今週の登山は八ヶ岳だ。もう15年も前だが、赤岳鉱泉から見た、夕日に照らされて赤く輝く赤岳の姿が忘れられない。このときの登山は台風一過で、登山者はいなく、あたかも我がグループが赤岳を独占したような感があった。そのときからみれば、体力の衰えは隠しようがない。いま一度八ヶ岳に、それは悲願であり、人生の最終期に光をあてる憧れでもある。
岩崩えの赤岳山に今ぞ照る 光は粗し目に沁みにけり 島木 赤彦
今回のルートは行者小屋に泊って、文三郎道を通って赤岳に至りここから北を目指す。横岳三叉峰から奥の院、硫黄岳にいたる稜線は2800m級の岩峰を連ねるアルペンだ。その先の根石山荘で泊る。翌日の北八つは、打って変わってコメツガやシラビソの深々と樹林帯のなかを日ざしを避けて通る。陰陽ふたつの山を楽しむ計画になっている。
いまのところ八ヶ岳を中心にした山岳の気候は、△マークだ。登山にはあまり適さないとの表示である。大雨や暴風というほどでもないが、霧雨もありで、風は7mである。20日からの山行を一日ずらすか、中止にするか決断を迫られている。
八ヶ岳は長野県から山梨県にまたがる広域な山域である。火山活動のため山頂部が吹き飛んだという伝説もある。もし本当なら、富士山と肩を並べる山であったかも知れない。その昔、富士山と八ヶ岳が背比べをした。八ヶ岳の方が高かったので、怒った富士山が頭を蹴飛ばしたという昔話も伝わっている。