追悼・渡瀬恒彦②
「仁義なき戦い」
敗戦直後の広島・呉。復員兵の広能は、やくざ同士の乱闘に巻き込まれ刑務所送りとなったことで極道となり、壮絶な抗争に身を投じるが…
国内外の映画に多大な影響を与えた、やくざ映画の金字塔。今あらためて観ると、内容、演出、演技、すべてにおいて圧倒されるほどに粗削りでパワフル。いろんな規制に縛られ、TVドラマと何ら変わらぬ無難で凡庸な邦画に物足りなさを感じてる人には、うってつけのトンデモっぷりです。とにかく、半世紀前に近い古い映画なのに、斬新で自由な作風に驚かされ惹きこまれます。
抗争に明け暮れる血の気の多い野郎どもが、狂いっぱなしでアナーキーで怖い、けど笑えます。ヤクザって、たいていはカッコよく美化して描かれがちですが、この映画のヤー公どもはみんな自分勝手で欲望まみれで、腐ってるゲス&クズばかり。悪い意味で、その人間くささに共感してしまいます。ベタベタしい任侠やウソくさいカッコよさとか排除し、面白くしようと色んなものをゴチャ混ぜにもしてないところが好きです。
それにしても。この映画の極道たち、もうメチャクチャ、ハチャメチャすぎて、笑いを狙ってるとしか思えません。みんな死にもの狂い、大真面目にやってるのがこれまた笑えるんですよね~。ハイテンションにイカレてるところが、岡田あーみんの漫画を思い出させてます。あーみん、70年代の東映やくざ映画の影響を受けてますね絶対。
血しぶき、血まみれな殺し合いシーンのヴァイオレンス描写も、強烈で壮絶。そして、この映画といえばあの、日本人なら誰でも耳にしたことがある有名なテーマ曲。誰かが殺されると、“昭和29年 ○○ 死亡”の字幕、チャララ~チャララ~♪が、ファンにはたまらんお約束です。
外道の話だけど、権力を握るための血なまぐさい陰謀や暗殺、裏切りや駆け引きは、どこか英国の王室ドラマに通じるものがあって、悪名高いヘンリー8世やリチャード3世が、親分や若頭とカブります。
今は亡き名優たちが、おとこ盛りの魅力と役者魂を炸裂させてます。彼らに圧倒、魅了された後は、いい年して漫画なコスプレ演技で演技派、個性派気取りな今の俳優に、あらためてウンザリ。まず主人公の広能役、菅原文太の朴訥で熱い男気に痺れた!
文太兄さん、見るからにヤバいその筋の人なんだけど、周囲と違いズルくも冷酷にもなれない、お人よしで不器用なところが可愛かった。人はいいけど、暴れっぷりは最強最狂。彼のみは、理想のカッコいいヤクザです。
野心家の坂井役、松方弘樹も名演。ワタシ世代だと松方氏って、遠山の金さんなど時代劇、もしくはたけしの元気が出るTVのおじさん、というイメージなのですが、かつては東映映画でバリバリ暴れてたんですよね~。雑草、野良犬的な他のヤーさんたちに比べると、リッチな雰囲気があるのが独特。グラサン、スーツもこれぞ羽振りのいいヤーさんって感じで、イカしてました。
そして何といっても、若き日の渡瀬恒彦!
当時29歳!若い!カッコいい!けど、激ヤバ!まさに狂犬!目つきとか、尋常じゃないほどカタギの人ではないです。チョイ役に近く、出番も少ないのですが、インパクトは激烈。凶暴凶悪な役なのに、誰よりも男前、色男。真の男前には危険なにおいが付きものだし、危険が似合わない男は魅力に欠ける。当時の渡瀬恒彦は、その危険さが男のフェロモンとなって観る者を酔わせます。
その他、梅宮辰夫、田中邦衛、川谷拓三など、CMやドラマで馴染みがある彼らとは別人のような極道っぷりも見ものです。脇役の中で最も美味しい役なのは、親分役の金子信雄ではないでしょうか。ズルい!セコい!諸悪の根源である醜悪な爺を、イヤらしくもオチャメに好演してます。金子さんといえば、いつもほろ酔いで料理番組の司会やってたのが懐かしい。とにかく、仁義なき軍団のようなギラギラ&ギンギンした俳優が、今いないのが残念です。当時の渡瀬恒彦が、嵐より年下という事実だけでも、今の邦画やTVドラマに何だか絶望に近いトホホさを感じさせます。
文太兄さんも松方さんも、川谷さんも金子さんも、そしてつねぴーも、君はいない~♪by ZARD …今頃は天国で、仁義なき酒を酌み交わしてることでしょうか。もうすぐ梅宮のたっつあんも田中邦衛も仲間入りしそうで悲しい…
この映画の影の主役は、極道たちが迸らせる荒々しい広島弁ではないでしょうか。おかげで広島弁=怖い、というイメージが定着してます。私、生まれも育ちもこの映画の舞台となった某市なのですが、聞いたことない広島弁も多々あった。私が小さい頃には、確かにいかにもその筋の人なコワモテな兄さんたちが街を闊歩してましたが、今は絶滅してしまったかのように見なくなりました。この映画といい、大ヒットしたアニメ「この世界の片隅で」といい、地味な田舎町だと思ってたmy hometownって意外とスゴいかもと、ちょっと郷土愛が深まりました。やくざの無法地帯な抗争や戦争の爆撃が、ここであったんだな~と、日々の暮らしの中では全く実感できずにいる私です。
「仁義なき戦い」
敗戦直後の広島・呉。復員兵の広能は、やくざ同士の乱闘に巻き込まれ刑務所送りとなったことで極道となり、壮絶な抗争に身を投じるが…
国内外の映画に多大な影響を与えた、やくざ映画の金字塔。今あらためて観ると、内容、演出、演技、すべてにおいて圧倒されるほどに粗削りでパワフル。いろんな規制に縛られ、TVドラマと何ら変わらぬ無難で凡庸な邦画に物足りなさを感じてる人には、うってつけのトンデモっぷりです。とにかく、半世紀前に近い古い映画なのに、斬新で自由な作風に驚かされ惹きこまれます。
抗争に明け暮れる血の気の多い野郎どもが、狂いっぱなしでアナーキーで怖い、けど笑えます。ヤクザって、たいていはカッコよく美化して描かれがちですが、この映画のヤー公どもはみんな自分勝手で欲望まみれで、腐ってるゲス&クズばかり。悪い意味で、その人間くささに共感してしまいます。ベタベタしい任侠やウソくさいカッコよさとか排除し、面白くしようと色んなものをゴチャ混ぜにもしてないところが好きです。
それにしても。この映画の極道たち、もうメチャクチャ、ハチャメチャすぎて、笑いを狙ってるとしか思えません。みんな死にもの狂い、大真面目にやってるのがこれまた笑えるんですよね~。ハイテンションにイカレてるところが、岡田あーみんの漫画を思い出させてます。あーみん、70年代の東映やくざ映画の影響を受けてますね絶対。
血しぶき、血まみれな殺し合いシーンのヴァイオレンス描写も、強烈で壮絶。そして、この映画といえばあの、日本人なら誰でも耳にしたことがある有名なテーマ曲。誰かが殺されると、“昭和29年 ○○ 死亡”の字幕、チャララ~チャララ~♪が、ファンにはたまらんお約束です。
外道の話だけど、権力を握るための血なまぐさい陰謀や暗殺、裏切りや駆け引きは、どこか英国の王室ドラマに通じるものがあって、悪名高いヘンリー8世やリチャード3世が、親分や若頭とカブります。
今は亡き名優たちが、おとこ盛りの魅力と役者魂を炸裂させてます。彼らに圧倒、魅了された後は、いい年して漫画なコスプレ演技で演技派、個性派気取りな今の俳優に、あらためてウンザリ。まず主人公の広能役、菅原文太の朴訥で熱い男気に痺れた!
文太兄さん、見るからにヤバいその筋の人なんだけど、周囲と違いズルくも冷酷にもなれない、お人よしで不器用なところが可愛かった。人はいいけど、暴れっぷりは最強最狂。彼のみは、理想のカッコいいヤクザです。
野心家の坂井役、松方弘樹も名演。ワタシ世代だと松方氏って、遠山の金さんなど時代劇、もしくはたけしの元気が出るTVのおじさん、というイメージなのですが、かつては東映映画でバリバリ暴れてたんですよね~。雑草、野良犬的な他のヤーさんたちに比べると、リッチな雰囲気があるのが独特。グラサン、スーツもこれぞ羽振りのいいヤーさんって感じで、イカしてました。
そして何といっても、若き日の渡瀬恒彦!
当時29歳!若い!カッコいい!けど、激ヤバ!まさに狂犬!目つきとか、尋常じゃないほどカタギの人ではないです。チョイ役に近く、出番も少ないのですが、インパクトは激烈。凶暴凶悪な役なのに、誰よりも男前、色男。真の男前には危険なにおいが付きものだし、危険が似合わない男は魅力に欠ける。当時の渡瀬恒彦は、その危険さが男のフェロモンとなって観る者を酔わせます。
その他、梅宮辰夫、田中邦衛、川谷拓三など、CMやドラマで馴染みがある彼らとは別人のような極道っぷりも見ものです。脇役の中で最も美味しい役なのは、親分役の金子信雄ではないでしょうか。ズルい!セコい!諸悪の根源である醜悪な爺を、イヤらしくもオチャメに好演してます。金子さんといえば、いつもほろ酔いで料理番組の司会やってたのが懐かしい。とにかく、仁義なき軍団のようなギラギラ&ギンギンした俳優が、今いないのが残念です。当時の渡瀬恒彦が、嵐より年下という事実だけでも、今の邦画やTVドラマに何だか絶望に近いトホホさを感じさせます。
文太兄さんも松方さんも、川谷さんも金子さんも、そしてつねぴーも、君はいない~♪by ZARD …今頃は天国で、仁義なき酒を酌み交わしてることでしょうか。もうすぐ梅宮のたっつあんも田中邦衛も仲間入りしそうで悲しい…
この映画の影の主役は、極道たちが迸らせる荒々しい広島弁ではないでしょうか。おかげで広島弁=怖い、というイメージが定着してます。私、生まれも育ちもこの映画の舞台となった某市なのですが、聞いたことない広島弁も多々あった。私が小さい頃には、確かにいかにもその筋の人なコワモテな兄さんたちが街を闊歩してましたが、今は絶滅してしまったかのように見なくなりました。この映画といい、大ヒットしたアニメ「この世界の片隅で」といい、地味な田舎町だと思ってたmy hometownって意外とスゴいかもと、ちょっと郷土愛が深まりました。やくざの無法地帯な抗争や戦争の爆撃が、ここであったんだな~と、日々の暮らしの中では全く実感できずにいる私です。