
部屋に豆炭を置いている。多少二酸化炭素が出て匂いがするが、五徳の上に鉄瓶を乗せて湯を沸かすと、煎茶を飲むのに理想的な湯が沸かせる。昔は当然のこととして、湯を炭や豆炭で沸かしていたのだが、あらてめてお茶のおいしさを実感する。
亡くなった義父が鉄瓶や鋳物を作る会社に勤めていたこともあって、実家からしまってあった鉄瓶を貰ってきた。もう50年以上のものでが、デザインを見ても少しも古い感じはしない。この地方の鋳物の歴史は900年以前に遡ると言われている。平安時代、安部貞任、宗任の反乱を平定しに山形へ下向した源頼義に従ってきた鋳物師が馬見ヶ崎川の砂と千歳山にある土が鋳物に適していること見つけ、この地方で鋳物を作ったのが始まりと言われている。
山形鉄瓶は明治時代に、山形の鋳物師菊池熊治が岩手県水沢の田茂山鉄瓶に弟子入りし、南部鉄瓶の製法を山形に伝えたのが始まりである。山形市の銅町には保寿堂という、菊池熊治の末裔による店がいまもなお営業を続けている。今では、茶道の釜や鉄瓶などしかこの山形鉄器を使う人が少なくなったが、この伝統が失われていくことはいかにも惜しい。