常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

シャボン玉考

2012年12月13日 | 日記


童謡に「シャボン玉」というのがある。誰もが一度は歌った懐かしい歌だ。そもそも、シャボン玉遊びとは、ストローに石鹸水をつけて吹くと、シャボン玉ができてふわりと飛んでいく。おもちゃのなかった時代の、子どもたちに親しまれた遊びであった。この遊びは、江戸時代には既にあったというから、日本の古い遊びではある。

この童謡の作詞者は、「赤い靴」や「十五夜お月さん」などの童謡を書いた野口雨情である。

シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こはれて消えた
風 風 吹くな
シャボン飛ばそ

二番の歌詞には、雨情の夭折した長女と四女への思いが込められている。

シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
生まれて すぐに
こはれて消えた

雨情は生まれて間もなく死んでいった長女とシャボン玉のはかなさを重ね合わせたのだが、この歌が昭和の飢饉で売られて苦界に沈んでいった遊女たちに歌われていた事実がある。年季が明けて、早く親元へ帰りたい遊女たちは、その思いを込めて、シャボン玉を塀の外へ向けて飛ばした。だがその思いは叶えられることはなく、はかなく消えていく。

小沢昭一の追悼番組で、この「シャボン玉」を唄うシーンが放映された。小沢一流のジョークで今は、童謡ではなく老謡だと言って笑いを取りながら、この歌を唄った。小沢の歌は、その背景へのコメントはなかったが、その素朴な調子は、歌詞の底に深い悲しみがこもっていた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする