熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

ご当地小説

2007-09-01 14:33:46 | Weblog
特定の土地を舞台に描いた小説があります。
トラベルミステリーは、その代表でしょうか。

私の好きな作家、西村 京太郎の十津川警部シリーズ、内田康夫の浅見光彦シリーズがそうですね。

先日、近くの図書館の特設コーナーで、私が住んでいる市を舞台にした小説を展示していました。
興味が湧いてきて、その中の1冊を借りて読みました。

阿倍 昭さんの「日日の友」です。

その中に収められている短編小説「川」に実名で、川の名前、橋の名前等が出てきます。
このようなご当地小説は、その土地に住んでいる、訪れたことがある読者にとっては、固有名称を見るだけでイメージが湧いてくるという効果があります。
ただし、その土地に不案内または、それほど有名でない土地の場合は、風景描写をしっかり書かなければいけないので、その描写を省略するとストーリーに興味を持てなくなるという欠点があります。

ご当地小説の描き方に類型があることに気付きました。
第1の類型は、実名でその土地を描いている場合で、上述した「川」がそうです。
第2の類型は、実名を出さずに、風景描写でその土地を描く場合で、阿倍 昭さんの小説では、「窓の眺め」が該当します。
「路地をぬけて大通りに出た。頭の上に高速道路が走っていて、空が突然見えなくなった。・・・渡りきったところはコンクリートの橋で、・・・」
特定の地名を記載しないで、読者の想像力に任せるという手法で、読者の興味が湧くという効果が期待できます。

この類型に関連して、思い出した歌があります。
野口五郎の「私鉄沿線」です。
この歌も特定の私鉄・駅名が書かれていないので、歌を聞いた人が勝手に私鉄・駅名を思い浮かべます。
私の場合、小田急線の下北沢駅でしょうか。

さて、話を第3の類型に戻します。
第3の類型は、イニシャルで示す場合で、阿倍 昭さんの小説では、「一日の労苦」が該当します。
「そこはK浦といって、こことは正反対の、ずっと南のはずれの海にのぞんだ土地で、」のように描きます。
第1の類型と第2の類型の中間に位置するもので、ある程度土地が限定され、想像の範囲が狭くなりますが、その分、推理的興味が倍増します。

どの類型が良いのかは作者の好みでしょうが、第2、第3の類型も作者にとってある程度特定された土地があると思います。
それを推理するのも本を読む楽しみでしょうか。



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