金木犀は突然に咲く。きのうまで、小さかった花芽が、黄金色に輝き、強烈な芳香を放つ。遠くにいても、あ、金木犀が咲いたと知らせてくる。香りの方角に進めば、黄金色の花が青空のもとに浮かんでいる。漢名は丹桂。丹は橙黄色の花を表し、桂はカツラではなくモクセイ類の総称である。木の皮がザラザラとして、犀の皮に似ているから、この名が付いたらしい。
木犀を歴訪すべき散歩かな 相生垣瓜人
金木犀の香りに誘われて、棚田のある旧年金センターの裏道を歩く。台風が通り過ぎて行ったが、リンゴ園では落果もさしてなく、フジがたわわに実をつけている。ザクロの実、柿モミジ、そして稲刈りの始まった棚田には、稲を干す杭に人形のような姿の稲が懐かしい。一歩、歩を進めると、秋の色が満艦飾である。散歩のあと、冬に間に合うようにキャベツの苗を定植し、大根の種を蒔く。隣近所では、大根はとっくに芽を出し、大きく育っているのが気にかかる。