アガサクリスティーはイギリスの一世を風靡した推理作家である。名探偵ポワロが活躍する「オリエント急行殺人事件」「そして誰もいなくなった」などの名作を読んだ人は多いだろう。アガサの作品は映画化もされ、昭和の日本でもなじみ深く、人気の作家である。
1926年12月3日、アガサクリスティー失踪事件が起きた。アガサの書く小説のような事件で、大きな話題になり、警察は総動員体制をとって、この有名作家の行方を捜した。新聞も連日大きく報道した。実はその日、アガサの夫が愛人を伴って週末旅行に出たことを知ったための失踪であった。自殺説、誘拐説などが乱れ飛んだ。そんなおり、アガサの乗っていた自動車が、道路上に乗り捨てられているのが発見された。延べ15000人の警察に加え、警察犬まで動員されたが杳として行方は知れなかった。
失踪から10日、アガサはヨークシャーの温泉に滞在していることが分かった。このホテルに偽名を使い、変装していたので誰に気づかれずいた。みんなが新聞で、アガサ自身が失踪している記事に首を突っ込んで興味深そうに読んでいたという。アガサがこんな突飛な行動をとったには、夫の浮気へ面当てという理由もあったが、直前に母親を病気で失い、すっかり気が滅入って意気消沈していたのが大きな理由であった。