関心の残酷さと罪深さにです。このドラマでも、エイズが蔓延して大変なことになってるのに、なかなか動いてくれない政府の冷淡さには、エイズはゲイを根絶するための政府の陰謀!という説を信じてしまいそうに。過激で暴力的なゲイへの差別偏見は、何だか狂気的でもあって。自分たちとは違う!普通なのは正しいのは自分たち!と、価値観や嗜好が異なる人たちを躍起になって排除しようとする人たちのほうが、いつになっても圧倒的に多い世の中なんですよね…でも、それも決して理解できないことじゃない、という事実も私を暗澹とさせます。とにかく、病気にしてもテロにしても、無知無関心でいてはいけないと痛感。
死に至るまでの精神的肉体的苦悩・苦痛が、リアルにシビアに描かれていています。目を覆いたくなるような悲痛なシーンもあって、神さまは人間に何て非道い試練を与えるんだろう…と、胸が苦しくなってしまいました。男同士が自由に愛し合うことは、罰を与えられるほど罪深いことなのでしょうか。確かに、あまりにも無軌道で放埓、無節操なセックスライフは、神をも畏れぬ人間の傲慢さのひとつなのかも、とは思いましたが。死んでいくのが若くて美しい男たち、というのが無残。
HIV患者への無慈悲すぎる対応も、悲惨すぎて神も仏もありません。飛行機搭乗拒否とか(でも、あんな状態で飛行機に乗せようとするのも???でしたが…)死後の臨床検査も拒否、ゴミのように袋に入れられて持ち帰りさせる病院とか、にわかには信じがたい非情さ。自分の愛する人が同じ目にあったら、とは思えない人が多いから、世の中いまだに醜い酷い差別がなくならないんですね。
エイズ啓蒙運動に身を投じるネッドと仲間たちの葛藤や対立は、どっちの言い分も立場も解かるので、ゲイ同士をも争わせてしまう社会の複雑さ、冷酷さに絶望せずにはいられません。何も隠さず恐れず、どんどん前へ出て闘おうとするネッドと、家族や職場のことを考えて慎重なりたい他のメンバーと。カミングアウトって、そんな簡単なことじゃないですよね。それに、ネッドみたいに強い人ばかりじゃない。コソコソしてるからダメなんだ!という彼の姿勢は過激で思慮に欠けてるのか。なるべく反感を買わぬよう、社会におもねるようにして保身も重視する他のメンバーは、臆病で卑屈なのか。誇り高く生きるためには勇気が必要、でも社会を生きるためには妥協も打算も不可欠…自分に恥じないように生きることって、難しい…
深刻な社会派ドラマでもあるけど、私は美しいラブストーリーの部分に深い感銘を受けました。
私が腐りきった腐、というのも感動の大きな要因ですが。とにかくネッドとフェリックスの愛が、普段はゴビ砂漠な私の心に切ない雨を降らせてくれました。過酷な運命と対峙する二人ですが、その苦痛と苦悩さえ強い深い愛の証のようで、羨ましくもなりました。私などこの先、重い病にかかることもなく平和に健康に長寿をまっとうするだろうけど、二人のような愛にめぐりあうこともない。あんな風に誰かに愛され誰かを愛することができるのなら、命を引き換えにしてもいいとさえ思ってしまいました。もう二度と彼のような人とは出会えない、これ以上誰かを愛せない、と分かっているからこそ、二人の愛が悲しく美しかった。愛なんかない夫婦が末永く添い遂げてしまうのに、あれほど愛し合ってた二人が引き裂かれてしまうなんて…
発症するまでの二人が、本当に幸せそうなんですよ。だからこそ、残酷すぎる運命に涙。二人の恋愛は、男同士というだけで、フツーのラブラブなカップルと何ら変わりはない。セックスシーンも、ただ単に性欲を満たし合ってるのではなく、文字通りのメイクラブ、愛の交歓って感じなんです。フェリックスに一目惚れしたネッドが、思わず真顔で『キュートだね』と言うシーンとか、早朝の埠頭でネッドがフェリックスにプロポーズするシーンとか、かなり胸キュンでした。幸せの密度が濃かっただけ、二人に襲いかかる運命が痛ましくて…病魔に蝕まれたフェリックスを決して見捨てず、献身的に支えるネッドの無償の愛が、崇高すぎて。二人の別れのシーンは悲しすぎるけど、誰かを愛しきったという幸福にも満ちていたようで、私はやはり羨望を覚えてしまいました。
俳優たちの見事なアンサンブル演技は、まさに圧倒的で感動的!もうね、ちょっと変わった役したぐらいで演技派気取りな日本の俳優女優には、絶対できない果敢すぎるパフォーマンスなのです。ハリウッドのスターって、スゴいわ~。すごいギャラもらってるだけの仕事しますわ。
ネッド役は、「アベンジャーズ」シリーズでもお馴染み、「フォックスキャッチャー」ではオスカーにノミネートされたのも記憶に新しいマーク・ラファロ。濃くて男くさいけど、すごく優しそう。人柄のよさが全身から滲み出てます。圧巻の大熱演でしたが、フェリックスとの別れのシーンの、あの泣き顔には胸を本当に衝かれました。
フェリックス役は、TVドラマ「ホワイトカラー」で人気のイケメン、マット・ボマー。私生活でもゲイであることをカミングアウトしているマットが、これまた渾身の大熱演。ルックスだけじゃなく、果敢な役者魂も備えていることを証明しています。やせ衰え、どんどん崩壊していく彼の美しい顔と肉体が、とにかく凄絶で驚嘆。役作り、大変だったことでしょう。マーク・ラファロとのラブシーンは、とにかく大胆で甘美。それにしても二人とも、すごい脱ぎっぷりの良さでした。ネッドの元軍人のゲイ友ブルース役、テイラー・キッチュのイケメンぶりも特筆に値するでしょう。ブロンドの髪とシャープな顔立ち、ゴリマッチョ肉体美が素敵でした。
車椅子の女医エマ役は、大物女優ジュリア・ロバーツ。
プリティ・ウーマンも遠い昔、すっかりBBAになったジュリロバさんですが、こういう男なんか屁とも思ってない、ギスギスしたヒステリーおばさん役が、すごく似合う女優になりましたね。「8月の家族たち」もそうでしたが、彼女の激怒演技って大迫力で超怖い。さぞや共演者やスタッフを戦々恐々とさせてるんだろうな
↑ハリウッドのイケメンの底力を見せつけられました!マークの新作“Spotlight”も社会派の問題作みたいです。マットはもうすぐ「マジック・マイク」続編が日本公開。クリス・プラットやイ・ビョンホン共演の“The Magnificent Seven”も楽しみ。テイラーは「トゥルー・ディテクティブ」のシーズン2で、コリン・ファレルと共演中!いい男たち、いい仕事してます
80年代初頭のアメリカ。フリーライターのネッドは、同じゲイの友人たちが次々と死に至る謎の病気の蔓延と、同性愛者への差別偏見を訴える活動を始める。そんな中、ネッドは雑誌記者のフェリックスと出会い、恋に落ちるが…
いや~。評判通りの佳作でした!冷血人間の私が、目頭を熱くしてしまった物語も場面も演技も、衝撃的で感動的でした。
エイズ…突然 人類に襲いかかってきた、恐ろしい災い。発症し亡くなるのは同性愛者がほとんどだったことから、ゲイの病気と思い込まれていました。かくゆう私も、小さい頃はそんな世間一般の先入観や偏見を、当然のように受け止めてたし。このドラマを観て怖いな~と戦慄したのは、もちろん死の病であるHIVの恐怖にもですが 同性愛者じゃない私らには関係ない、という無知・無関心の残酷さと罪深さにです。このドラマでも、エイズが蔓延して大変なことになってるのに、なかなか動いてくれない政府の冷淡さには、エイズはゲイを根絶するための政府の陰謀!という説を信じてしまいそうに。過激で暴力的なゲイへの差別偏見は、何だか狂気的でもあって。自分たちとは違う!普通なのは正しいのは自分たち!と、価値観や嗜好が異なる人たちを躍起になって排除しようとする人たちのほうが、いつになっても圧倒的に多い世の中なんですよね…でも、それも決して理解できないことじゃない、という事実も私を暗澹とさせます。とにかく、病気にしてもテロにしても、無知無関心でいてはいけないと痛感。
死に至るまでの精神的肉体的苦悩・苦痛が、リアルにシビアに描かれていています。目を覆いたくなるような悲痛なシーンもあって、神さまは人間に何て非道い試練を与えるんだろう…と、胸が苦しくなってしまいました。男同士が自由に愛し合うことは、罰を与えられるほど罪深いことなのでしょうか。確かに、あまりにも無軌道で放埓、無節操なセックスライフは、神をも畏れぬ人間の傲慢さのひとつなのかも、とは思いましたが。死んでいくのが若くて美しい男たち、というのが無残。
HIV患者への無慈悲すぎる対応も、悲惨すぎて神も仏もありません。飛行機搭乗拒否とか(でも、あんな状態で飛行機に乗せようとするのも???でしたが…)死後の臨床検査も拒否、ゴミのように袋に入れられて持ち帰りさせる病院とか、にわかには信じがたい非情さ。自分の愛する人が同じ目にあったら、とは思えない人が多いから、世の中いまだに醜い酷い差別がなくならないんですね。
エイズ啓蒙運動に身を投じるネッドと仲間たちの葛藤や対立は、どっちの言い分も立場も解かるので、ゲイ同士をも争わせてしまう社会の複雑さ、冷酷さに絶望せずにはいられません。何も隠さず恐れず、どんどん前へ出て闘おうとするネッドと、家族や職場のことを考えて慎重なりたい他のメンバーと。カミングアウトって、そんな簡単なことじゃないですよね。それに、ネッドみたいに強い人ばかりじゃない。コソコソしてるからダメなんだ!という彼の姿勢は過激で思慮に欠けてるのか。なるべく反感を買わぬよう、社会におもねるようにして保身も重視する他のメンバーは、臆病で卑屈なのか。誇り高く生きるためには勇気が必要、でも社会を生きるためには妥協も打算も不可欠…自分に恥じないように生きることって、難しい…
深刻な社会派ドラマでもあるけど、私は美しいラブストーリーの部分に深い感銘を受けました。
私が腐りきった腐、というのも感動の大きな要因ですが。とにかくネッドとフェリックスの愛が、普段はゴビ砂漠な私の心に切ない雨を降らせてくれました。過酷な運命と対峙する二人ですが、その苦痛と苦悩さえ強い深い愛の証のようで、羨ましくもなりました。私などこの先、重い病にかかることもなく平和に健康に長寿をまっとうするだろうけど、二人のような愛にめぐりあうこともない。あんな風に誰かに愛され誰かを愛することができるのなら、命を引き換えにしてもいいとさえ思ってしまいました。もう二度と彼のような人とは出会えない、これ以上誰かを愛せない、と分かっているからこそ、二人の愛が悲しく美しかった。愛なんかない夫婦が末永く添い遂げてしまうのに、あれほど愛し合ってた二人が引き裂かれてしまうなんて…
発症するまでの二人が、本当に幸せそうなんですよ。だからこそ、残酷すぎる運命に涙。二人の恋愛は、男同士というだけで、フツーのラブラブなカップルと何ら変わりはない。セックスシーンも、ただ単に性欲を満たし合ってるのではなく、文字通りのメイクラブ、愛の交歓って感じなんです。フェリックスに一目惚れしたネッドが、思わず真顔で『キュートだね』と言うシーンとか、早朝の埠頭でネッドがフェリックスにプロポーズするシーンとか、かなり胸キュンでした。幸せの密度が濃かっただけ、二人に襲いかかる運命が痛ましくて…病魔に蝕まれたフェリックスを決して見捨てず、献身的に支えるネッドの無償の愛が、崇高すぎて。二人の別れのシーンは悲しすぎるけど、誰かを愛しきったという幸福にも満ちていたようで、私はやはり羨望を覚えてしまいました。
俳優たちの見事なアンサンブル演技は、まさに圧倒的で感動的!もうね、ちょっと変わった役したぐらいで演技派気取りな日本の俳優女優には、絶対できない果敢すぎるパフォーマンスなのです。ハリウッドのスターって、スゴいわ~。すごいギャラもらってるだけの仕事しますわ。
ネッド役は、「アベンジャーズ」シリーズでもお馴染み、「フォックスキャッチャー」ではオスカーにノミネートされたのも記憶に新しいマーク・ラファロ。濃くて男くさいけど、すごく優しそう。人柄のよさが全身から滲み出てます。圧巻の大熱演でしたが、フェリックスとの別れのシーンの、あの泣き顔には胸を本当に衝かれました。
フェリックス役は、TVドラマ「ホワイトカラー」で人気のイケメン、マット・ボマー。私生活でもゲイであることをカミングアウトしているマットが、これまた渾身の大熱演。ルックスだけじゃなく、果敢な役者魂も備えていることを証明しています。やせ衰え、どんどん崩壊していく彼の美しい顔と肉体が、とにかく凄絶で驚嘆。役作り、大変だったことでしょう。マーク・ラファロとのラブシーンは、とにかく大胆で甘美。それにしても二人とも、すごい脱ぎっぷりの良さでした。ネッドの元軍人のゲイ友ブルース役、テイラー・キッチュのイケメンぶりも特筆に値するでしょう。ブロンドの髪とシャープな顔立ち、ゴリマッチョ肉体美が素敵でした。
車椅子の女医エマ役は、大物女優ジュリア・ロバーツ。
プリティ・ウーマンも遠い昔、すっかりBBAになったジュリロバさんですが、こういう男なんか屁とも思ってない、ギスギスしたヒステリーおばさん役が、すごく似合う女優になりましたね。「8月の家族たち」もそうでしたが、彼女の激怒演技って大迫力で超怖い。さぞや共演者やスタッフを戦々恐々とさせてるんだろうな
↑ハリウッドのイケメンの底力を見せつけられました!マークの新作“Spotlight”も社会派の問題作みたいです。マットはもうすぐ「マジック・マイク」続編が日本公開。クリス・プラットやイ・ビョンホン共演の“The Magnificent Seven”も楽しみ。テイラーは「トゥルー・ディテクティブ」のシーズン2で、コリン・ファレルと共演中!いい男たち、いい仕事してます