祖母と過ごした夏

ときとともに薄れていく記憶もあれば、
ときとともに鮮明になっていく記憶もある。
祖母とふたりで過ごした最後の夏。
祖母といっしょに梅干しを漬けた。
「岐阜のおばあちゃん」は、
母を含めて11人の子を産んだけれど、
戦争で、母の兄と弟をなくした。
その後はずっとひとりで暮らしていた。
大垣に住んでいたわたしたちは、
お盆や正月、お祭りには泊まりに行った。
祖母のつくる料理はどれもおいしくて、
なかでも、ポタポタの梅干しは、
わたしの大好物だった。
わたしが19歳になったころ、
祖母は子宮ガンの末期になった。
祖母は手術を拒み、
最後の1年を、わたしは望んで、
祖母とふたりで暮らした。
梅仕事の季節になると、
祖母は梅干しを漬けたいとせがんだ。
わたしは、祖母に教えてもらいながら、
祖母といっしょに梅干しを漬けた。
小さい頃からしかられてばかりいたわたしに、
「わたしも若いころは、やんちゃで我がままだった」
と、最初の婚家が嫌で3日目に裸足で逃げ帰ったことなどを
笑いながら話してくれた。
翌年、祖母はいっしょに暮らし始めた、
母に看取られて死んだ。
わたしの梅干しは、祖母から引き継いだ梅干し。
祖母がいなくなって30年。
わたしは今年も、祖母の梅干しを漬ける。
梅干しの土用干しの手順
「てづくり梅干し~いよいよ土用干」より再掲


①梅が干せる大きさの、ザルやすだれを準備して、
きれいに洗って乾かしておく。
②干しはじめは、午前10時ころ。
梅を容器からだし、梅酢を切ってから、
かさならないように、ザルていねいに並べていく。
(皮が破れやすいので、取り扱い注意)
③12時に色づきを良くするためと、
皮がくっつかないように、ひとつずつウラ返す。
④干し終わりは、午後2時。梅が熱いうちに、梅酢に戻す。
色付きをよくするために、紫そも戻す。
①から④までを、1クールとして、
晴天の日に、同じ手順を、3日間繰り返す。
これで、色も味もいちだんとよくなる。
昼は日中に4~5時間干して、
それ以外の時間は、梅酢に戻しておくのが「日干し」。
ぎゃくに、
夜から朝まで干して、梅を夜露にあて、
昼間は梅を梅酢につけて置くのが「夜干し(よぼし)」。
夜干しも、同じことを3日間繰り返す。
夜干しをすることにより、味に丸みがでて日なた臭さがなくなり、
種の実離れがよくなり、皮がしっとりとしまって破れにくくなる。
つまり、
「三日三晩の土用干し」は、合計6日間かかるということ。
この間、雨にぜったいにあてないこと。
この土用干しが済んだ梅干しは、
カビることも腐ることもなく、常温で何十年も保存できる。

「おばあちゃんの梅干し。
わたしもようやく、
おいしく漬けられるようになりました。」
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