虹といえば夕立の後などにでるものだが、冬至過ぎに見えるのは珍しい。気温が高く12月にはとは思えない気候だ。朝起きると、サッシの戸をを鳴らす強風が吹いていた。この虹はさしづめ、気候の変わる前触れなのだろうか。予報では今の前線が過ぎると、寒気が入って12月らしい天気になるらしい。山添や北日本では大雪の予報も出ている。
虹と言えば、斎藤茂吉の歌が思い浮かぶ。疎開して迎えた昭和22年大石田の最上川の辺で詠んだものである。この歌は今年の山形岳風会で大石田に住む子どもたちが朗詠した。
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片 茂吉
昭和21年3月雪深い大石田で茂吉は風邪を引き、こじらせて肋膜炎を引き起こした。それから三月以上も病床に着く。敗戦によるショックに加え、この病気は茂吉に身体の衰えを実感させるできごとであった。しかしここで詠んだ歌は歌集『白き山』に収められたが、心を打つ秀詠が多くある。
最上川の流のうへに浮び行け行方なきわれのこころの貧困 茂吉
この歌は病が言えて岸辺に桟俵を敷いて坐りじっと最上川を眺める茂吉の姿が目に浮かぶ。その心情をあますところなく歌に表現している。