常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

雪の日

2012年12月09日 | 日記


昨夜からの雪に、外の家の屋根に雪が積もり、今年初めての雪景色になった。気温1℃。家の中は薄暗く、冬篭りの言葉が実感される。

謡曲に「鉢木」というのがある。雪の夜、佐野に住む老武士の家に、旅の僧が一夜の宿を求めた。老武士は、佐野源佐衛門常世といい、僧に栗ご飯でもてなし、暖をとる焚き木もないからと、大切にしていた松や梅を切って薪にした。「私は一族の者の横領にあっていまは、落ちぶれているが、いざ鎌倉のときは、老骨に鞭打って駆けつける所存です」と武士の面目を語る。

払へども払へどもわが袖の雪 夏目 漱石

旅の僧が雪のなかで悩む様子を謡曲では七五調の謡いで語る。
「今降る雪に行きがたを失い、ただひと所に佇みて、袖なる雪を打ち払いうち払いし給う気色、古歌の心に似たるぞや」とある。謡曲を習った漱石は、雪に会ってこの「鉢木」の場面を思い出して俳句に詠んだ。

佐野の常世に宿を借りた僧は、前執権北條時頼であった。鎌倉の召集を受けた常世は痩せ馬のまたがって鎌倉へ馳せ参じた。これを見た時頼は、常世を武士の鑑と称え、莫大な恩賞を与えた。

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