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秘書・藤江淳子が語る『うちの先生』その2

2018-05-22 21:25:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
『お洒落をしないのは、泥棒よりもひどい』
「うちの先生は、お洒落や身だしなみは他人のためにするものだとお考えでした。接する相手に不快な思いをさせない、っていうことなんです。
 だから、近くまで来たからちょっと寄ってみた、なんていうお客様はいやがりました。せっかくいらしてくれたお客様は、きちんともてなさなくてはならないので。
 身だしなみといっても、厚化粧をするという意味じゃないんです。お化粧は顔を洗ってオリーブオイルを塗り、白粉をちょっとはたいて頬紅をすこし、眉を描いて口紅をつけておしまい。五分もあれば終わっちゃう。
 そんなごく簡単なお化粧なのに、突然人が来ると、たとえ親戚のような間柄の人でも、素顔のままでは絶対に『会わない』と言うんです。
 私にしてみれば、素顔でも全然おかしくないと思うのですが、先生は『恥ずかしいこと』と思い込んでいるんです。『お洒落しないのは、泥棒よりひどい』と、よく言っていました。
 でも、先生はお化粧を落とす時は時間がかかるんです。石けんとかにはこだわりませんでしたが、石けんを落とすのに、あきえるほどザブザブとすすいで落とすんです。
 そのせいか先生は、亡くなるまで皺という皺ができませんでした。『藤江さん、宇野先生の皺をいただいているんじゃないですか』なんて冗談を言う人がいるくらい(笑)。
 本人も書いていますが、『宇野千代は整形手術をしている』なんていう噂が流れたこともありました。でも先生は整形どころか、エステやマッサージにも、行ったことがありませんでした。
 それを聞いた先生は、事実無根の中傷に腹を立てるのではなく、「手術したように見えるくらい、皺がないってことね」と、むしろ自慢に思うようでした。
 不思議なくらい、プラス思考なんですよね。」

『小説よりも好きなもの』
「うちの先生の夢は、銀座でお弁当屋さんをやることでした。今はコンビニでもなんでも、お弁当を買うことが一般的になったでしょう。当時はまだお弁当屋さんが少なかった。先生はいつも時代に先がけて早すぎるんです(笑)。これは、叶うことのなかった夢です。
 お弁当からはじまるお付き合いも多かったようです。私も色んな方へ、先生の作ったお弁当を届けに行きました。
 よく一緒に食材を買いにも行きました。先生はどこででも買えるものが好き。買い物は、近所の魚屋、八百屋、ピーコックなどへ歩いて行きました。
 お料理の本を出していましたから、『だって、あっちゃん、みんなが買えるものを使っていなきゃだめじゃないの』と仰って。もちろん無理をしているんじゃなくて、先生にとってはそれが普通。
 らっきょうや奈良漬けを漬けるのが大好きで、もしかしたら小説を書くよりも好きだったかもしれません。来客があると、お茶うけにその漬物をお出しするくらい、自慢なの。
お客さんへのおもてなしでも、わざわざ遠出して高給な材料を買って、ということはやらない。やっぱり近所の八百屋さんで買った食材で、心をこめて料理するんです。
 先生は何度か結婚されていますが、その時々の相手に合わせてお酒の肴を作るのが楽しみなんです。だから、結婚している間は小説が少なくなるんです(笑)。
 それから、麻雀が大好き。『麻雀を知らない人はあわれだ』とか『性格がすぐ分かるから、うちの会社に入社させる人も麻雀で決めたい』とまで言っていたくらいです。
 麻雀を始めたら深夜一時二時までやって、その午後にはまたやってる。
 私があるとき『麻雀さえやらなければ、もっと小説が書けるのに』と言いましたら、『決してそういうことではない。麻雀があるから小説が書ける』と、エッセイに書かれちゃいました。」(また明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。また、この2人について何らかの情報を知っている方も、以下のメールで情報をお送りください。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)