まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

残酷な天使のブロークンハート

2015-09-24 | 欧米のドラマ
 イギリスのTVドラマ「テス」を観ました~。全4話。
 19世紀末のイギリス、ドーセットの田舎。家族を貧困から救うため、美しい長女テスは金持ちのダーバヴィル家で働き始めるが、主のアレックに犯され身ごもってしまう。生まれた赤ん坊も死に、悲しみに暮れるテスは、新しい奉公先でエンジェルという青年と出会い恋に落ちるが…
 英国の文豪トマス・ハーディの代表作「ダーバヴィル家のテス」の映像化は、ロマン・ポランスキー監督、ナスターシャ・キンスキー主演の映画が有名。名作の誉れ高い映画版に比べると、このテレビ版は…うう~ん…テスが、単なるバカ女にしか見えなかったナスターシャのテスは、まさに不幸が女を美しくする、愚かなほどに優しい白痴美女といった風情が痛ましくも哀切で、はらはらと散る花のような儚さが胸に沁みるヒロインでしたが、今回のテスは…見た目もキャラも、めっちゃ逞しくて図太くて、とても運命に流されるヒロインに見えないんですよ。とにかく気が強い、自我が強くて、不幸や理不尽に受け身な生き方と矛盾してるんです。ナスターシャのテスは、深く物事を考えられない少女の無垢な無知が愛しくもあったけど、新テスときたら…無駄に勝気でプライドが高い、自分を買いかぶりすぎるのって、ほんと女にとっては損な気性だな~と思わせる女でした。本人は誇り高いつもりなんだろうけど、はたから見ると単にツンツンして意地悪そうなので、不遇、不幸に見舞われても同情できないんです。暗い運命というより、判断ミス、計算違いしたバカ女にしか見えなかった。自分は周囲とは違うと思い込んでそうなところも、何かイヤな感じだったし。あと、いい男たちを独占してしまうテスみたいな女、近くにいたら女たちから嫌われるだろうな~。その気なんかないと見せかけて女たちを油断させて、シレっとお坊ちゃまのアレックも好青年のエンジェルもモノにしちゃってるから、怖い女!

 男たちのせいで心身ともに傷つき、辛酸をなめた挙句に悲劇的な末路を迎えるテスですが…男たちもクズでしたが、そんな男どもに引っかかるテスがバカすぎて、自業自得としか思えなかったです。まず、不幸の発端となる金持ちのドラ息子アレックとの関わりですが…一見、テスはレイプの被害者だけど、あれって強姦になるのかなあ?まあテスの同意を得ずにヤっちゃったのはマズかったけど、あれはOKともとれるシチュエーションですよ。無理やり暴力で犯されたのなら悲惨だし許せないけど、テスは日ごろからアレックが勘違いしても仕方がないような思わせぶりな態度とってたし。隙と油断がありすぎたテスにも落ち度があってのでは。それに、あんなに貢いでもらって助けてもらって、男に下心があったことぐらい気づくだろフツー。いや、ナスターシャのテスみたいな純真無垢な白痴美女ならいざしらず、新テスはそんな純で鈍な小娘に見えないので、レイプされた!とギャーギャー激怒するのに違和感ありまくり。アレックが卑劣な鬼畜野郎ならともかく、下心はあっても優しいし金持ちだし、開き直って家族のためにも彼を利用すればいいじゃん?私ならそうする!と思ったり。そうはできないところが、テスの悲しさなんだろうけど…そんな泣き寝入りするような女に見えないところが、このドラマの敗因です。ラストにテスが犯す大罪も、おいおい~!?バカじゃないの?!な、プッツン女の愚行だし。これも悲しい運命なの、こうせずにはいられなかったの…な美しい悲しみが、新テスには微塵もないのがトホホ。悲劇ではなく、三面記事的な痴情のもつれになってしまってた。テスとか源氏物語の浮舟とかは、ただもう儚げな手弱女じゃないと似合わないヒロインです。

 レイプで身ごもる、なんてどこまで不幸なんでしょう。しかも、生まれた赤ちゃんはすぐに天に召されるとか、神も仏もありません。これだってテスの自分勝手さが招いた結果ですよ。テスが貧乏な実家に戻らず、我慢してアレックのもとにいれば、赤ちゃんは死ななかったかも。ド貧乏なのに、私生児がいることがバレたらみっともない!と、赤ちゃんを医者にも見せないテスの親父も最悪。私生児はみっともないのに、金持ちの親戚に娘を物乞いに行かせるのは恥ずかしくないのかよ?と呆れました。赤ちゃんを弔ってくれない教会も怖い。この時代の、人々をがんじがらめにしてる因習とか信仰心に、ゾっせずにはいられませんでした。
 テス役のジェマ・アタートンが…美人だし熱演でしたが、いかんせん悲しみのヒロインって感じじゃないんですよね~。その勝気そうで逞しすぎる見た目は、誰が泣き寝入りなんかするか!女の権利のために戦う!な役のほうが、断然似合いそうです。賢そうで気が強そうな女優は、テスにはミスキャスト。貧乏と放浪でズタボロなはずなのに、エースをねらえのお蝶夫人みたいに、いつもフワフワでセット仕立てみたいな長い髪にも強い違和感。

 テスと恋に落ちる青年エンジェル役は、今年「博士と彼女のセオリー」でオスカーを受賞したエディ・レッドメイン。ブレイク前の初々しい彼は必見。つっても、今とそんなに違わないエディくんです。その名の通り、天使みたいに優しそうで可愛らしいエディくん、ジェマ・アタートンがデカくてゴツいので、ほっそりひょろ~っとした彼がか弱い少年にしか見えなくて。ほんと、たまに顔だけだと子どもに見えた(そして、たまに斉藤工に見えた。めちゃくちゃ薄くして上品にした斉藤工、みたいな)エディくんなので、純真で繊細なエンジェルは適役だったと思う。何を着ても上品でおしゃれなところもエディくんらしかった。全裸シーンもあり。可愛いエディくんですが、エンジェルは最低最悪な男。あんな心がガラス細工すぎる男、イヤだ~。エンジェルが強い寛い心の持ち主だったら、テスもあんな悲劇的な最期を迎えなくてすんだでしょうし。私を不幸にした!とテスが諸悪の根源みたいに責めてたアレックが、最も可哀想なキャラだったかも。むしろテスのほうが、彼を不幸にしたと思うけどなあ。とにかく、不幸になるために出会った、お互いに負しかもたらさない悪縁の3人でした。
 冒頭の少女たちがダンスしてる緑の崖とか、荒涼とした丘とか、ラストの草原とか、自然が絵画のように美しく撮られてました。どこでロケしたんだろう?

 ↑新作“The Danish Girl”の彼は、2年連続オスカー候補の可能性も濃厚な好演だとか。まさにアゲアゲな絶好調男ですね
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする