7月は雨で一度も山行が実現しなかった。夏山は今が一番のいい季節だが残念なことだ。今週は予定を一日前倒しして、岩手県花巻の早池峰山に行く。雨が残るのだろうか、行って見なければわからない。3時起床、朝食をとり4時半に仲間の車で岩手・遠野に向かう。途中岩手県に入っても小雨である。時々、雨脚が強くなる。
7時45分に早池峰山の麓、河原坊に着く。奇跡的に早池峰山の頂上が見え、その上に青空が広がっている。気温20℃、風もなく絶好の登山日和である。河原坊から頂上(1913m)へ、そして小田越へ下る8名のメンバーが駐車場で準備運動をして登山を開始する。
沢を左に見ながら、ゴツゴツとした露岩の道を頂上目指した詰めていく。ほとんど巻道はなく、いつも頂上を見ながら、標高差600mの急登である。早池峰山は、深田久弥の『日本百名山』のひとつに選ばれている。深田久弥も我々と同じ河原坊コースをとって頂上に向かった。その中で河原坊の由来が紹介されている。
「昔、快賢という僧が早池峰に詣で、ここに一寺を建てて河原坊と呼んだ。その後洪水で寺は流失して名前だけが跡をとどめている。すぐ横の谷川は昔の登拝者が垢離場として身を清めた所だという。」
この山は山形の月山と同じように、山が宗教者の霊場であった。このゴツゴツとした岩の道を登るのは、苦難を覚悟して山の神に祈るためであった。
岩陰にハクサンフウロが静かに咲いていた。急登に汗をかいた身を癒してくれる。若い父親と小学校4年の少女が連れ立った登ってきた。少女は身軽にぽんぽんと岩を踏んで登っていく。「頑張ったね。」と声をかけると、笑顔を見せて小さく頷く。父親が、「コースを間違ったな。ここから引き返そう。」と言うと、少女は「いやだ、降りるのは頂上まで行ってから。」ときっぱりと答える。
この親子には、頂上で、下山して駐車場でもあった。登る途中では多少の疲れた様子を見せたものの、頂上でも駐車場でも元気いっぱいだった。山登りでは、見知らぬこんな人たちからも元気をもらう。
高度1800mを越えると、頂上まで見渡す限りの岩場だ。すでにお花畑を過ぎ、癒される花たちもなくなった辺りで、デジカメの電池が切れてしまう。東の下の方に目をやると、小田越コースの尾根が見渡せる。急な坂を登ってきたことを改めて確認する。山地が眼前にせまり、その光景に見とれる。すでに足の筋肉は目いっぱいの使い尽くして、余力はもう残っていないあんばいだ。