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大雪、雪の舞うなか南部公民館で山の会の打ち合わせ。帰り、久しぶりに図書館に寄って、田辺聖子『川柳でんでん太鼓』と笹沢信『藤沢周平伝』の2冊借りてくる。川柳の方を開くと、冒頭に
天高く月夜のカニに御座候 逸名氏
の一句が出ている。田辺聖子の解説によれば、「月夜のカニ」とは、月夜にはカニは月を恐れて餌をあさらないので、カニに身がつかず痩せているとのことだ。句が作られたのは、戦後の食糧難の時代。人々は肉が落ちて痩せて、向こうから光があたると、骨がすけて見えそうになっている。そこで自らを、月夜のカニに御座候と名乗り出た。川柳は世相を映す鏡でもあるが、苦しい時代に、ふと笑いを誘う温かみを感じる。
法善寺芝居のような雪が降り 織田作之助
田辺聖子は大阪の作家であるので、この本で選んだ川柳も大阪の川柳人のものである。映画化された「夫婦善哉」のラストシーンで夫婦が店を出ると、法善寺あたりには雪が降っていた。そんな雪のなかで「おばはん、頼りにしてまっせ」という名文句を吐く。こんな川柳が紹介されているので、ページを繰るのがもどかしいほどにこの本に魅せられた。
そういえば、新聞に川柳の欄があったことを思い出した。今日の「朝日川柳」の欄には
あの時も今度も突然真珠湾
神奈川 関野春夫さんの川柳が冒頭にあった。阿部首相の真珠湾訪問を題材に採っている。こちらは世相というようよりも時事そのものを詠んでいる。新聞の川柳と雑誌の川柳とでは、自ずから選ぶ話題や視点も異なっているように見える。