常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

菊花

2015年12月01日 | 漢詩


今日から師走。もう例年であれば、平地に雪が降っている季節である。田んぼのあぜ道に春に咲く花が咲いている。寒暖が交互にやってくるので、花たちも咲く時期を間違えるらしい。そんななかで、初冬の花は何といっても菊の花にとどめをさす。今日の詩吟教室で習ったのは、白居易の『菊花』である。

一夜新霜瓦に著いて軽し

芭蕉は新たに折れて敗荷は傾く

寒に耐うるは唯東蘺の菊のみ有りて

金粟の花は開いて暁更に清し

敗荷というのは、蓮(ハス)が枯れたもので、それが倒れている。東の籬の菊だけが、寒さにめげずに咲いている。古来、菊の花を酒に浮かべて飲む習慣は、この菊の強さを愛でたことにある。事実、霜枯れた庭に、これほど爛漫に咲く菊には、人間の身体を守る霊力あると信じられてきた。どの花びらも霜におかされることもなく、黄金色に輝いて、あたりの風景を清らかななものにしている。

白居易は75歳の人生を全うしたが、晩年親しく交わった友人たちが次々と先立って逝った。新酒に菊を浮かべて長寿を祈る飲酒を愛したが、その酒を汲み交わす友人が一人、二人と亡くなっていく。醒めて時間を過ごすよりも、酔うことに人生の喜びを感じた白居易である。ともに汲み交わす友がいなくなることは余りにも切ない。寒に耐えて咲く菊花と、己の晩年の生を重ね合わせたのが、この詩のモチーフになっていたのかも知れない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする