義母が入所しているみはらしの丘から、蔵王の全貌が見渡せる。寒気で新雪が積もり、晴れわたった今日、そのまったけき姿をカメラに収めることができた。義母が入所して3年を過ぎるが、初めてのことだ。刈田から地蔵、これほど美しい姿を見るのは何年ぶりであろうか。地蔵岳の下の方に樹氷らしきものが見える。今年こそ見に、と思っていたが地震警戒で、行くことが叶わない。
萬国の人来たり見よ雲晴るる蔵王の山のその全けきを 斎藤茂吉
昭和25年、蔵王山が「日本観光地百選」(毎日新聞主催)で第1位に選ばれたのを記念して茂吉が詠んだ歌である。いま、この歌は歌碑として蔵王上の台に建てられている。今日、晴れわたった空に、蔵王山を見たとき、思い浮かんだのがこの歌である。
スマホでこの写真を撮って義母に見せた。100歳を迎えようとしている義母にこの景色がどのように見えたのであろうか。施設のドアからは見ることができない。笑ってスマホの画面を撫でていた。施設のスタッフは、「外を見るのが好きなんですよ。春になれば、車椅子を押して、周辺を散策しましょう。」老るということの意味が、たったこれだけの会話で、深く理解することができる。