常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

重い靴

2018年08月22日 | 登山

昨日から暑い夏が復活した。掛け布団が欲しい

くらいに夜の気温が下がったのに、また37℃と

いう猛暑日である。千歳山で、いつも会う人が

じっと目を見て「いやあ、暑いね」と話しかけ

て来た。入山するとすぐに、耳をうつ蝉しぐれ。

思えば、まだ8月の下旬になったばかり、しば

らく暑い日が続く。

槍を攀ずわれに夏来て夏了る 高田 貴霜

槍ヶ岳への挑戦が数日後に迫った。これと言っ

て特別の準備はないが、皮の重い靴に足を馴ら

すことだ。ソールの張替えを試みたが、ビブラ

ムソールが注文となり、間にあわず断念、代わ

りに長年の使用でへたっているインソールを交

換した。ヤマップのオリジナルだ。今日これを

履いて千歳山で足ならし、予想以上に快適であ

る。ここ数年、皮の靴から軽い布製の靴に履き

替え、その歩きやすさに魅せられてきたが、本

格的な岩稜を歩くには、この重い靴を履きこな

すことが必須である。

 

槍ヶ岳への出発まで3日、この時間を利用して

ウェストン著『日本アルプス』を読むことにす

る。イギリス人の牧師であるウェストンは明治

21年宣教師として来日、登山家でもあった彼は

日本アルプスを海外に広く紹介、日本に近代ア

ルピニズムを起こした人である。上高地の梓川

のほとりには、肖像入りのレリーフが建てられ

ている。軽井沢高原の上にある山から、槍ヶ岳

の光景を見た様子を、興奮した筆致で書き記し

ている。

「高さ3000メートルないしそれ以上の雪襞の

ある尾根や気高い峰々が、落日に映えたオパー

ル色の空を背景に、紫の輪郭も鮮やかにそびえ

ている。日本のマッターホルンである槍ヶ岳や

ぺニンアルプスの女王ワイスホーンの縮図を思

わせる優美な三角形の常念岳がそびえ、それぞ

れに特徴あるプロフィールを見せている。」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ナムル

2018年08月20日 | グルメ

先日、滅多に電話もよこさい娘から、「野菜

ありがとう。シュンギク、ナムルして食べた

らおいしかった。ありがとうね。」「うん、

そうかよかったね。」と返事をしたのだが、

恥ずかしいことに、ナムルがどんなものか知

らなかった。たくさん採れたツルムラサキの

調理法を探していると、「ツルムラサキのナ

ムル」というのが出てくる。よく調べると、

ナムルとはお隣の韓国料理で、家庭料理で定

番のものであるらしい。野菜や山菜などを茹

で味つけものの総称とある。「野(ナ)」+

「物(ムル)」で野菜を意味するようだ。解

説にビビンパの添え物と書いてある。そうい

えば、韓国料理の焼き肉屋へ行ったとき、ビ

ビンパのトッピングにゼンマイや野菜の和え

ものがあったことを思い出した。韓国ではナ

ムルの主役はゼンマイ、豆もやし、ホウレン

ソウの三種だが、野菜ならなんでもよく、た

くさんのバリエイションがあるようだ。

ところでツルムラサキのナムル、美味。韓国

の調理法は、どこかで、日本の食べ方に通底

したものがあるように思える。食べ物に限っ

たことではなく、韓国の文化が、日本の隅々

にまで深く浸透していることは間違いない。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オクラ

2018年08月19日 | 農作業

雨が降ると、夏野菜が急に採れ出す。ツルム

ラサキ、ナス、オクラなどだ。オクラのよう

に毎日収穫するものは、食べきれないほど採

れる。目先を変えて、保存のきく調理法が重

要になる。クックパッドで見つけた「オクラ

の焼浸し」を試みた。フライパンで固いとこ

ろを取ったオクラを焼いていく。タッパーに

醤油、酢、味醂を煮立たせせた浸し汁を準備

し、オクラが火が通って緑が濃くなったとこ

ろをどんどん入れていく。焼いたオクラを全

部タッパーに入れ終わったところで、カツオ

節とスリごまを和えて出来上がり。あとは冷

めてだし汁が浸みこむのを待つだけ。食べて

みると、オクラがコリコリとして食感がよく

出しが浸みて美味。オクラの新しい魅力を発

見した。 

 

茄子にも似たような食べ方がある。リャンチ

ェズ、中華風のナス浸しだ。こちらは、たま

ったナスを蒸かして、手で縦に割く。それを

タッパーに並べていく。浸す汁は、ゴマ油、

醤油、酢、おろしショウガ、ニンニク、タカ

ノツメを合せて、並べたナスに一段ごとに回

しかける。一晩置くと、こちらも出しが浸み

ておいしい。ナスが柔らかくいくらでも食べ

られる。

 

今日試みるのは、ツルムラサキのナムル。採

れたてのツルムラサキを、茎と葉を別にして

茹でていく。こちらは、茹でたツルムラサキ

を食べやすい一口大にして、ゴマ油、砂糖、

スリごま、おろしニンニク、ガラスープの素

を和えるだけの簡単調理。果たしてどんな味

になるか、作るのが楽しみだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昼の月

2018年08月18日 | 日記

雨が去った秋空。雲に紛れる月の表情がいい。

陽ざしは強いが、ひんやりとした秋風に誘わ

れて散歩に出る。木槿のほかに見るべき花も

ないが、イチジクの実が熟し始めた。そろそ

ろ鳥が見つけて、実を啄みにやってきそうだ。

台風19号が列島に近づいている。来週の山行

に影響はないか、今から心配である。

月の出やほしいままなる草の丈 鴨下 晃湖

この季節、畑に出て、敗けそうになるのは雑

草の勢いだ。野菜たちが、日照りにしおれて

いくのに比べて、縦横に伸びるは雑草だ。空

地にした実家へ草刈りに行く。驚くような草

丈に、気が滅入ってしまう。近所の人の勧め

で草刈り機を持った人に刈り払いを依頼する

ことにして、早々に引き上げる。

今日の畑の収穫、オクラ15本、ナス10本、

ツルムラサキ袋にひとつ、トマト20個(雨

のための実割れあり)、ナツナ一食分。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地蔵

2018年08月17日 | 日記

山歩きをしていると、山姥などの日本人の信

仰の痕跡に出会うことがある。赤い帽子を被

り、胸をはだけた婆さまの石像である。この

像に詳しい人が、「これは死者が三途の川を

渡るとき、その着物をはぎ取り、川に流す。

現生で悪事を働いた者の着物は重く水に沈む。

地獄へ落ちる者と、極楽へ行くものを見分け

る役目を果たしている。現生と死後の世界の

境界にいる像だよ。」と解説してくれた。山

は死者が帰って行く場所として、古くから日

本人に信じられてきた。

 

ジャーナリストとであった小泉八雲が、出版

社の依頼で、「日本取材」のため来日したの

は明治23年4月のことである。船で横浜に着

き、最初の訪問先はお寺であった。そこで、

八雲の注意を引いたのは、寺の地獄絵に描か

れた「お地蔵さま」であった。『地蔵』には

賽の河原で、石を積む子ども亡者の話がある。

初めて見る絵の印象を語る八雲の筆致は鋭い。

 

川のほとり、幼い子供たちの亡霊が群がり、

しきりに石を積みあげようとしている。子供

の亡霊はみな、とてもとても可愛らしい。現

実の日本の子供たちのように可愛い。どの子

供も、それぞれ短い白の着物を着ている。そ

の手前の方では、恐ろしい鬼が鉄の棍棒を持

って駆け寄り、子供の一人が作っていた小石

の塔をちょうど叩き壊したところである。幼

い亡霊は、せっかく自分が作りあがたのを壊

された、その横にすわりこんで、可愛らしい

手を目にあててしくしくと泣いている。鬼の

方はせせら笑っている様子である。他の子供

たちもそばで泣いている。しかし、見よ、そ

こへ光と優しさに満ちあふれ、大きな満月の

うな後光のさしておいる地蔵がいま、やって

来る。そして神力をもった杖、“笏杖”を地蔵

が差しのべると、小さな亡霊たちは手を伸ば

してそれにしがみつき、地蔵の加護に引き入

れられるのである。いたいけな他の幼子たち

も大きな衿に摑まり、一人はこの神さまの胸

にもう抱き上げられていいる。

 

歌人斎藤茂吉も生家の隣にある宝泉寺で、懸

け図の地獄極楽図を見た記憶を歌に残してい

る。正岡子規に同じテーマの歌があり、それ

を模倣したと述べているが、東大で6年半、

英語教えていた小泉八雲のこの「地蔵」を読

んでいたとしても不思議ではない。

をさな児の積みし小石を打くずし

 紺色の鬼見てゐるところ  斎藤 茂吉

 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする