
植物は冬の寒さにも負けない。凍らないうに、実や葉に糖分を蓄え、寒風に耐えるために葉を地に這わせる。葉をロゼット状に広げることで、わずかの太陽の光でも、身体全体で受けとめている。霜が葉についても、朝の光がたちまちにとかせてしまう。こんな植物の強さを、疾風勁草と言った。「疾風に勁草を知る」という俚諺は、激しい風が吹いて初めて本当に強い草を知るという意味だが、人間にあてはめて、厳しい試練にあってはじめて、節操堅固な人間がわかるという比喩にも用いられた。
後漢の光武帝に、臣下の王覇を労った言葉がある。
「頴川で旗揚げして以来、わたしに従うものは皆去ってしまったが、そなただけは踏みとどまってくれた。疾風に勁草を知るとは、このことだ。」
冬にロゼット状に茎葉を広げるのは、もう一つの意味を持つ。その下に他の植物が侵入することを防ぐ場所取りをしている。やがて春がやってくると、自分が成長する場所を確保している。