
爆弾低気圧は北海道の方へ去っていったが、寒気が入って寒い日だ。こんな日に食べるのが、寒ダラのドンガラ汁である。ドンガラとは庄内地方の方言で、アラ汁のことである。丸々と太ったタラの身を取ったあとに残る骨や内臓を鍋に放り込んで、ネギと豆腐だけの味噌仕立ての鍋だ。骨や肝臓、白子など、タラの味が贅沢に汁に溶け出して、熱々の汁は何ともいえない美味である。腹の中から、暖めてくれる北国ならでは食べものといえよう。
庄内では、寒になるとこのドンガラ汁はなくてはならないものだ。かっては、タラ漁にも豊、凶があって不漁の年は、タラに法外な値がつく。それでも財布を叩いてでも買うののがこの地方の人たちである。タラ汁会をあちこちで開いて、地域のコミュニケーションのツールになっている。家庭では、4人家族で一尾分のドンガラで汁を作れば、3日間は食べられる。これも飽食以前の日本人の食生活の知恵であったであろう。
濤音の鍋にとどろき鱈煮ゆる 広瀬 長雄
どういう訳か鱈の淡白な身が好きである。湯豆腐には必ず塩ダラを入れて、鱈ちりにする。この鍋を食べるたびに冬も悪くないと思う。そんな消寒の食べものが、鱈ちりであり、少し贅沢なドンガラ汁である。