北朝鮮ミサイル
エスカレート抑える外交急げ
北朝鮮は2日、弾道ミサイルなど23発以上を発射しました。うち1発は日本海の南北軍事境界線に当たる北方限界線(NLL)の韓国側公海に落下しました。NLLを越えてミサイルが着弾したのは初めてとされます。続いて3日午前には3発を日本海方向に発射しました。1発は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の可能性があるといわれます。北朝鮮はアジアと世界の平和を脅かす危険な軍事挑発をやめるべきです。
直ちに核兵器開発中止を
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は2日、「実質的領土侵害行為だ」と非難し、対抗措置として韓国空軍の戦闘機が、NLLの北朝鮮側公海上に空対地ミサイル3発を発射しました。対立がエスカレートし、衝突が起きるおそれもあります。
北朝鮮が9月末以降に発射した弾道ミサイルと巡航ミサイルは10月末までに計17発にのぼります。10月4日に発射された弾道ミサイルは青森県上空を通過しました。11月に入ってのものと合わせ、短期間にこれほど多くを発射したことは異例です。いずれも、北朝鮮に、核兵器に関連するあらゆる活動を禁じた一連の国連安全保障理事会決議に違反しています。
北朝鮮はこの間、核・ミサイル開発を加速させてきました。金正恩(キムジョンウン)労働党総書記は9月8日に開かれた最高人民会議で自国の「核保有国としての地位」を改めて強調し「絶対に核を放棄できない」と述べました。
過去6回行われた核実験の再開も懸念されています。国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の履行状況を調べる専門家パネルは、10月に公表した中間報告で、北朝鮮が2018年に爆破した豊渓里(プンゲリ)核実験場の再建活動が確認され、「核実験に向け道を開いた」状態にあるとしています。
国際原子力機関(IAEA)も9月に公表した年次報告で、同核実験場再開の動きを指摘し、安保理決議違反と批判しました。
核兵器廃絶を求める世界の流れに逆行する核・ミサイル開発は断じて認められません。核開発によって北朝鮮が得るものは何もありません。同国が国際社会で孤立から脱するためには安保理決議に立ち返り、核・ミサイル開発を停止することが不可欠です。
北朝鮮は核実験などこれ以上事態を悪化させる行為をすべきではありません。
米国や韓国がこの間、軍事的対応を強めたことで緊張がさらに高まっていることは極めて危険です。米韓両軍は軍事演習を繰り返し実施し、日米韓も日本海で対潜水艦訓練をしました。10月31日からは米韓が軍用機約240機を投入した大規模な「空中訓練」を行っています。3日の弾道ミサイル発射後、4日に終了する予定だったこの訓練の延長を決めました。
軍事対決の悪循環避けよ
米韓などの軍事的対応に対抗して北朝鮮は行動を一段と激化させています。軍事対軍事の対決が解決につながらなかったことは、これまでの経過で明らかです。「朝鮮半島の完全な非核化」「朝鮮戦争の終結」を約束した18年の南北板門店宣言、それを再確認し「平和体制の構築」をうたった米朝共同声明などの合意に立ち返り、日中韓米、ロシアをはじめ国際社会が協調して外交的解決の努力を強めることが急務となっています。