ちょっと郊外を散歩すると、秋の景色がいっぱいに広がっている。風景を見ながら、昔口ずさんだ唱歌を思い出す。
夕空晴れて秋風吹き
つきかげ落ちて鈴虫なく
おもへば遠し故郷の空
ああわが父母 いかにおはす
中学の同期会があってから10日、やはり故郷の夕焼けの空が思い浮かぶ。英語を習い始めたばかりの頃、突然先生が黒板に一節の英文を書いた。
If a body meet a body comin' through the rye. 書き終えるとすぐに先生は、名指しして「訳してみろ」と言った。教科書に出てくることのない、不思議な英語に、「身体と、身体。え、これどう訳せばいいんですか。」と答えると、脇のませた女生徒が、「誰かさんと、誰かさん、麦畑。こっそりキスしていいじゃないの。」と、続いていた節まで訳してしまった。
M先生は、赴任したばかりの若い先生で、融通のきかない生徒をからかうような気持でこんな文章をかいたのかも知れない。その訳文は、「夕空晴れて」のメロディで教室中で合唱になった。合唱の好きな先生で、練習していた曲の原詩で見つけた詩の一節であったかも知れない。青春時代の懐かしい一コマである。