まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

誇りをもって死す

2016-12-23 | 北米映画 80s~90s
 「フィラデルフィア」
 80年代のフィラデルフィア。エイズを発症した弁護士のアンディは、自分を不当に解雇した弁護士事務所を訴えたいと、人権派の黒人弁護士ジョーに訴訟を依頼する。ゲイ嫌いのジョーは断るが、衰弱しながらも闘おうとするアンディの強い意志に心打たれ…
 トム・ハンクスとデンゼル・ワシントン、共に2度のオスカーに輝く名優二人がW主演した、社会派のヒューマンドラマです。トム・ハンクスに最初のオスカーをもたらした作品としても知られています。
 トム・ハンクス、当時37歳。エイズ患者を演じているため激痩せしており、現在のハンクス氏しか知らない人が見たら、誰?!かもしれません。事実、この映画を観たMY老母も全然気づかなかったみたいで、あれトム・ハンクスですよと後で私が教えると、え!と驚いてました。
 
 トム・ハンクス、イケメン伝説!my ベスト・オブ・トム・ハンクス映画は「ビッグ」なのですが、イケメン度だけだとこっちのほうが髙いかも。エイズが発症する前のエリート敏腕弁護士なトムは、若くてスマートで本当にカッコいいです。都会的で知的な役が、すごく似合うんですよね~。そんなイケメントムが病魔におかされ、どんどん衰弱していく姿は壮絶で悲痛。普段は明るく楽しく元気いっぱいなトムが~と、コメディ映画とのギャップに暗澹となってしまいます。

 シリアス演技も秀逸なトムですが、やはり彼は卓越した喜劇俳優なんですよね~。肉体的、精神的、社会的にも絶望のどん底にありながらも、常にユーモアを忘れず、ちょっとした言動で周囲の人たちや観客も笑わせて、返って相手が救われてしまうところが、さすがトム・ハンクス!と感嘆。トム・ハンクス独特の、あの皮肉に自虐的な笑いは、この映画でも失われてません。過酷な運命をネチネチメソメソと嘆き恨むことなく、理不尽な社会への怒りにメラメラ燃えてるのでもなく、終始冷静に現実と向き合って誇り高く存在証明しようとするトムが、哀しくもカッコよかったです。
 ジョー役のデンゼル・ワシントンも、当然ですが若い、そして男前!

 黒人俳優の中では、1、2を争う美男子ですよね~。見た目もキャラも、男気あふれるところが素敵。闘う男役こそ、彼の真骨頂。闘志あふれながらも、おちゃめなところもあって、クスっと笑えるシーンも少なくなかった。法廷でのちょっと破天荒な弁護が面白かったです。ゲイ嫌いを隠さない彼のアンディへの距離と壁が、信頼と尊敬でだんだんなくなっていく過程も、なかなか感動的でした。
 トム・ハンクス&デンゼル・ワシントン、やっぱ名優だな~と思い知りました。特に動きや台詞がないシーンでも、その時の複雑な心情がすごく伝わってきたり、逆に今どんな気持ちなんだろう?と気になる表情をしたりと、まさに俳優とはかくありき!な演技。自称俳優な人たちの大根演技って、訴えてくるものや問いかけてくるものが何もないですよね~。

 アンディの恋人役が、これまた若かりしアントニオ・バンデラス。アルモ姐さんの愛を一身に受けていたバンちゃんが、姐さんを捨てて?スペインからハリウッドに一念発起で渡ったばかりの頃の映画でしょうか。献身的で愛情深い役でしたが、トム・ハンクスとのカップリングは、正直萌えなかった。どっちがタチでネコなのかも不明。
 その他にも、ジェイソン・ロバーズ、メアリー・スティーンバージェン、ポール・ニューマン夫人のジョアン・ウッドワードなど、オスカー名優たちが脇を好演してました。
 「ノーマル・ハート」もそうでしたが、当時のエイズ、同性愛者への差別偏見の根深さ、理不尽さにはあたらめて戦慄。もはやエイズは死病ではなく、LGBTへの理解も深まっている今の社会に、アンディは草葉の陰でさぞや感無量なことでしょう。若くして死ななければならなかったアンディですが、私は彼が不幸な人とは思えませんでした。むしろ、たくさんの人たちに愛され必要とされ、幸せな人生だったようにも思えました。アンディのような有意義な人が若死にして、私のような者が無駄に長生きすることこそ悲劇です。私なんか100まで生きそうで、こういう映画を観たら心の底から申し訳なくなります

 ↑この頃のトムに、また会いたい…
コメント (2)
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