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「半身浴は体によくない!?」――健康法の常識を疑え 2018年11月11日 文春オンライン 日頃から健康に気をつけて、「体にいい」とされる生活習慣や食事に気をつけている人が多いのではないだろうか。 だが、医学や健康の常識は、どんどん変わっている。昨日まで正しいと思われていたことが、いつの間にか誤りとなっていることも少なくない。古い知識のままで、間違った習慣を続けていると、かえって健康を損なわないとも限らない。 そこで、最新の研究成果や知見に基づき、医学と健康の新常識を集めてみた。今回は「高血圧・糖尿病・認知症」の新常識。高齢になると多くの人が無縁ではいられない病気なので、ぜひ適切な知識を身に着けてほしい。 高齢になると高血圧に悩む人が増える。高血圧による心筋梗塞や脳卒中を予防するために、様々な健康法を試している人が多いはずだ。しかし、これも思い込みで、間違ったことをしている人が少なくない。 ■冬、寝る前に水を飲むのはNG まずは、水分の摂り方だ。眠っている間に汗をかいて血液がドロドロになり、心筋梗塞や脳卒中を起こすのではないかと心配で、季節に関係なく寝る前にコップ一杯の水を飲むことを習慣にしている人もいるはずだ。だが、 『座りっぱなしでも病気にならない1日3分の習慣』 などの著書がある池谷医院院長の池谷敏郎医師は、冬は寝る前に水を飲む習慣はおすすめできないと話す。 「夏は脱水しやすいので水を飲んだほうがいいですが、冬はほとんど脱水しません。ですから、寝る前に飲むとしても、口を湿らせる程度でいいと思います。それよりも、トイレが近くなって夜中に起きると転倒のリスクがあり、高齢者ではそちらのほうが危険です」 むしろ、失った水分を補うのには、朝起きたときのほうがいいと池谷医師はアドバイスする。しかも、冷たい水だと血圧が上がるので、朝一番はお湯や温かいお茶がおすすめだという。 ■低めの枕で睡眠時無呼吸を防ぐ また、冬は空気が乾燥して、鼻づまりが起こりやすいため、睡眠時無呼吸が悪化しやすい。この病気は昼間に眠気が出る病気として注目されたが、最近は、血圧が乱高下して突然死を起こす危険性のある病気という考え方が強くなっている。 「睡眠時無呼吸のある人は、呼吸が止まっている間は低酸素状態となり血圧が上昇します。この血圧の乱高下によって、心筋梗塞や脳卒中の危険性が生じるのです。睡眠時無呼吸を予防するには、フラットで低めの枕がおすすめです。寝返りしやすくなることで、無呼吸が軽減されるからです」(同前) また、高齢者はトイレで排便中、いきんだときに血圧が急上昇し、脳卒中を起こすことがあるが、実はこれと同じ現象が、おしっこを我慢しているときにも起こっている。 「ギリギリまでおしっこを我慢すると、200ぐらいまで血圧が上がることがあります。その状態でおしっこをすると、今度は血圧が急に下がり、失神するケースもあります。ですから、なるべく我慢せずに、トイレは早めに済ませるようにしてください」(同前) ■半身浴は医学的に根拠がない 高齢者はお風呂の入り方にも注意してほしい。冬場、裸で寒い風呂場に入ると血管が縮み、血圧が急上昇するが、湯船につかって温まると、今度は過度に血圧が低下する。実は、この風呂場での血圧の乱高下が危ないのだ。池谷医師が続ける。 「湯船で血圧が下がると脳血流が減少するので、失神状態になって溺れることがあります。とくに降圧薬を飲んでいる人は、血圧が急降下しやすいので要注意です。脱衣所や風呂場が寒くなり過ぎないよう、暖めてからお風呂に入るようにしてください」 読者の中には全身浴でなく、体の負担が少なく、温まるとされる半身浴を実践している人がいるかもしれない。だが、これも医学的には根拠がないという。前出の岡田医師が話す。 「お風呂の入り方で、これが効果的という科学的なデータはないのですが、半身浴だとなかなか温まらないので風呂に入る時間が長くなり、高齢者ではむしろ体の負担が増えてしまいます。とくに冬は風邪をひいてしまうだけなので、半身浴はおすすめできません」 ■高血糖より低血糖のほうが危険 高齢者で、認知症の悪化、意識消失、めまいなどを起こしている人は、低血糖になっている可能性がある。低血糖は糖尿病薬などの治療を受けている人が、食事の量が少なかったり、急性の病気にかかったときに起こす恐れがあるが、実は高血糖より、低血糖のほうが危険なのだ。灰本クリニック院長の灰本元医師が話す。 「重症低血糖を起こすと、認知症や心筋梗塞のリスクが高くなることがわかっています。本人も低血糖が原因だと気づきにくいので、放置されがちです。とくに夜中に倒れた、寝汗がひどい、朝頭痛がするといった症状があったら低血糖を疑って医師に相談してください」 かつては、血糖値は厳しく下げたほうがいいとされたが、現在は低血糖防止のために、高齢者には血糖値を緩やかに下げる治療が推奨されるようになった。 「糖尿病の人は、薬で血圧やコレステロール値をしっかり下げると、心筋梗塞や脳卒中の死亡リスクがかなり減ることがわかっています。ですから、低血糖のリスクも考えると、血糖値を厳しく下げるよりも、むしろ血圧やコレステロール値の管理が大切です」(同前) なお、糖尿病の予防や改善には「運動」がおすすめだ。灰本医師によると、現代人に糖尿病が増えたのは、糖質摂取が増えただけでなく、生活で体を動かさなくなったことも大きいという。それに、運動をすれば認知症の予防にもなる。浴風会病院精神科の須貝佑一医師が解説する。 「有酸素運動が認知症予防になるというエビデンスが国内外にあるので、ウォーキングなどを生活習慣に採り入れるといいでしょう。一方、脳トレになると言われる日記や写経、ドリルなどは、本人が好きでない限り、あまり意味がありません。認知症予防には自発性と持続性が大切だからです。それよりも、囲碁、将棋、マージャンなど、対戦相手と刺激し合いながら、楽しめるものをやったほうがいいと思います」 また、認知症予防にはテレビよりラジオのほうがいい。耳からの情報だけで話を理解するには、想像力や注意力を働かせる必要があるからだ。 「テレビは長時間ぼーっと見てしまうので、認知症予防にはあまり役に立ちません。それよりも、連続ラジオ小説のような番組を、場面を想像しながら聴くのがおすすめです」(同前) (初出『週刊文春』2017年1月5・12日号) |
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