県の「ヘイト後押し」反対/朝鮮学校補助金問題、
知事の答弁受け埼玉・有志の会が見解発表
「誰もが共に生きる社会を目指し、埼玉朝鮮学校補助金支給再開を求める有志の会」(以下、有志の会)が7月30日、県庁で記者会見を開き「朝鮮学校補助金問題に関する知事答弁に関する見解」を発表した。
有志の会による会見は4月16日の声明発表につづき2回目となる。
会見には、有志の会の共同代表および呼びかけ人らが参加。共同代表の東京外国語大学・小田原琳准教授(46)の司会のもと、共同代表の明治学院大学・猪瀬浩平教授(39)が現在までの経緯を説明し、同じく共同代表の大東文化大学・渡辺雅之准教授(60)が見解について説明した。
6月27日の埼玉県議会で上田清司知事は、2010年から停止されている朝鮮学校補助金問題についての一般質問に、(1)学園の財務状況の事務処理が適正を欠いている、(2)拉致問題等の解決がされるまで予算執行の保留を求める附帯決議がある、(3)高校無償化裁判で国が主張する総聯と朝鮮学校の関連性への懸念が生じていると答弁した。さらに総務課では、人権条約や子どもの権利条約は法的拘束力がないとし、直ちに具体的な権利が発生する条約ではないとした。
これに対して有志の会は「非常に不合理で行政の適正を欠くもの」としながら「埼玉県が推進してきた人権施策、人種差別撤廃条約や子どもの権利条約など日本が批准した人権諸条約と矛盾する」とし、また県の朝鮮学校への補助金停止は「ヘイトスピーチなど朝鮮半島にルーツを持つ人びとへの差別が横行するなか、偏った考えを持つ人びとを後押しすることだ」と指摘。
また知事答弁の三項目について、▼財務処理の適正さに向けた学園側の誠実な対応とゴールを動かし「財政状況の不健全」をいつまでも理由とする県の対応、▼子どもの人権の問題と政治的問題を結びつける決議内容の問題と法的拘束力のない決議を尊重する行政の態度(附帯決議の妥当性への疑義)、▼民族教育を受ける権利の保障と民族団体の果たしてきた役割の重要性(「不当な支配」という言葉の濫用)という点でそれぞれ問題があると見解を述べた。
有志の会はまた「拉致問題等、朝鮮との問題はあくまで外交的に解決すべきである」との立場を明かし「少なくとも補助金停止と朝鮮への制裁措置を結びつけることは筋違いであると言わざるを得ない」、地方行政は「『等しいものは等しく扱う』という基本的人権の原則を施策に反映させる」ことを優先するべきだと主張。つづけて「拉致が人権問題として看過できないというならば、私たちこそ人権重視の立場に立つべきである。県内に住み学ぶあらゆる子どもたちの教育と発達を保障すること、それこそが埼玉県が施策として掲げる人権の課題である」と明言した。
「誰もが共に生きる社会の『誰も』とは、文字どおり、そこに例外を設けないものである」「『人権の重さはみんな同じ』※であり、そこに差異をフレームアップし段差を設けることは差別である」とし、多くの賛同人たちと連帯し朝鮮学校補助金支給再開を強く求めると同時に、より多くの県民がこの問題に関心を持ち共に歩んでいくことを訴えた。(鳳)