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オボコンベ山、標高595m。仙台市の西、二口山塊にある特徴のある岩峰である。沢筋を登って尾根にとりつく前、沢の上に見える三角錐の山である。オボコンベとは名前からユニークだ。漢字をあてると、御母子負山と書くが、頂上の手前にある岩を子に見立てて、母が背負っているような形から、この名がついたらしい。登山の案内書によるとこのユニークな山容の成因は火山岩によるものと記されている。つまり、地下のマグマが地表に噴出して固まったものだ。沢筋にも岩盤があり水に洗われたナメ状をなしている。岩盤の上にできた地層は浅く、根が十分に張れないためか、大雨や雪解け水で流木となってところどころで沢を埋めて登山道を変えている。
小一時間ほどの沢歩きで尾根の急登にとりつく。この場所の高度は280m、頂上が約600mなので320mの高度を一気にかせぐことになる。尾根は痩せて、左右が深く切れ落ちている。生活拠点から近く、里山のような感覚の山ではあるが、実際に登って見ると、登山の危険や魅力を豊富に備えた山である。
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主稜線には切り立った頂上の手前に奇岩がある。一部に浸食作用でできた穴から東南の山域が額縁のように眺められる。遥かに太平洋が霞んで見える。尾根筋で数人の登山者に出会う。いずれも仙台在住の人たちであった。すぐ脇にある桐ノ目山を登って、オボコンベ山に来た健脚者もいた。本日の参加者5名、内女性2名。
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奇岩からはさらに急登でロープも張られている。頂上からは近隣の大東岳が薄く雪を被っている。その向こうに雁戸山から蔵王山が遠望できる。12月としては珍しい晴天で、本格的な冬の前の山の雰囲気がたっぷりと味わえる。木々はすでにすっかりと葉を落し、冬の眠りにつく準備を整えている。こんな表情の山は、この季節の晴天のほんのわずかの間にしか見られない。
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旅の子の
ふるさとに来て眠るがに
げに静かにも冬の来しかな
石川啄木は陽だまりの冬をこんな歌にしている。こんな日はたちまち過ぎて、荒涼とした冬の山がそこに待っている。木々に葉はないが、冬芽がもう春のために準備を始めている。朝、沢筋に御来光を見せた陽は、昼近くなってすでにその光の力強さを失っている。光の特徴があまりに早い時間の経過を物語っている。握り飯をかじりながら、かすかな鳥の鳴き声のような鈴の音を聞く。どこまでも静かな山中である。二人連れの登山者が、ゆっくりと尾根道を下り降りていく。本日の所要時間4時間、距離6.7㌔。下山後のクールダウンが心地よい。
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